映画というのは誰と観るか、どんなタイミングで観るかによってまったく違って観えるものです。今回は、結婚に向けて動きだしているカップル、結婚式を控えたカップルにおすすめしたい、すてきなプロポーズシーンのある名作映画をご紹介します。二度とないこの時期にぜひすてきな映画を楽しんでください。(ネタバレを含む内容となっておりますのでご注意を)
思わずうっとり!ふたりで堪能したい、名作映画のすてきなプロポーズ!
『風と共に去りぬ』 君の理解者は自分しかいない!バトラーならではのセクシーなプロポーズ
『風と共に去りぬ』は世界的ベストセラーとなったマーガレット・ミッチェルの小説を映画化したもので、日本では戦後の1952年に公開されました。あらゆる面でスケールの大きな作品で、3年の歳月と当時として破格の製作費をつぎ込み、全編で3時間42分という大長編です。1939年12月15日にワールドプレミアとして初公開され、空前の大ヒットとなりました。この作品の成功により、映画に多額の製作費、宣伝費がかけられるようになりましたので、映画界全体にとっても大きな意義のある作品です。
『風と共に去りぬ』のヒロインは、緑の瞳と勝気な表情が魅力的なヴィヴィアン・リー演ずるスカーレット。アメリカの南北戦争時代を生き抜いた女性です。
スカーレットがはじめに恋した男性はアシュレー。彼は名家出身の紳士で、心優しく、誠実そのもの。女性が憧れるのにふさわしい、絵本から抜け出た王子様のような男性です。しかし、最終的にスカーレットが愛するようになるのは、クラーク・ゲーブル演ずる野性味を感じさせるレッド・バトラー。非常に賢く、したたかで皮肉屋、情熱的でもあります。
スカーレットとバトラーは似た者同士。客観的にみても、アシュレーよりバトラーと気が合いそうにみえます。バトラーも再三、なかなか振り向かないスカーレットを口説きに口説いています。時にはからかい、突き放したようで、やさしくなぐさめるバトラーに反発しながらもスカーレットも彼を拒みきれてはいないのです。このふたりのやり取りは言葉とは裏腹に息がぴったり。この映画の大きな見どころのひとつです。スカーレットが二度目の夫を亡くしたとき、バトラーは待ちきれずについに強引なプロポーズで彼女を口説き落とします。
もう結婚しないといい、バトラーのプロポーズを鼻であしらうスカーレットに「もうよせ、つまらん意地をはるのは。聞き飽きたよ」言い、彼は彼女の唇を奪います。スカーレットがうっとりして腕の中で「気が遠くなりそう……」と思わずつぶやくのに、彼は「遠慮なく、なれよ。気が遠くなって当たり前だ。こんなキスをしてくれた男がこれまでにいたか?」と問い、「結婚すると言え!さぁ言え!」とせまったのです。
惹かれ合いながら綱の引き合いをしてきた、お互い譲れない個性のあるスカーレットとバトラー。彼らならではのプロポーズシーンです。
一般人が参考にできるプロポーズではありませんが、ふたりっきりで情熱的な時間を楽しみたい。ふたりの距離をさらに縮めたい。そんなときには、おすすめの映画です。
『僕のワンダフル・ライフ』 キューピットは愛犬!不器用な男性の告白に胸が熱くなる
『僕のワンダフル・ライフ』は、W・ブルース・キャメロンのベストセラー小説を映画化した作品です。原作は愛犬を亡くした恋人をなぐさめるために書かれたとのこと。人間より短い命をもつ犬のひたむきで純粋な愛情に心がほっこりするような作品です。
本作の主人公は、ベイリーという犬の魂。というのも、映画のなかでベイリーは犬として何度か転生をくり返し、さまざまな人間の人生に関わっていくのです。そのなかでベイリーは最愛の飼い主イーサンと出会います。イーサンは少年時代に子犬のベイリーをみつけ、ふたりはまるで兄弟にように仲良しでした。ベイリーはイーサンの恋人であったハンナのことも大好きでしたが、夢に破れ心を閉ざしたイーサンはハンナのことも遠ざけ、ふたりは別れてしまいます。
