最近、結婚式のインスタなどで、新郎新婦とともにおそろいのスーツを着こんだ華やかな男女グループの存在を目にしますね。そのうちの男性は新郎の友人たちで構成されるアッシャー / usher(または、グルームズマン / groomsman)といいます。彼らは欧米の挙式でよく見られ、新婦の友人たちで構成される女性のブライズメイド / bridesmaidとともに、新郎新婦を悪魔から守る、中世から続く西洋文化の一つです。今回は、その中でも新郎側の世話役アッシャーの役割を特集します。依頼やお礼の仕方もまとめました。
頼れる新郎のサポートメンバー、アッシャー(グルームズマン)の役割と、取り入れ方
1. アッシャーとブライズメイドはチームで結婚式を支える
欧米の結婚式では、新郎新婦のお世話係として、兄弟姉妹や友人からそれぞれ数名選ぶ習慣があります。結婚式を挙げる二人を妬む悪魔の目を惑わせる意味で、親しい未婚の人が新郎新婦と似た格好をするという、中世ヨーロッパのキリスト教の考えを起源にします(※)。ベールやフラワーシャワーも同様に、キリスト教式の魔除けの意味のあるアイテムです。
新郎の世話役を「アッシャー(またはグルームズマン)」といい、花嫁の世話役を「ブライズメイド」といいますがそのうちアッシャーの代表はベストマンと呼ばれ、ブライズメイドのリーダーがメイド・オブ・オナー(既婚者の場合はマトロン・オブ・オナー)と呼ばれます。どちらも最も親しい人、頼れる人に依頼するため、指名されるのは欧米ではとても名誉なこととされています。
日本の結婚式でも、おそろいの色や形のドレスを着たブライズメイドはだんだん知られるようになってきましたが、その対の存在となるアッシャーの存在も忘れてはいけません。アッシャー、ブライズメイドに結婚式のサポートを依頼することで、海外挙式のおしゃれで華やかな雰囲気を演出することができ、注目されています。おそろい衣裳の男女が新郎新婦を中心にして撮影する集合写真など、結婚式当日の写真の華やかさも一層アップするでしょう。
見た目の華やかさだけでなく、アッシャーとブライズメイドはセットで、様々な場面で活躍してくれる存在です。兄弟親戚や仲の良い友人が新郎新婦を支える結婚式のサポートチームと考えるとよいでしょう。では、今回は、アッシャーの役割を詳しく見ていきます。
2. 欧米で一般的な海外挙式のアッシャーの役割と日本との違い
欧米の教会結婚式でのアッシャーの一番の見せ場は、バージンロードに「アイルランナー」を敷くシーン。アイルランナーはバージンロードに敷く白い布で、床下の悪魔から新郎新婦を守るためという意味があります。他には、新郎側代表としてベストマン、新婦側代表としてメイド・オブ・オナーが立会人として結婚証明書にサインをするという役割も。信頼できる友人の担う大役で、結婚式のなかでも特に重要な役割になります。
また、独身最後の夜を、新郎が男友達とだけで楽しむという趣旨で企画される「バチェラーパーティー」を仕切るのもアッシャーの役割の一つです。と同時に結婚式目前で、新郎が羽目を外しすぎないように見守る人もアッシャーには必要といえるでしょう。
3. 日本でアッシャーを取り入れるには
式場とよく確認・相談する
日本の場合は式場との兼ね合いで、アッシャーのできることに一定の制限がありえます。欧米では、彼らが式までの準備や当日にむけて全般にサポートを行いますが、日本では、通常プランナーや、会場スタッフがいるので役割分担は式場とよく確認しあう必要があります。また、日本の結婚式場では、アッシャーの見せ場であるアイルランナーを使用することができない場合もあります。アッシャーの取り入れ方については式場との十分なすり合わせが欠かせない事項と考えましょう。アッシャーやブライズメイドの演出を優先したい場合は、式場選びの際にアッシャーやブライズメイドの扱いについて問い合わせてから式場決めるとよりスムーズでしょう。
