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日本でも新しい夫婦の形として注目されている事実婚。“フランス婚”とも呼ばれていますが、なんだか“事実”が“フランス”になった途端、ロマンチックな感じがしますね。実際にフランスでは事実婚の夫婦が多く、フランスでは2025年に生まれた子どもの59.8%が、結婚していない両親のもとに生まれており(出典:INSEE(フランス国立統計経済研究所)、2026年)、籍を入れない夫婦はもはや当たり前の家族の形態となっているようです。
日本でも増えつつあるとはいえ、まだまだ一般的とはいえない事実婚。フランスでは何故こんなにも多いのでしょうか。
【税理士監修】この記事の税金に関する記述は、税理士 川上哲央(
川上税務会計事務所)が監修しています。
フランスの事実婚の割合は?結婚・PACS・婚外子のデータ
フランスでは、結婚(法律婚)のほかに、PACS(パックス、連帯市民協約)と、届出をしない事実婚(ユニオン・リーブル、コンキュビナージュ)という3つのカップルの形があります。フランス国立統計経済研究所(INSEE)の統計から、いまの状況を見てみましょう。
| 項目 |
フランス |
日本(参考) |
| 結婚(法律婚)の件数 |
約25.1万件(2025年・暫定値) |
- |
| PACSの件数 |
約19.7万件(2024年。うち男女のカップルが約95%) |
制度なし |
| 結婚していない両親から生まれた子の割合 |
59.8%(2025年) |
2.46%(2023年) |
フランスでは、結婚とほぼ同じくらいの数のPACSが毎年結ばれており、その大半は男女のカップルです。また、生まれてくる子どもの約6割は、結婚していない両親のもとに生まれています。日本では結婚していない両親から生まれる子どもは2〜3%程度なので、大きな違いがあることがわかります(出典:INSEE「Bilan démographique 2025」2026年1月、INSEE「Les naissances en 2025 et en séries longues」2026年7月、国立社会保障・人口問題研究所「人口統計資料集2025」表4-18をもとにPridalTIMES編集部で整理)。
フランスでは事実婚の他にもう1つの籍を入れない結婚がある
フランスでは事実婚の他に実はもう1つの籍を入れない結婚であるPACS(連帯市民協約)という制度があります。1999年に制定された制度で、当時は法律上結婚できなかった同性カップルが利用できる制度として注目されましたが、男女のカップルも結ぶことができます(出典:フランス国立人口研究所(INED)用語集「Civil solidarity pact」)。PACS契約を結ぶことで、2人は結婚に準じた権利を保障され、法的にパートナーであることを認められます。日本の事実婚では配偶者控除などの税の優遇は受けられませんが(出典:国税庁 確定申告書等作成コーナー「内縁の妻」、最終確認日:2026年10月13日)、フランスのPACSでは、所得税を2人で共同申告できるなど、税制面で法律婚に近い扱いを受けられます(出典:イルキルシュ=グラフェンスタダン市「PACS」案内)。現在は、男女のカップルがPACSを結ぶケースも多いといわれています。
とはいえ、このPACS契約ですら法的な結婚に比べると不利な面もあります。まず、PACSのパートナーは法定相続人ではないため、遺言がなければ相手の遺産を相続できません。また、PACSは外国人とも結べますが、滞在資格や国籍の取得については、法律婚とは扱いが異なります。
結婚・PACS・事実婚の違い(比較表)
3つの形は、結びつきが強いほど法律上の保護が手厚くなり、その分、義務や手続きも重くなる仕組みになっています。主な違いを表にまとめました。
| 項目 |
結婚 |
PACS |
事実婚(ユニオン・リーブル) |
| 始めるとき |
役所での民事婚(公示・聞き取り・証人) |
役所への届出(公証人を通す方法もある) |
手続き不要 |
| 2人の間の義務 |
貞操義務・扶助義務など |
物質的な援助・相互扶助の義務 |
特に定めなし |
| 財産 |
夫婦財産制が適用される |
原則として別々の財産(別産制) |
定めなし(それぞれの財産) |
| 所得税 |
2人で合算して申告 |
2人で合算して申告 |
それぞれで申告 |
| 相続・遺族年金 |
相続権・遺族年金あり |
相続権・遺族年金なし(遺言が必要) |
相続権・遺族年金なし |
| 解消するとき |
離婚手続き(合意による離婚は弁護士・公証人を通す) |
一方の意思でも解消でき、役所への届出が必要 |
手続き不要 |
「フランスの事実婚で別れたときの財産分与はどうなるの?」という疑問もよく見られます。PACSは原則として2人の財産を分けて考える仕組みで、事実婚には財産についての特別な決まりがありません。そのため、どちらの場合も、結婚の離婚時のような夫婦の財産の分け方は、そのままでは当てはまらないと考えられています(出典:松本薫子「婚姻法の再定位:フランス民法典の変遷から(完)」立命館法学2022年4号をもとにPridalTIMES編集部で整理)。
フランス人が事実婚やPACSを選ぶのは結婚、離婚が面倒だから!
