「この人と一生添い遂げよう」そう思う瞬間は多くの人に訪れるかも知れません。ですが、それを実現させるのはたいへん難しく、結婚して永遠の愛を誓いあっても、離婚してしまうカップルは大勢います。
世界的に有名な映画俳優は、特にそうです。おしどり夫婦と言われていたハリウッドセレブの突然の破局報道に驚くことも少なくありませんよね。彼らは経済的にどちらも独立していたり、出会いの場が多くあることから離婚率も高いと言われています。
しかし、そんな有名俳優の中にも、一生をひとりの女性と添い遂げた男性がいます。「ハリー・ポッターシリーズ」でスネイプ先生を演じたことでも知られるアラン・リックマンです。185cmの長身にダンディーな容姿、そして世界一の美声と言われる独特の低音の声を持つ彼は、恋愛遍歴も華やかかと思いきや、ひとりの女性と50年かけて結婚したというのです。映画のスネイプ先生は、少年時代からずっと一人の女性を愛し続けた一途な男性でしたが、彼を演じたリックマン氏自身も、まさにそうだったのです。そこで、ここではカップルが長続きする秘訣について、リックマン氏の姿を参考に迫っていきたいと思います。
アラン・リックマンは1946年生まれのイギリス出身の俳優です。元々舞台で活躍していましたが、『ダイ・ハード』の悪役で鮮烈な長編映画デビューを果たし、その後イギリスを代表する映画界の名優となっていきます。
一方、私生活では、1965年、19歳の時に、リマ・ホートン氏と交際をはじめています。彼女は彼の初めての女性であり、また生涯のパートナーでした。2人は長い同棲期間を経て、2012年に結婚しますが、リックマン氏は2016年の1月に癌のため亡くなってしまいました。ただひとりの女性と半世紀の間を共に過ごし、添い遂げたのです。
2人の長年の交際は海外では有名な話だったようです。ドイツのBild紙はインタビューで長年の交際の秘訣について、リックマン氏に尋ねています。彼の答えは「お互いを笑わせること」（※1）。いつも笑顔が絶えないような、楽しく明るい雰囲気が大切ということですね。
しかし、それだけではありません。「いつも相手を笑わせる」というのは、つまり相手を楽しませようと常に努力しているということでもあります。だからこそ、相手は思いやりを感じ、大切にされているという実感を得ることができるのです。お互いにそういう気持ちを抱くことができれば、一緒にいて安心できるようになるはずです。
リックマン氏はプライベートについては多くを語らない人物だったそうです。しかしパートナーのリマさんについては、イギリスのHello誌でこんなことを話しています。
「彼女は寛容です。彼女は信じられないほど寛容なのです。聖人になってもいいくらいです」（※2）
この言葉からは、リマさんの人柄が良いことが伝わってきますが、それだけではありません。相手の「寛容さ」を認めるためには、自身にも広い心が必要です。50年間を共に過ごしてきたのなら、自分に対する不満を目の当たりにしたり、意見の対立が起こったりすることもあったでしょうが、それを受け入れたからこそ、相手を「寛容」だと言えたのです。小さな諍いにこだわらないような広い心が必要なのですね。リックマン氏自身も、寛容な心の持ち主だったということでしょう。
たとえ何らかのすれ違いや対立が起こっても、相手のことを受容する心の広さ。それがなければ、お互いを尊重し合い、認め合うことは難しくなります。逆に言えば、広い心で接し、相手を受け入れられれば、パートナーと良い関係を築いていくことができるはずです。
2人の関係をとてもよく表しているのが、結婚式のエピソードです。2人だけの極めて控えめなものだったようで、先のドイツのBild紙のインタビューで、リックマン氏は結婚式について素晴らしかったと述べた後、こう続けます。
「その場に参列者は誰もいなかったからね。ニューヨークで結婚式をした後はブルックリン橋を歩いて渡ってランチを取ったよ」（※3）
教会で結婚の誓を立てた後、散歩をしてランチを取ったということでしょう。なんだか、ごく普通のデートのようです。
また、「高価なものはいらない」と言う奥様にリックマン氏が購入した結婚指輪は190ユーロ。日本円にして約2万6,600円です。式も指輪も、世界的に有名な俳優とは思えない、たいへんささやかなものだったのです。
彼らの間には高価なものや見栄えのするものなど必要なかったということなのでしょう。お互いがお互いの存在だけで十分満足できたのです。男性の中には「素敵なプレゼントをして何とか恋人を繋ぎとめておきたい」と考えてしまう人もいそうですが、そんなことをいつまでも続けられるはずがありません。その逆も然りで、女性の立場から考えても高価なプレゼントをもらい続けたり、無理に相手に尽くし続けることは不可能です。欲張ったり、相手に多くを望みすぎないことが、半世紀を共に歩んでこれた一番の理由なのかも知れません。
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