籍を入れない結婚「事実婚」とは?法律婚との違いは?法的・社会的な手続き、年金、税金、相続や子どもの親権など
Photo:Adriana Velásquez
1. 事実婚
1-1. 事実婚とは?
事実婚は、法律に基づく婚姻届は出さずに事実上の結婚生活を送っていること。事実婚は届出を必要としないため正確な人数は分かりませんが、内閣府の「男女共同参画白書 令和4年版」では、各種の意識調査から、成人人口の2〜3%程度が事実婚であると推察されています(出典:内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 令和4年版」コラム3「事実婚の実態について」、2022年)。社会的にもだんだん知られるようになり、一部の法律においては、婚姻届を出している法律婚のカップルと同じ権利や義務をもつようになってきています。事実婚は「お互いに婚姻の意思を持っている」ということで、特別な手続きがいるわけではありません。
婚姻届を出している結婚(法律上の婚姻、法律婚) → 婚姻届けを出し、二人の「新しい戸籍」が作られる。二人が戸籍の「筆頭者」の名字になる。
事実婚 → 届け出は必要ないが、住民票や公正証書などの書類があると法的手続きや社会的なサービスを受ける際に便利。
同居・同棲 → 手続きは必要なく、一緒に住むこと。
同棲・内縁との違いと、事実婚と認められる目安
法律の分野では、事実婚は「内縁」と呼ばれることが多く、ほぼ同じ意味で使われます。一方、「同棲」は一緒に暮らしていることを指す言葉で、夫婦として生活する意思があるかどうかは問いません。
| 関係 | 婚姻届 | 夫婦として生活する意思 | 法律上の扱い |
|---|---|---|---|
| 法律婚 | 出している | ある | 夫婦としての権利・義務がすべてある |
| 事実婚(内縁) | 出していない | ある | 法律婚に準じて扱われる部分と、扱われない部分(相続・税金など)がある |
| 同棲 | 出していない | 問わない | 原則として夫婦としての保護はない |
事実婚と認められるかどうかは、一般的に、①お互いに夫婦として生活する意思があること、②夫婦として共同生活を送っている実態があること、の2点で判断されます。「同居して何年以上」といった法律上の決まった年数はなく、住民票の続柄、生計を同じくしていること、周囲に夫婦として紹介していることなどが判断の材料になります。
1-2. 事実婚の証明
事実婚には届け出は要らず、「結婚している」と当人同士が認識していればよいのですが、法的手続きや社会的なサービスを受ける際には「事実婚である」と証明する必要があります。その方法として、一般的なのが「住民票の届出」と「公正証書の作成」です。
事実婚の手続き~住民票の届出
すでに一緒に暮らしていて同一世帯の住人として住民登録している場合は、住民票には続柄「同居人」として記載されています。また一緒に暮らしていて男女両方がそれぞれ世帯主、つまり別の世帯として別々に住民登録しているという場合もあるでしょう。この場合、他に同居人がいない限り続柄はそれぞれ「本人」のみの住民票となっています。
これらを「事実婚」とするには「世帯変更届」(「住民異動届」)の手続きをとります。同一世帯の住民で続き柄が「同居人」となっている場合には、世帯変更届の続柄を「夫(世帯主)」「妻(未届)」または「妻(世帯主)」「夫(未届)」に変更します。別々の世帯の場合は世帯合併をして二人を同一の世帯員としつつ、続柄は「夫(世帯主)」「妻(未届)」または「妻(世帯主)」「夫(未届)」とします。 同一の世帯で、かつ続柄が「夫(未届)」または「妻(未届)」と記載されれば「事実婚」であると証明することができ、公的な手続きがスムーズになったり、「夫婦」として特典を受けることなどができます。
また別の自治体から転居してきて、これから転入届を出して一緒に暮らす場合は、転入届に「夫(世帯主)」「妻(未届)」または「妻(世帯主)」「夫(未届)」と届け出ます。
公正証書の作成
公証役場で事実婚に関する公正証書を作成してもらいます。公正証書とは「公証人という法律の専門家によって作成された証書」のことで、契約や遺言を公正証書にすると証明力が高まります。事実婚のカップルの生活において、必ずしも公正証書が必要な場面ばかりではありませんが、家族として手術など医療上の判断をする際や、住宅ローンを二人で組んだり不動産名義を共有にする時、死亡保険の受取人指定の際などに迅速に手続きを進めやすくなることがあります。
パートナーシップ制度