年老いたベイリーは死に、再び別の犬として転生し、また別の生き方をするのですが、心には常にイーサンのことがありました。そして、あるとき、ついに孤独のまま年を重ねたイーサンとめぐりあいます。再びイーサンの助手席に座れて幸せなベイリーですが、イーサンが寂しそうだと気づき、かつての恋人ハンナを彼の元に連れて来るために行動を起こすのです。
イーサンは素朴で優しい男性ですが、かなり頑固で不器用です。しかし、ベイリーのひたむきで無垢な言葉なきプッシュにより、二度とない奇跡のチャンスに、覚悟を決めてハンナに打ち明けます。「ここで君をただ黙って引きとめずに帰してしまったら、僕は大馬鹿者だ」そう言って彼女にキスし、抱きしめるのです。
犬好きのふたりなら間違いなくおすすめですし、そうでなくても、ふたりで感動を共にしつつ、ロマンチックな気持ちに浸るにはぴったりな映画です。
『この世界の片隅に』 残酷な戦争に傷つけられても…たくましく育った無垢な夫婦愛
『この世界の片隅に』は、こうの史代の漫画を原作のアニメ映画です。物語の舞台は第二次世界大戦前、戦時中、戦後の広島県。ろくに食べるものもなく貧困にあえぐ人々、日々空襲にさらされ、さらに原爆の投下。最も過酷な時代を描いていますが、やわらかでやさしい絵柄と、ヒロインののんびりした可愛らしい人柄もあって、不思議と暖かい雰囲気のある作品です。各方面から高い評価を受け、日本アカデミー賞など、さまざまな賞に輝きました。
ヒロインすずは広島市の海苔梳きを営む家で育ちました。小さな頃から絵を描くことが大好きで、ごくふつうの、おっとりとした娘です。彼女は呉市に住む海軍に勤める男性周作に望まれて見合いをし、結婚します。すずは周作のことを憶えていませんでしたが、周作は彼女と昔会ったことがあったというのです。
周作はぼくとつとして生真面目な青年ですが、周囲から暗いといわれています。しかし、すずに対する気持ちは確かで言葉少なくはありますが、愛情を伝えており、すずも徐々に周作をその家族と共に自然と愛するようになりました。
しかし、戦火はどんどん激しくなり、空襲によってすずは利き腕である右腕を失ってしまい、こんな身体では婚家で役に立てないと離婚も考えます。しかし、その直後、原爆投下後、終戦の日を迎えることになりました。その日がきて、すずはこの戦争がただの暴力であることに気づき、深く傷つきます。そう知る前に死にたかったと泣き崩れました。
しかし、そんなときでも、すずには救いがありました。すずには周作が、周作にはすずがいたのです。ふたりははじめて出会った橋の上に立ちます。そこからは、焼け野原となった街が見えるのです。周作はすずに街はこれから変わり続けるだろうが、いつでも自分はすずのことは分かると、変わらぬ思いを告げます。すずはそんな周作に「ありがとう、この世界の片隅にうちを見つけてくれて。ほんでも離れんで、ずっとそばにおってください」と答えました。お見合いで結婚したふたり。このときこそ、本物の夫婦になった瞬間だったように思います。多くの人が戦争で大切な人を失いました。すずや周作も例外ではありません。だからこそ、今手を取り合えることの尊さがふたりにはよく分かるのでしょう。
周作とすずの姿には、結婚で目指すべき姿を見出すことできます。お互い寄り添って思いあって暮らすこと。どのような状況でも手を離さないこと。結婚はあくまでスタート。そこから夫婦として育っていくものだとこの作品で感じました。これから結婚される方にも、すでに結婚した方にも観ていただきたい作品です。
映画でのプロポーズは状況によってさまざまですが、どれも劇的であり、考えさせられるものがありました。結婚式を控えているカップルだからこそ、こうした映画はより楽しめると思いますので、ぜひ一緒に観て、愛を深めてください。