初めての結婚(初婚)ではなく、二度目またはそれ以上の結婚を指す「再婚」。以前の配偶者と離婚・死別した人が、婚姻の取り消し(重婚や近親婚などによる)または解消(離婚・失踪・死亡による)の後に別の相手と、あるいは再び同じ相手と婚姻関係となることを言います。初婚の場合との手続きや取り扱いの違いについて解説していきます。
再婚に関する手続き―「再婚の戸籍」の扱いと名前の見え方、諸手続きのまとめ
1. 再婚の手続き
1-1. 入籍
どちらか、または両方が再婚者である場合、再婚者を筆頭者とするのか、新婚者が筆頭者なのか、などケースに寄って戸籍の内容が異なってきます。とくに前の結婚相手の名前が戸籍に見えているかどうかという点で違いがでますのでよく考えて準備しましょう。戸籍の取り扱いについては3章でより詳しく解説します。
ただし再婚として新たに結婚する場合でも、婚姻届を提出する手続きや流れは初婚と同じです。役所で婚姻届をもらい、必要事項に記入して提出しましょう。「初婚・離別記入欄」で「再婚」を選択し、「死別」または「離別」の区別とその年月日を記します。この欄が正しくないと婚姻届は受理されないため、再婚であることを結婚相手に黙って「初婚」にチェックを入れると結婚ができません。
- 婚姻届1通
- 二人それぞれの印鑑
- 戸籍謄本(本籍地でない役所に届ける場合)
1-2. 戸籍以外の手続き
入籍以外には以下のような手続きが必要です。基本的には初婚の場合と同様の手続きですが、新居に引っ越す場合や名字が変わる場合など、状況に応じて速やかに手続きを行いましょう。
- 転居手続き
- 印鑑登録廃止・新規登録
- 国民健康保険手続き
- パスポートや銀行口座、クレジットカードなどの名義変更
- など
2. 再婚禁止期間とは
日本においては再婚の自由が認められており、民法上では男女ともに何度でも再婚をすることが可能です。ただし女性が再婚をする場合に限り、再婚禁止期間(待婚期間、寡居期間とも言う)が民法第733条によって定められています。子どもを妊娠していた場合の父子推定重複を避ける狙いがあり、前の婚姻の解消または取り消しから100日間は再婚をすることができません。以前は6か月間とされていましたが、平成28年6月7日の法改正により再婚禁止期間が短縮となりました。
また、医師の診断による「民法第733条第2項に該当する旨の証明書」を提出する、離婚後に出産した、離婚した相手と再度結婚するといった場合には、再婚禁止期間内であっても再婚が認められます。詳しくは下記法務省のページをご参照ください。
3. 前の相手の名前を消せる?転籍のこと
再婚は婚姻届が受理されれば成立しますが、前婚についての情報が戸籍に残るケースもあります。前婚の戸籍と、再婚の戸籍とが同一だった場合です。戸籍には出生や婚姻などが記載され、離婚した場合にはそのことも記されます。 例えば筆頭者となる夫に離婚歴があり子どもはいない場合、「出生」「(前妻との)婚姻」「離婚」が戸籍に記載されますが、前妻の「出生」「婚姻」「離婚」「除籍」という情報も残ったままです。また除籍の日付やその理由(離婚)、さらには前妻の移動後の戸籍の本籍・筆頭者も記載されます。
この状態で再婚をすると、前妻の情報は「除籍」という記載とともに残ったままです。以前は「×」がつきましたが、近年ではコンピューター処理により「除籍」と記されるようになりました。つまり夫(筆頭者)・前妻(除籍)・妻(配偶者)と並ぶことになります。妻との間に子どもが生まれた場合には、そこに子どもの情報が加わることになります。
しかし前の配偶者の名前をが戸籍に残ったままなのはけして気持ちのいいものではありませんね。名前を表示させないようにする方法があります。下記で詳しく説明します。
ケース【1】初婚:筆頭者、再婚:筆頭者
まず初婚でも再婚でも筆頭者となる場合、を見ていきましょう。上記のケースに添って説明すると、再婚にあたって前妻の情報を残したくないという場合には、筆頭者である夫を「転籍」することで前妻の記載をなくすことができます。転籍とは本籍地を移すことで、別の市町村の転籍届を「新しい本籍地」「現在の本籍地」「住所地」のいずれかの役所に提出することで処理されます。転籍を行うと以前の戸籍(従前本籍)は除籍となり、継続中ではない婚姻は「不移記事項」となります。夫の戸籍の身分事項が「出生」の記載のみの、新しい戸籍が作られるのです。
ただし転籍によって除籍した前妻の情報が完全に消えてしまうわけではなく、名前が見えないようになっているだけです。前妻の情報が新しい戸籍に記載されなくなっても、戸籍を遡ることで前妻について記された以前の戸籍に辿りつくことは可能です。