パートナーシップ制度は、2019年7月現在で24自治体が制度を導入していますが、都道府県レベルでは茨城県のみ、その他は下記に示すように市町村レベルでの導入となっています。パートナーシップ制度は、事実婚の異性間カップル、同性婚カップルのどちらか、または両方を対象にしており、公的な効力はなく自治体によって受けられるサービスも大きく異なります。
例えば東京都中野区の場合パートナーシップの関係にあることを宣誓したカップルに対して、パートナーシップ宣誓書や確認書受領証、公正証書等受領証(療養看護や財産管理などに関する委任契約の公正証書の受領証)を交付してもらえます。これらの交付によって不動産の賃貸契約や各種のサービス、さらには医療や財産にかかわる手続きをスムーズに進めることができることを目的としています。
同性婚に関しては現在日本で認められていないことから、憲法13条、14条に照らし重大な人権侵害だとする見方もあり、ゆくゆくは同性婚をめぐる法律が整備されることが望まれます。そのため、このパートナーシップ制度が同性婚カップルを対象とすることについては、同性婚カップルを法的に保障する第一歩として、それまでの過渡期の制度としてとらえるべきでしょう。
パートナーシップが導入されている自治体(2019年8月13日現在)
東京都渋谷区
東京都世田谷区
三重県伊賀市
兵庫県宝塚市
沖縄県那覇市
北海道札幌市
福岡県福岡市
大阪府大阪市
東京都中野区
群馬県大泉町
千葉県千葉市
東京豊島区
東京江戸川区
東京府中市
神奈川県横須賀市
神奈川県小田原市
大阪府堺市
大阪府牧方市
岡山県総社市
熊本県熊本市
栃木県鹿沼市
宮崎県宮崎市
福岡県北九州市
茨城県
1-3. 事実婚を選ぶ背景
事実婚を選んだ人たちの理由はどのようなものでしょうか。「結婚制度や戸籍制度に違和感がある」「嫁や婿、○○家といった家制度に縛られたくない」「対等で自由な関係でいたい」「わざわざ届け出る必要を感じない」といった理由もありますが、よく挙げられるのは「夫婦同姓ではなく夫婦別姓にしたい」「どちらか一方が公的に名字を変更することに違和感がある」という理由です。現在の日本の婚姻制度のもとでは夫婦はお互いの姓を夫か妻のどちらかの姓に統一しなければなりませんが、「自分の姓を変えたくない」「夫婦が同姓にすることでデメリットがある」などの理由から、公的に別の姓を使うために「事実婚」を選択するというわけです。事実婚のカップルは、積極的に事実婚を選んでいる人ばかりではなく、夫婦別姓が法律的に認められていないのでやむを得ず事実婚であるというケースも非常に多いのです。
籍を入れない理由は男女で違う?
内閣府の調査(2021年度)で、20〜30代の独身者が「積極的に結婚したいと思わない理由」をみると、女性は「結婚に縛られたくない、自由でいたいから」「結婚するほど好きな人に巡り合っていないから」がそれぞれ約5割、「仕事・家事・育児・介護を背負うことになるから」が38.6%、「名字・姓が変わるのが嫌・面倒だから」が25.6%でした。男性は「結婚に縛られたくない、自由でいたいから」「結婚するほど好きな人に巡り合っていないから」がそれぞれ約4割、「結婚生活を送る経済力がない・仕事が不安定だから」が36.0%で、名字を理由に挙げた人は11.1%でした(出典:内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 令和4年版」特-41図。令和3年度内閣府委託調査「人生100年時代における結婚・仕事・収入に関する調査」)。
事実婚を選んだ人だけを対象にした調査ではありませんが、男性は自由や経済面、女性は家事・育児の負担や名字の変更を気にする傾向がうかがえます。パートナーが籍を入れることに消極的な場合は、相手が何を負担に感じているのかを話し合ってみると、事実婚にするか法律婚にするかを決めやすくなるでしょう。
1-4. 事実婚でも「結婚のかたち」を写真で残すという選択肢
事実婚は婚姻届を提出しないため、挙式や披露宴といった形式ばったセレモニーを行わずに過ごすカップルも少なくありません。一方で、「ふたりが夫婦として歩み出したことを形に残したい」「家族や友人に、ふたりの関係をあらためて認めてもらうきっかけがほしい」という声も根強くあります。
その方法として近年選ばれているのが、写真だけで結婚の記念を残す「フォトウェディング」です。指輪交換の瞬間など、ふたりが結婚の意思を確認し合うシーンを写真に残しておくことは、法律上の証明書類にはなりませんが、前述の住民票の続柄変更や公正証書の作成とあわせて、気持ちの面でのひとつの区切りとして活用するカップルも見られます。また、親族や友人にふたりの関係を伝える際、言葉だけでなく写真というかたちがあることで、理解してもらいやすくなったという声もあります。
