彼氏にお弁当を作るのは楽しいものですし、女性にとって自己アピールの1つでもあります(もちろん男性にとっても料理ができることは大きなアピールポイントになりますね)。男性も手のこんだ可愛いお弁当に、彼女からの愛情を感じますし、素敵な結婚生活を想像するのではないでしょうか。これが結婚後、“愛妻弁当”となると、同じお弁当でも実は単純なアイテムではなさそうです。なんと愛妻弁当を妻に黙ってこっそり捨てるという暴挙にでる夫も少なからずいるとか。「しらべぇ編集部」が全国の20代~60代の既婚男性330名を対象に2016年に行った調査ではなんと12.4%が、「愛妻弁当を捨てたことがある」と回答していました。さらに、愛妻弁当というワードから食と夫婦仲との切り離せない関係がみえてきます。
愛妻弁当を捨ててしまう夫がいる!?先進各国最下位の日本男性の家事参加率から、夫婦のあり方を考える
愛妻弁当を捨てた男性の本音
愛妻弁当に喜んでいる男性は、毎日お弁当をもたせてくれるという妻の愛情に満足していますし、妻の料理が楽しみ、周囲に羨ましがれてうれしいとのこと。それは恋人時代の心境と大差ありません。
気になるのは愛妻弁当を捨てる男性の気持ちです。まずお弁当の内容に不満足であるということ。品数が少ない、毎日かわりばえのしない内容で飽きてしまうという意見も多いようです。どちらにしても、何故そのことを妻に告げないと思ってしまいます。しかし、夫からすると、愛妻弁当に意見するのは、作ってくれる妻に申し訳なく感じる、ケンカを避けたいという事情があるようです。ある離婚した女性が、離婚理由の1つとして夫に毎回お弁当を大量に残されて傷ついたというのを挙げていますから、実際にはその杞憂は現実になる可能性もあるでしょう。しかし、こっそり捨てるというのは夫婦の間に隠し事があるということです。それをずっとごまかし、放置していいとは思えません。やはりどうしても我慢できなければ、妻に話してみる必要があるでしょう(もし読者にこの悩みを抱えている男性がいたら、その時は、もちろん、非難と受け取れる言い方は避けてください。まず労いの言葉をかけ、提案という形でお願いしてみるとよいでしょう)。
愛妻弁当を捨てられて怒る妻側の事情
多くの夫が恐れるように、せっかく作ったお弁当を喜んでもらえなかった時の妻の怒りはかなりのものです。前記しましたが、お弁当を毎回のように残されて愛情が冷めたという妻もいましたし、二度とあなたにはお弁当を作らないと宣言した妻もいます。愛妻弁当に託した自分の愛情が拒絶されたら傷つきます。また、これは愛情だけの問題ではないのです。
献立を考えて、買い物にして、料理して、詰める、お弁当はかなりの手間がかかります。確かに家事の手間を軽減する家電製品が増えましたし、便利な冷凍食品などもたくさんあります。しかし、たまに作るのではなく、毎日、ほぼ毎日なら、それは時には苦痛と感じられます。それでも、家計のこと、夫の健康のことを考えてお弁当を作り続けた、その手間を、その労力をなんと心得ているか。このことです。
森高千里『ロックン・オムレツ』から四半世紀たっても変わらない日本
ところでアイドル時代の森高千里さんのヒット曲『ロックン・オムレツ』をご存知ですか。1994年の楽曲です。この曲は子供からみたパパとママの夫婦愛をテーマにしたものですが、そのなかに「料理上手は愛情上手」というくだりがあります。「ママがつくるオムレツを」とあるので、料理を作るのはあくまでママだけ、パパは食べるのみです。それは、夫の胃袋つかむことが夫婦の仲を円満にするということでしょうが、少々一方的すぎるのではないでしょうか。さらに、この曲の後半部分での「ママが作るオムレツを毎朝食べるパパはとてもとても偉いパパ」というくだり、これも、捨てられる愛妻弁当のことを踏まえると、多いに考えさせられるものがあります。四半世紀前の曲とはいえ、現実の男性たちの認識はこの当時とあまり変わっていないかもしれません。