結婚生活、家族を守るという上では遺産相続のこと、PACSは一方が望めば相手の同意がなくても解消の手続きができてしまうことを考えれば不利といえます。また、法律婚のような貞操義務の定めもありません。同性カップルならPACSを選ぶのは仕方がないかもしれませんが、男女のカップルなら籍を入れる結婚を選んだほうが良いのではないかと思えます。
それなのに、何故あえて事実婚やPACSを選ぶのか。それは、フランスでは結婚するのも、離婚するのも日本とは違い、“紙切れ一枚”では済まないから。フランスで婚姻する際には、出生証明書などの書類をそろえて役所に提出し、10日間の公示(婚姻の予告)を経る必要があります。役所の担当者による本人への聞き取りも行われ、役所での挙式の当日には2〜4人の証人が立ち会います(出典:ピュトー市「Guide du mariage」)。
さらに、フランスでは長いあいだ、離婚は簡単なことではありませんでした。日本では協議離婚の場合、本人同士の合意があれば離婚届を提出するだけで離婚できますが、フランスでは協議離婚が認められたのは1975年のこと。その後も、協議離婚であっても裁判所での手続きが必要でした。2017年1月からは、夫婦がそれぞれ弁護士を立てて合意書を作り、公証人に登録する方法で、裁判官を通さずに離婚できるようになりましたが、子どもが裁判官による聞き取りを希望した場合などは、裁判所での手続きが必要です(出典:フランス司法省「Entrée en vigueur de la réforme du divorce par consentement mutuel au 1er janvier 2017」)。
こうした結婚・離婚の手続きの負担も、事実婚やPACSを選ぶ理由の一つといわれています。
事実婚、PACSの見逃せないデメリットは教会での結婚式ができないこと!
日本と比べて圧倒的に籍を入れない夫婦が多いフランスですが、PACSが広がった今も、手続きの手間があっても法律婚を選ぶカップルは少なくありません。
その理由は、先にあげた財産問題、国籍問題の他に、結婚式の問題があるそうです。フランスでは、教会などでの宗教上の結婚式は、役所での婚姻(民事婚)を済ませてから行うものとされています。
日本でも教会で結婚式をあげるのが一般的なほど教会での結婚式は素敵なもので、多くの人にとって憧れでもあります。それはフランスの方にとっても同じというわけなのでしょう。
日本では、籍を入れるかどうかに関わらず申し込めるフォトウェディングで、ふたりの節目を写真に残すカップルもいます(日本の事実婚の手続きやメリット・デメリットはこちら)。
日本にPACSのような制度はある?
日本には、フランスのPACSのように国の法律で定められた制度はありません。近い仕組みとしては、自治体がふたりの関係を公的に証明する「パートナーシップ制度」があり、導入する自治体は年々増えています。ただし、法律上の結婚のように相続や税金の優遇を受けられるものではなく、利用できるサービスは自治体や企業によって異なります。日本で籍を入れずに暮らす場合は、住民票の続柄の記載や公正証書の作成など、ふたりの関係を示す方法をあわせて検討しましょう。
フランスの事実婚に関するよくある質問
Q. 「フランス婚」とは何ですか?
A. 日本で、籍を入れない事実婚のことを指して使われることがある呼び方です。法律上の用語ではありません。フランスでは、結婚・PACS・事実婚が並んで選ばれていることから、こう呼ばれるようになったと考えられます。
Q. フランスで事実婚やPACSが多いのはなぜですか?
A. 理由はひとつではありませんが、PACSや事実婚は始めるときや解消するときの手続きが比較的簡単で、それぞれの独立性を保ちやすいことが挙げられます。若い世代ほど、まず事実婚で暮らし始める傾向も指摘されています。
Q. PACSのデメリットは何ですか?
A. 主に、パートナーに相続権がないこと(遺言が必要)、遺族年金を受け取れないこと、一方の意思だけでも解消できることが挙げられます。また、結婚と違って相手の親族との姻族関係は生じません。
Q. 日本人もPACSを結べますか?
A. フランスで手続きをすれば、外国人もPACSを結ぶことができます。ただし、PACSは日本の法律上の結婚とは扱いが異なるため、日本で結婚としての効果を得たい場合は、婚姻の手続きが必要になります。詳しくは在日フランス大使館や、日本の市区町村の窓口などで確認しましょう。
出典・参考資料
この記事の監修者
川上 哲央 税理士(かわかみ てつお)
川上税務会計事務所(東京都渋谷区・恵比寿)
東京税理士会 渋谷支部 登録番号 123253
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