フォトウェディングは入籍の有無を問わず申し込めるプランがほとんどです。「結婚式は挙げないけれど、ふたりの節目は写真で残したい」という場合は、以下もあわせてご検討ください。
2. 法的・社会的な手続き
基本的には、法律婚の夫婦も事実婚の夫婦も同じ権利と義務があり、公的・社会的なサービスを利用できますが、税金や社会保障の面でデメリットがあります。以下に各サービスの法律婚と事実婚での違いの有無を見ていきましょう。
2-1. 年金や行政サービス
国民年金の第三号被保険者
パートナーが会社員や公務員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)の場合、年間収入が130万円未満(60歳以上または障害者は180万円未満)であれば、事実婚のパートナーでも国民年金の第3号被保険者や健康保険の被扶養者になることができます。扶養の手続きでは、内縁関係にある2人の戸籍謄(抄)本と、被保険者の世帯全員の住民票などの提出が求められます。2026年4月からは、雇用契約などで年間収入が130万円未満と確認できる場合に、その契約内容で判定する運用も始まっています(雇用されて働く場合の取扱いです)。(出典:日本年金機構「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き」「労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて」、最終確認日:2026年10月13日)
遺族年金の受給権
生計を維持していた人が年金加入者で、一緒に生活をしていた事実を示すことができれば事実婚のパートナーでも遺族年金を受け取ることができます。
不妊治療の保険適用
2022年4月から、人工授精などの一般不妊治療や、体外受精・顕微授精などの生殖補助医療は公的医療保険の対象になり、事実婚のカップルも保険適用の対象です。治療開始時の女性の年齢が43歳未満であることや回数の上限などの条件があり、医療機関から事実婚であることの確認や書類の提出を求められる場合があります。保険適用外の費用に独自の助成を行っている自治体もあるので、お住まいの自治体の案内もあわせて確認しましょう(出典:栃木県「不妊治療の保険適用について」、最終確認日:2026年10月26日)。
2-2. 税金・相続
✓ 税理士監修 川上哲央(川上税務会計事務所)
所得税・住民税の配偶者控除・配偶者特別控除
事実婚(内縁)のパートナーは、所得税法上の「配偶者」にあたらないため、配偶者控除や配偶者特別控除など、法律婚の配偶者向けの税の優遇は受けられません。(出典:国税庁 確定申告書等作成コーナー「内縁の妻」、最終確認日:2026年10月13日)
相続権、相続税の控除・税率における優遇
たとえ長年一緒に暮らして共に財産を築いてきたとしても、事実婚のパートナーには法定相続人としての権利がありません。事実婚カップルはお互いの財産について遺言書等で取り決めをしておいた方がいいでしょう。相続税の「配偶者の税額軽減」は、婚姻の届出をした配偶者に限られるため、内縁関係のパートナーは受けられません。(出典:国税庁 相続税法基本通達19の2-2、最終確認日:2026年10月13日)
その他、医療費控除は、生計を一にする配偶者やその他の親族の医療費が対象となる制度のため、事実婚のパートナーの医療費を合算することはできません。(出典:国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」、最終確認日:2026年10月13日)
2-3. 企業や自治体によって対応や判断が異なるもの
下記については手続きをすれば、事実婚でも対応してくれる企業が多く、同一の住民票や事実婚を証明する公正証書があるとスムーズに進むことがあります。
- 健康保険への配偶者加入
- 死亡保険の受取人
- 企業の配偶者手当
- 手術時のサインや病状の説明
- 金融機関のローン
- クレジットカードの家族会員
- 携帯電話会社のファミリー割引
- 自動車保険の家族割引
2-4. 2024年以降に変わったこと:DV防止法の保護拡大とパートナーシップ制度の広がり