このケースは再婚する方が「初婚でも再婚でも筆頭者の場合」ですが、他には以下のような状況が考えられます。それぞれの再婚時の戸籍の表示についてはどうなるか、それぞれ見ていきましょう。
ケース【2】初婚:筆頭者、再婚:筆頭者でない
→再婚後の戸籍に「離婚の事実」「離婚した相手の名前」どちらも表示なし 離婚前の相手の名前を見えないようにしておくという意味では、再婚前に転籍をする必要もありません。
ケース【3】初婚:筆頭者でない、再婚:筆頭者でない
→再婚後の戸籍に「離婚の事実」「離婚した相手の名前」どちらも表示なし。
離婚後には元の戸籍(親などが筆頭者)に戻るか、新しい戸籍を作るか希望によって決めることができます。このケースでは離婚後に元の戸籍に戻った場合でも新しい戸籍を作った場合でも、離婚についての情報は再婚後の戸籍に記載されません。離婚前の相手の名前を見えないようにしておくという意味では、再婚前に転籍をする必要もありません。
ケース【4】初婚:筆頭者でない、再婚:筆頭者
→離婚後に元の戸籍に戻り、再婚の際に新しく筆頭者となって二人の戸籍を作る場合、再婚後の戸籍に「離婚の事実」「離婚した相手の名前」どちらも表示なし。
ただし離婚後に自身が筆頭者となって新しい戸籍を作っていた場合、そこに再婚相手が入籍する場合には上記2点が記載されたまま。離婚時に作った戸籍は本籍地がどこであっても「編製」という扱いになるため、戸籍の編製理由として離婚の年月日や相手の名前などが記載されることになります。離婚前の本籍地とは別の市区町村を本籍地にして離婚時に戸籍を作っても、この時点では転籍扱いにはならないため注意しましょう。前の相手の名前を見えないようにするには、新しい戸籍をつくった後、さらに別の市区町村に転籍をすればよい、ということになります。
つまり・・・
以上のケースをまとめると、以前の婚姻時と同じ戸籍に再婚相手が籍を入れる場合、あるいは離婚時に一人の戸籍を作っており、再婚相手がその戸籍に籍を入れる場合、これらのときには「離婚の事実」「離婚した相手の名前」が戸籍に記載されたままということです。離婚の情報を記載したくない場合には転籍が必要となります。転籍は再婚後でも可能ですが、新しいスタートの前に行っておくのがおすすめです。筆頭者ではないほうが再婚となる場合、その前の相手の名前は転籍しなくても新しい戸籍には表示されません。
ちなみに相続の際などには出生から最新の戸籍までが必要となりますが、除籍の翌年から150年間保存されることになっており確認が可能です。
4. 子連れ再婚の手続き
夫または妻となる人に連れ子がいて再婚する場合、様々な手続きが必要となります。中には期限が設けられているものもあるため、ひとつひとつ確認しながら確実に進めていきましょう。
4-1. 入籍と養子縁組
子どもを連れて再婚する場合、養子縁組をすると相手側と子どもが法律上の親子として認められ、扶養・相続の義務が発生します。戸籍への記載は「養父または養母」「養子」となります。
養子縁組は当事者の意思によって自由にできるとされ、役場に養子縁組届を提出することで手続きが完了します。子どもが15歳以上である場合は子どもの同意も必要です。 ちなみに養子縁組をした場合でも、子どもの実親からの相続権が消滅することはありません。前の夫や妻からの相続が発生した際、子どもは遺産を相続することができます。ただし養子縁組をすることによって、別れた実親からの養育費が減額されてしまう可能性もあります。
また実親との縁を完全に絶つ特別養子縁組という選択肢もあります。里親制度に取り入られている仕組みで、条件として子どもが6歳未満であるか、長く生活を共にしている8歳未満である場合に限られます。別れた親からの相続権等を放棄することになるため、家庭裁判所で厳しい審査が行われます。
養子縁組をせず戸籍を移さない場合、子どもは再婚前の戸籍・姓のままとなります。子連れ再婚をする妻が夫の戸籍に入る際に養子縁組を行わないと、子どものみ妻を筆頭者とする戸籍に残ることになります。
4-2. 各種手当に係る手続き
子連れ再婚の際には入籍や養子縁組以外にも様々な手続きが必要となります。特に戸籍の筆頭者や生計者が変わる場合、子どもの名字が変わる場合には注意しましょう。
- 健康保険
- 雇用保険
- 共済・厚生年金
- など
- 児童扶養手当
- 児童手当
- 児童育成手当(自治体による)
- など
子どもに関する手当は、再婚の際に同時に窓口で「消失届」の提出をするのがおすすめです。手続きが遅れると、不正受給とされてしまう可能性もあります。入籍や養子縁組をしても自動的に手当の処理が行われるわけではありませんので、忘れずに手続きを行いましょう。