2回にわたって香川県が取り組んでいる香川県ならではの歴史と伝統に触れながら結婚式を挙げる「ふるさと婚」をご紹介してきました。最終回の今日は、全国でも他の地域には見られない香川県の独特の「嫁入り道具」をご紹介します。
花嫁の幸せを願う嫁入り道具「おいり」とは?—うどんだけじゃない香川県!香川県のユニークな「嫁入り道具」に注目
長年地元で愛されている「嫁入り道具」
家を出て嫁いでゆく娘のために新生活で困らないよう準備して持たせる「嫁入り道具」。昔のように家具一式を揃えるような大掛かりなものは少なくなってきましたが、今でも地方によって伝統やしきたりがあるのをご存知ですか?香川県の西部地域の西讃では、古くから欠かす事のできない“嫁入り道具”のひとつとして「おいり」というお菓子があります。餅米から作られる餅菓子(あられ)で、ピンク・赤・黄・緑・白・紫・青の七色がカラフルで可愛らしく、「おいりがきれいだとお嫁さんも美しい」と言われ昔から大切にされてきました。
おいりを持って嫁ぐのには、「家族の一員として心を丸く持って、まめまめしく働きますので、よろしくお願いします」との意味が込められていて、婚礼の際にはお嫁さんのお土産として、近所の人達や子供達に配ったりするほか、披露宴の引き出物にもつけられるなど、西讃の花嫁にとって「おいり」は欠かせないものです。
おいりの風習は、1587年にさかのぼります。丸亀城主の姫君のおこしいれが決まった時、お百姓がお祝いにと五色の煎りものあられを献上したところ、殿が大変喜んだというのがはじまり。以来、婚儀の折にはおめでたいお煎りものとして広く一般に知れわたり、嫁入りの「入る」と火で「煎る」をかけて「おいり」と呼ばれるようになったとか。
職人の技が光る、手間ひまかけた「おいり」
食感は、カリッとした歯ごたえはありますが、口の中で一瞬で溶けてなくなってしまう非常に軽い口どけ。ほのかな甘みの優しい味でいくつでも食べられます。「あらゆるお菓子の中で、最も手間が掛かる」というおいり。明治創業の「遊々椿」ではおいりの製造・販売を行っていて、今でも手作りで作っています。餅米を蒸して、ついて、のばして、切って、着色と、細かく根気のいる作業を繰り返し、出来上がるまでに要する期間はなんと10日間。職人の想いが一粒一粒に込められた幸せを運ぶお菓子です。
「遊々椿」では伝統菓子「おいり」を現代風に使いやすくしたオリジナルのパッケージ商品が人気です。
近年メディアにも取り上げられるようになり、「美しくて珍しい」と県外からの問い合わせも増えたそう。テレビ朝日「マツコ&有吉の怒りの新党」でも共に「うますぎる!」と絶賛されていましたね。人々の生活の中で培われ受け継がれてきた伝統菓子の「おいり」。いつの時代も花嫁の幸せを願う心は同じです。この美しい伝統を一地方の伝統として終わらせるのではなく日本の伝統として後世まで残していきたいですね。