2024年4月1日に施行された改正配偶者暴力防止法(DV防止法)では、保護命令の対象となる被害の範囲が広がりました。従来は身体への暴力や生命・身体への脅迫が中心でしたが、改正後は、怒鳴りつけて外出を妨げるといった自由に対する脅迫、私的な画像の公開をちらつかせるといった名誉に対する脅迫、生活費を渡さない・財産を勝手に処分するといった財産に対する脅迫なども新たに対象に加わりました。この法律がいう「配偶者」には法律婚の相手だけでなく、事実婚の相手や、生活の本拠をともにする交際相手も含まれると内閣府が明示しており、事実婚のカップルも引き続き保護の対象です(情報源:内閣府)。
また、本記事で紹介したパートナーシップ宣誓制度(事実婚カップルなどを対象に、自治体が関係性を公的に証明する制度)は、導入自治体数が年々増えています。2026年1月時点では571の自治体が導入し、日本の人口の93.82%をカバーするまでになりました(情報源:Marriage For All Japan「みんなのパートナーシップ制度」データベース)。お住まいの自治体で利用できる制度の有無・内容は、各自治体の公式サイトで最新情報をご確認ください。
2-5. 事実婚で二人で決めておきたいこと
事実婚は、法律婚なら法律で決まっていることの一部を、二人で決めておく必要があります。話し合った内容は、合意書や公正証書(「1-2. 事実婚の証明」参照)にまとめておくと、いざというときに役立ちます。
| 決めておきたいこと | 話し合う内容の例 |
|---|---|
| 生活費・家計 | 生活費の分担、共有の口座を作るか、二人で買った物や貯金を誰のものとするか |
| 病気・介護 | 入院や手術のときの連絡先、医療についての意思、介護が必要になったときの方針 |
| 住まい | 賃貸の契約者・名義、住宅を買う場合の名義やローン |
| 子ども | 認知の時期、親権、子どもの名字・戸籍 |
| 関係を解消するとき | 財産の分け方、住まいの扱い、子どもの養育費や面会 |
| どちらかが亡くなったとき | 遺言書の作成、生命保険の受取人、お墓や葬儀の希望 |
病院での面会や手術の同意、賃貸住宅の入居審査、住宅ローンなどは、病院や管理会社・金融機関によって事実婚の扱いが異なります。必要になる前に、住民票の続柄の記載や公正証書など、関係を示せる書類を用意しておくと安心です。
3. 事実婚のカップルの子ども
事実婚カップルの子どもについては「親権」の扱いがもっとも大きな法律婚との違いになります。事実婚のカップルの子どもの親権は、原則として母親が持ちます。2026年4月に施行された改正民法により、父親が子どもを認知したうえで父母が協議すれば、父母の双方(共同親権)や父を親権者と定めることもできるようになりました。ただし、戸籍や手続きの面では法律婚と異なる点も多いため、子どもの誕生を機に法律婚を選ぶカップルも少なくありません。
法律婚をした男女の子(嫡出子) → 父母の共同親権
法律上の婚姻関係がない男女の子(事実婚など非嫡出子、離婚後など) → 原則として母の単独親権。父が認知したうえで、父母の協議(まとまらない場合は家庭裁判所の手続き)により、父母の共同親権や父の単独親権とすることもできる(2026年4月施行の改正民法)。
3-1. 事実婚の子の親権は原則として母親に
親権とは「子どもの利益」のためにある、子どもを育てる親の権利義務のことです。大きく分けて次の二つがあります。
身上監護権:子どもと生活して世話や教育をすること。
財産管理権:子どもの財産管理や子どもが法律行為をする時、子どもの代わりに契約、訴訟などの法律行為ができる権利
親権は父母が婚姻していれば、父母が共同で親権をもちます。父母が婚姻していない場合、親権は原則として母親が持ちます。2026年4月に改正民法が施行され、父が認知した子については、父母の協議で父母の双方または父を親権者と定めることもできるようになりました。
父を親権者にする(共同親権を含む)には
生まれた子どもの親権は、まず母親にあります。父が子どもを認知したうえで、父母の協議によって父母の双方(共同親権)または父を親権者と定めるときは、市区町村に親権者を定める届出(親権(管理権)届)を提出します。届出の名称や必要書類は、お住まいの市区町村で確認しましょう。
協議で合意に至らない場合は、家庭裁判所の調停・審判の手続きを利用することになります。(出典:尼崎市「親権管理権届」、裁判所「親権者変更調停」、最終確認日:2026年10月13日)
3-2. 事実婚の子の戸籍は
通常は母親の戸籍に入る(母の氏になる)
法律婚の夫婦の場合、妻が妊娠して出産して出生届を出せば子どもは両親の子になり、両親の戸籍に加わります。
事実婚の夫婦の場合、出生届を出すと母親の戸籍に子どもが入籍するか、母親が自分の親の戸籍に入っている場合は、母親を筆頭者とする新戸籍が編成され、母の戸籍に入ります。姓は母の姓となります。また、親権は原則として母の単独親権となります。