日本が最下位!男性の家事参加
日本でも出産後であっても共働き家庭は増えています。しかし、未だに男性が担う家事割合は極めて低く、それは世界的にみてもかなり問題のある水準です。2012年に行った国際社会調査プログラム(ISSP)によると、日本人男性の1週間あたりの家事にかける時間は46分、33カ国で最下位でした。私ばかり大変なのに文句を言うのは許せない。恐らく、多くの妻は思っているのではないでしょうか。子育て、仕事に忙しく、ただでさえ少ない自分の時間を削って、お弁当作りに当てていることを踏みにじられては腹も立ちます。
キッチンが妻のテリトリーだと思い込むなかれ
先述のように『ロックン・オムレツ』は1994年の楽曲で四半世紀近く前の作品。妻のみがオムレツを作り、夫がありがたくいただくというスタイルは今となっては違和感があります。「料理上手は愛情上手」というのは、男性にも適用してもいいのではないでしょうか。味の好みが妻と合致しないなら、時間を作って自分で好みの料理を作ってみるのもいいでしょう。レパートリーがワンパターンだというなら、自分も一品作って食卓に添えるたらいかがでしょうか。キッチンが妻の独断場でなくなれば、妻も夫の意見を聞きいれやすくなるはずです。
夫が愛妻弁当をこっそりばれないように捨てる理由として、心のどこかでキッチンは妻のテリトリーと思い込んでいる故であるようにも思います。それは妻が夫の仕事に口だすのが悪いと感じるのと同じような心境なのかもしれません。こっそり弁当を捨てる前に、手も口も出せばいいのです。口だけ出すのは必ず喧嘩になりますが。
多くの場合、夫の料理は歓迎されます。実際にSNSでは夫自慢として夫の手料理をアップする女性はかなり多く、彼女たちはそれを愛情の証として誇っているのです。自分でも料理をする夫なら、妻の料理に夫が意見しても素直に聞いてくれるはず。
愛妻弁当に限らず、長い夫婦生活で大切なことは相手の負担を軽くみないこと、見て見ぬふりをしないこと。相手の負担を軽くするために、自分も持ってあげようとすることなのではないでしょうか。
食材や手のこみようよりも、夫婦の好みが合致することが大切
『ロックン・オムレツ』にある“料理上手”という言葉。このことも、案外曲者です。というのは、愛妻弁当を捨てる男性の意見として、「素材にこだわった料理といわれてもどこが美味しいのか自分には分からない。むしろ、既製品のほうが美味しく感じる」「品数が多く、がんばっているのは分かるけど、おしつけがましさを感じる」といったものがあるからです。つまり、料理が得意な妻による良い素材を使ったお弁当であっても、それが夫の好みと合致しなければ歓迎されず、逆にそのこだわりこそが夫婦仲に悪影響を及ぼすこともあるわけです。
オーガニック、自然素材にこだわるというより、ハマる人はけっこういますが、熱を入れすぎる場合は、相手も納得していないと夫婦不和の原因になりかねません。なぜなら、食の好みはそれぞれですし、オーガニック、自然素材にこだわれば通常よりも食費がかかります。しかも、食事は毎日ですし、食費は家計にとって大きな出費ですので、価値観が共有できていない場合、思ったよりもこれは大きなことなのです。実際に離婚の原因としてこのことを挙げている男性もいました。
だから、単純に「料理上手=愛され上手」とは言い難いわけです。それよりも、お互いの好みを知り、なるだけ合致させること。お互いにとって心地良い食生活を一緒に考えることが大切です。それにはやはり、『ロックン・オムレツ』の価値観は捨て、夫自身も食事作りへの参加が手っ取り早いように思います。