とはいえ日本の結婚式でも、新郎新婦、式場のスタッフだけでなく、ゲストの手を借りる場面が多々あるのは同じ。アッシャーやブライズメイドは、ただの見た目の良いゲストというだけではなく、式の進行などにも関わる特別な存在として、準備に忙しく精神的にも揺れる結婚前の新郎新婦の頼れる存在になってくれるでしょう。
取り入れやすいアッシャーの役割
具体的なアッシャーの役目としては、たとえば人前式の立会人としてサインをもらうのもよいでしょう。また、アッシャーとブライズメイドには同時に受付を依頼することも多いようです。そして、日本ではバチェラーパーティーよりもなじみ深い、二次会がありますね。その幹事をアッシャーに依頼することもできます。二次会は企画の自由度もあがるので、アッシャーたちの腕の見せ所ともいえるでしょう。その場合もブライズメイドと協力して切り盛りしてもらうことが多いようです。また、アッシャーとブライズメイドがおそろいの衣裳でダンスをする余興なども、華やかで人気の演出です。他のゲストもきっと楽しんでくれるでしょう。
- 立会人としてのサイン
- 受付や会場の案内
- 二次会の幹事
- アッシャーとブライズメイドが出演する余興
- 人前式の入場に関する演出
ただ、おそろいの衣裳の連帯感には注意も必要です。他のゲストへの配慮として、アッシャーやブライズメイドを中心にした演出があまり多くならないように気を付けることも必要です。挙式や披露宴では控えめにして、二次会で盛り上がるのもいいですね。
アッシャーやブライズメイドと過ごす特別な時間として、ガーデンウェディングでの写真撮影も人気があります。おそろいの衣裳で、新郎新婦を囲んで色々なポーズで写真を撮影し、オリジナルアルバムを作るのも素敵ですね。
4. アッシャーを依頼する際のポイント
誰に頼むか
アッシャーとブライズメイドは2~5人が多く、それ以上になったとしても男女の数は合わせておくのが基本です。そして、未婚であることが条件といわれます。しかし日本で、厳格な儀式としてではなく気軽に演出としてアッシャーを取り入れてみよう、という場合には未既婚や人数などについて本来のルールに堅苦しく縛られる必要はあまりないでしょう。結婚式を盛り上げてくれる存在として快く手を貸してくれる友人、新郎新婦が頼みたい友人に依頼するのでよいでしょう。アッシャーは、ブライズメイドと共同で作業することも多くなるので、出会いにつながることもありえます。新婦側の友人に紹介できる、信頼のおける人物をそろえられるとよいですね。
依頼のながれ
新郎新婦それぞれに依頼したい人が決まったら、手伝ってもらいたいことをリストアップして、まずは式場のプランナーに相談しましょう。会場によってできる範囲に指定があるので、事前相談は大切なポイントです。また、式場によっては、アッシャーに打ち合わせやリハーサルに出席してもらうこともあります。
アッシャーの依頼をする際は、多くが社会人として多忙なところ、貴重な時間をもらうことですので、スケジュールは早めに調整するのが最重要のマナーになります。打診する際に、打合せへの出席が必要な旨と、大まかなスケジュールも伝えるようにしましょう。忙しい相手の仕事やプライベートの状況なども考えながら、依頼できる範囲を見極めて、可能な範囲でお願いする必要があります。自分たちの希望ばかり押し付けると、後々の関係にも影響してしまうこともあるでしょう。
手伝ってもらいたい内容を確定したら、新郎はアッシャーに、新婦はブライズメイドに会って話したり、電話したりと、直接連絡を取り、打診しまず。気軽なメールで依頼するより、特別感をもって面と向かって正式に話すと真心が伝わりやすくなります。