そして父親が認知すると、子どもの戸籍の父の欄に父の氏名が記載され、また、父親の戸籍にも、子どもを認知したことが記載され、法律上父子関係が確定します。
父親の戸籍に入れる(父の氏にする)場合は
もし父と同じ戸籍にして、子どもが父親と同じ姓を名乗る場合は、認知(次節で説明)している上で次のような手続きをします。
子どもの戸籍を移動するためには、「子の氏の変更の許可申立」を家庭裁判所にし、許可を受けた後で父親の戸籍に「入籍」手続きをする必要があります。(子どもの年齢が15歳未満であれば法定代理人(親権者)が、15歳以上であれば子ども自身が申し立てます)。裁判所が発行した「審判書」や「入籍届」などを子どもの本籍地または届出人の住所地の役所に提出して「入籍」の届出をします。そうすると、子どもの戸籍は父親の戸籍にうつり、父親と同じ氏になり、子どもの戸籍の母の欄に母の氏名が記されます。(出典:裁判所「子の氏の変更許可」、最終確認日:2026年10月13日)
3-3. 子を守る、認知
事実婚による父と子は、父親の認知によって初めて法的な父子関係が成立します。認知とは、法律上婚姻関係にない男女の間に生まれた子どもを、男性が自分の子どもである、と認めることです。認知は役所に「認知届」を出すことで手続きします。
父親が子どもの認知届を出すと、母親が筆頭である子どもの戸籍の「父」の欄に父の名が記入され、父子関係が確定します。認知しただけでは親権は母親のままですが、前述のとおり、父母の協議で父母の双方や父を親権者と定めることもできます(出典:法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について」、最終確認日:2026年10月26日)。また、認知によって父親にも親子関係に基づく権利や義務が生じ、次のようになります。
- 父親に対し、養育費の請求が可能になる
- 父親の財産について、子どもに相続権が発生する
逆にいえば、父親が認知しないと法律上、父と子の間に父子関係が成立せず、戸籍の続柄にも記載されません。養育費を父親に請求できない、父親が亡くなっても財産の相続権がない、という子どもにとって大きな不利益が生じる可能性があります。(参考文献:本澤巳代子ほか『よくわかる家族法』ミネルヴァ書房、2014年。2026年4月施行の改正民法の内容は法務省の案内で確認しています)
4. 事実婚の関係解消
事実婚の関係解消は、次のような法律婚の離婚と同じ権利や義務があります。
財産分与
二人で築いた共有財産があれば二人で分けます。
慰謝料
事実婚の解消について、そちらか一方に責任がある場合は精神的苦痛に対する損害賠償として慰謝料が発生します。金額は、関係の長さや解消の理由などによって大きく異なります。
養育費
子どもがいれば引き取った方が相手方に子どもの養育費(扶養費)を請求します。
年金分割
会社員や公務員のパートナーの扶養に入り、国民年金の第3号被保険者になっていた場合などは、事実婚を解消したときも、法律婚の離婚と同じように厚生年金の年金分割を請求できます(出典:厚生労働省「離婚時の厚生年金の分割(合意分割・3号分割)」、最終確認日:2026年10月26日)。分割の対象になる期間や必要な書類は、事実婚の状況によって異なるため、年金事務所で確認しましょう。
5. パートナーの死亡
✓ 税理士監修 川上哲央(川上税務会計事務所)
事実婚の場合、自分が死んだ際に相手に相続権がないので、パートナーに財産を残したい場合は生前贈与や遺贈するために遺言書を作成する、生命保険の受取人をパートナーにするなどの対策をしておきます。また、相続税の「配偶者の税額軽減」は婚姻の届出をした配偶者に限られるため、適用がありません。さらに、パートナーが遺贈などで財産を取得した場合は、配偶者や一親等の血族以外の人にあたるため、相続税額に2割が加算されます。(出典:国税庁「No.4157 相続税額の2割加算」、最終確認日:2026年10月13日)生前贈与についても、贈与税の「配偶者控除」(婚姻期間20年以上の夫婦間で居住用不動産などを贈与した場合に、最高2,000万円まで控除できる特例)は婚姻関係にある夫婦が対象のため、事実婚のパートナーは同じ特例を使えず、贈与税の負担が法律婚の夫婦より重くなる場合があります。(出典:国税庁「No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」、最終確認日:2026年10月13日。参考文献:杉浦郁子ほか『パートナーシップ・生活と制度【増補改訂版】』緑風出版、2016年)