引き受けてくれることになったら、招待状に細かなお願い事を書いた紙などを入れて正式に依頼します。口約束だけではなく、きちんと書面で伝えることは、大人同士の付き合いではとても大切なポイントです。
5. アッシャーの衣裳について
衣装代とご祝儀の考え方
アッシャーを依頼する際に欠かせないのは、当日の衣裳の準備についてです。衣裳やアイテムの費用は、新郎新婦が負担するか、アッシャーやブライズメイド自身に負担してもらうか検討が必要です。アッシャーやブライズメイドはゲストとしてご祝儀を包むことも考えているでしょうから、衣裳代をどちらが負担するのか、ご祝儀をどうするかは、二人で方針を決めたら誰に対しても同様の扱いとし、依頼の際にもはっきり伝えるようにしましょう。
コーディネイトパターン
内容としては、おそろいのスーツや、同じ色のネクタイや蝶ネクタイ、チーフ、同じベスト、などのコーディネートが一般的。二次会や、1.5次会などでは、おそろいのスニーカーやスポーツウェアといったカジュアルなスタイルも楽しいでしょう。女性と違って、一式全て同じにするのではなく、共通点はワンポイントに抑えるパターンも多く、スーツを衣裳として用意するのは予算的に難しい時も工夫次第で一体感のあるコーディネートは可能です。また式場やドレスショップで、アッシャーのためのレンタルができるところもあるので探してみましょう。
アッシャーどおしだけでなく、ブライズメイドとも色や素材、アイテムをそろえるのもポイントです。おそろいのアイテムや色合いにすることで、新郎新婦をはさんでアッシャーとブライズメイドが並ぶ際の統一感を出すことができます。
6. アッシャーへのお礼とタイミング
結婚式準備から、二次会まで、結婚式を一緒に作ることで生まれる強い絆は何にも代えがたいものです。依頼に対して、快くアッシャーを引き受けてくれたからこそ、新郎も結婚式を通して親しい人との一体感が得られるでしょう。アッシャーとして活躍してくれた兄弟や友人には、しっかりお礼をするのがマナーです。
引き出物の金額や中身を変えたり、プレゼントを準備したり、相手を知っているからこそできるお礼の品を用意するとよいでしょう。もし、衣裳衣裳代を負担してもらうときは、あらかじめご祝儀を辞退することも考えられます。
- 引き出物の金額をアップする(カタログギフト等もOK)
- おそろいのアイテム(衣裳)をプレゼントする
- 共通の趣味に合わせたものを準備する
そして、感謝の言葉は、式当日はもちろんなのですが、数日後に改めて場を設け、正式に伝えるのがベストです。やってよかったと思ってもらえるように、時間をきちんととって感謝を伝えることが大切です。
手書きのお礼状をだすのも、少し気恥しいかもしれませんが、真心が伝わる方法です。身近で仲の良い存在だからこそ、人生の節目を手伝ってもらったことへの礼を尽くすことを忘れないようにしたいですね。
7. まとめ
アッシャーを取り入れる流れとポイントをまとめると以下のようになります。
- アッシャー候補者を決める
- 式場と相談しながら、アッシャーへの依頼内容を決める
- 費用負担・ご祝儀の考え方を定める
- アッシャーへの依頼(直接打診→招待状などで正式な依頼)
- アッシャーとの打ち合わせスケジュールを調整・決定する
- 衣裳、コーディネートを決める
- お礼の内容、方法、日程を決める
それぞれが特に親しいゲストに結婚式に深くかかわってもらえれば、おそろいの衣裳衣裳やアイテムを身に着けて撮った記念写真が、新郎新婦だけでなく、アッシャーやブライズメイドにとっても、きっと一生の宝物になります。自分たちの結婚式を一緒になって作ってくれるアッシャーとブライズメイドは、ゲストとの思い出作りや、仲の良い関係性の再確認という点からも注目されています。アッシャーを依頼した友人と、その後も長く付き合えるように、親しき中にも礼儀を大切にして結婚式に臨めるとよいですね。