6. 事実婚のよくある質問
Q. 何年一緒に暮らせば事実婚になりますか?
A. 法律上の決まった年数はありません。お互いに夫婦として生活する意思と、共同生活の実態があるかどうかで判断されます。住民票の続柄を「夫(未届)」「妻(未届)」にする、公正証書を作るなど、関係を示せる形を残しておくと安心です。
Q. 事実婚から法律婚に切り替えることはできますか?
A. 婚姻届を出せば、いつでも法律婚になれます。子どもがいる場合は、父が認知していれば、婚姻によって法律婚の夫婦の子(嫡出子)と同じ扱いになります。手続きの詳細は市区町村の窓口で確認しましょう。
Q. 事実婚でも配偶者控除は受けられますか?
A. 受けられません。所得税の配偶者控除・配偶者特別控除は、婚姻の届出をした配偶者が対象です(「2-2. 税金・相続」参照)。
Q. 同性カップルでも事実婚になりますか?
A. 日本では同性カップルの法律婚は認められていません。自治体のパートナーシップ制度を利用できる場合があり、企業や制度によっては事実婚に準じた扱いをしているところもありますが、扱いはそれぞれ異なります。利用したい制度ごとに確認しましょう。
出典・参考資料
・国税庁 確定申告書等作成コーナー「内縁の妻」
https://www.keisan.nta.go.jp/r5yokuaru/cat2/cat22/cat22a/cid019.html(最終確認日:2026年10月13日)
・国税庁 相続税法基本通達 第19条の2《配偶者に対する相続税額の軽減》関係
https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/sisan/sozoku2/02/06.htm(最終確認日:2026年10月13日)
・国税庁「No.4157 相続税額の2割加算」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4157.htm(最終確認日:2026年10月13日)
・国税庁「No.4452 夫婦の間で居住用の不動産を贈与したときの配偶者控除」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/zoyo/4452.htm(最終確認日:2026年10月13日)
・国税庁「No.1120 医療費を支払ったとき(医療費控除)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/shotoku/1120.htm(最終確認日:2026年10月13日)
・日本年金機構「従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き」
https://www.nenkin.go.jp/service/kounen/tekiyo/hihokensha1/20141202.html(最終確認日:2026年10月13日)
・日本年金機構「労働契約内容による年間収入での被扶養者の認定の取り扱いについて」
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/jigyosho/2026/202605/0501.html(最終確認日:2026年10月13日)
・尼崎市「親権管理権届」
https://www.city.amagasaki.hyogo.jp/kurashi/todokede/koseki/066sinkenkanri.html(最終確認日:2026年10月13日)
・裁判所「親権者変更調停」
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_07_10/(最終確認日:2026年10月13日)
・裁判所「子の氏の変更許可」
https://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_07/(最終確認日:2026年10月13日)
・本澤巳代子・大杉麻美・高橋大輔・付月『よくわかる家族法』ミネルヴァ書房、2014年(書籍)
・杉浦郁子・野宮亜紀・大江千束『パートナーシップ・生活と制度【増補改訂版】』緑風出版、2016年9月(書籍)
・法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について」
https://www.moj.go.jp/MINJI/minji07_00357.html(最終確認日:2026年10月26日)
・栃木県「不妊治療の保険適用について」
https://www.pref.tochigi.lg.jp/e06/funin/funinnchiryounohokenntekiyou.html(最終確認日:2026年10月26日)
・内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 令和4年版」コラム3「事実婚の実態について」
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r04/zentai/html/column/clm_03.html(最終確認日:2026年10月26日)
・内閣府男女共同参画局「男女共同参画白書 令和4年版」第2節「結婚と家族を取り巻く状況」(特-41図)
https://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/r04/zentai/html/honpen/b1_s00_02.html(最終確認日:2026年10月26日)
・厚生労働省「離婚時の厚生年金の分割(合意分割・3号分割)」
https://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/nenkin/nenkin/kousei-bunkatu/01.html(最終確認日:2026年10月26日)
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早稲田大学法学部卒業。行政書士・FP・宅地建物取引士。2003年行政書士登録。
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