シンデレラをはじめ有名なお話ではもれなく「継母(ママハハ)=悪役」ですよね。しかし現実の世界では本当にそうなのか?自分とは血がつながらない子どもの、再婚すると決めた相手の子どもの母親になるということは素晴らしいことなのでは?私はえらいのでは?「こんなはずじゃなかった!」と何度も思いながら、原案者の新川てるえさんが経験したことを通して継母たちにエールを送るコミックエッセイ『継母ですが?もう1つのシンデレラストーリー』。主人公・春子は長女と長男を連れて、二人の女の子がいる明生と再婚し、4人の子どもがいる幸せなステップファミリー(※)を作るわよ!と張り切るのですが…。今回はこの『継母ですが?もう一つのシンデレラストーリー』から、子連れ再婚をする際のヒントをご紹介します。
※ステップファミリー…子どもをもった男女の離婚・再婚によって生じる血縁関係のない親子関係・兄弟姉妹関係を含む家族。
再婚前に、パートナーと話し合っておくべき7つのこと
離婚を経て好きな人と出会って、再婚し新しい人生を始めよう!と思ったとき皆もれなく夢見がちで浮かれています。ふわふわした気持ちで、大事なことを話し合うのをすっかり忘れていた春子。これだけは子連れ再婚前から話し合っておこう!とアドバイスするのは次の7点です。
- どんなステップファミリーを作りたいか?(理想の家族のイメージ)
- どう役割分担していけばいいのか?
- 再婚後にどこで暮らすか?
- 子どもの養子縁組をどう考えるか?
- 家計のやりくりをどうするか?
- 子どもになんて呼ばれたいか?
- 子どもたちとどんな関係を築きたいか?
上記のような、どのように暮らしていきたいか、家事の役割分担はどうするか、家計はどうするかといったポイントは初婚・再婚に限らず、違った生活習慣や要求・考え方をもって暮らしてきた二人として、結婚する際には必ず話し合っておきたいポイントです。しかし春子たちの場合は、これから共に暮らしていく人間が、当の二人に加えて子どもが4人、総勢6人もいるのですからその難しさはどれほどでしょうか。試行錯誤を続けながら春子は何年もかけて、少しずつルールを決めて6人にとってベターな形をつくっていきます。
養子縁組をしないことで気持ちが楽になることがある
春子の子どもは明生と、明生の子どもは春子と養子縁組をしませんでした。春子が明生の戸籍に入籍したからといって、子どもも自動的に明生の戸籍に入るわけではなく別に養子縁組の手続きが必要なので、法的には春子の連れ子はただちに明生の子どもになるというわけではないのですね。同時に、明夫の籍に春子が入籍したからといって、自動的に春子が明夫の子どもの母親になるわけではありません。この場合も養子縁組の手続きをしないかぎりは、春子が明夫の子どもの母親に自動的になるわけではありません。
また、春子が明夫の籍に入籍すると、春子の子どもは筆頭者(=春子)が抜けた戸籍にそのまま残ります。子どもの姓は元の姓をそのまま名乗るか、家庭裁判所から「子の氏の変更許可申立」の許可をもらって明生や春子と同じ姓になるかのどちらかを選ぶことになります。
裏返していれば、春子は明生の子どもと「養子縁組をしない」ので、法的に親としての責任はありません。法的に親としての責任がない分、「○○しなくては!」という継母としてのストレスは軽減されたといいます。なお、養子縁組をするかしないか子どもが自分で決められる年齢は15歳以上で、15歳未満の場合は親権者が決めることになります。
継子を愛せなくても自分を責めないこと!
再婚した時には、「好きな男の子どもなら生活していくうちに我が子のように愛情がわくに違いない」と考えていた春子。しかし、そうはいっても継子は明生と前の妻の子。わかってはいるけれど、まとわりつかれればうっとうしいと感じ、前妻に似た顔を見ては嫌悪感を抱きます。でもその「いやな気持ち」を持ってしまっても「自分はダメな人間だ~」と否定せず、「ジレンマがあっても当たり前だと思って時間をかけて慣れよう」と春子は肩の力を抜くのです。
継母であることを堂々とカミングアウト!
近所の人や学校関係の人に「継母なのね。」と、「大変でしょう」、「えらいわね」などと言われ、なかなか理解されない中いちいち説明するのも面倒・・・周囲とのやり取りに疲弊する春子。日本では継母、継父であることやステップファミリーであることをわざわざ言わなかったり、隠しがちですが、「縁あって家族になった一番近い他人であると割り切っていい」と、春子は周りの人に「継母ですが何か?」と堂々と話していきます。
継子の躾は実親に任せる!
基本的な生活習慣が身についていなかった明生の子どもにガミガミ言ってはイライラし、学校に呼ばれれば駆けつけていた春子ですが、明生と「自分の子どもは自分で面倒見ること」というルールをつくります。春子の子どもの躾は春子が行い、明生の子どもの躾は明生が行い、それぞれが「しつけする人」と「サポートする人」になるのです。家事や子育ては春子が主に担っていますが、実子の躾は再婚相手が行い自分は最低限のサポートに徹することによって精神的負担がかなり小さくなりました。
継母をあきらめないで続けよう!
ステップファミリーの発達段階は、次の7つの時期に分かれていて、少なくともこのプロセスを経るのに4年~7年かかるという研究が紹介されています。
「夢と期待に満ちている時期」
↓
「何かがおかしいと感じ始める時期」
↓
「はっきりとした現実に気づく時期」
↓
「変動の時期」
↓
「行動の時期」
↓
「関係が深まる時期」
↓
「連帯達成の時期」
子どもの成長とともに、思春期になってさらに多くの問題が起こったり、さらに成長して大人になって、お互い適度な距離感を保てるようになったり…。春子は、自分たちや子どもの変化とともに、その時の時でより楽で楽しくお互い過ごせるよう、焦らず毎日を続けていきます。
初婚、再婚、子連れ再婚…さまざまな「結婚」のカタチがあります。しかし、再婚によってできたステップファミリーの姿は見えにくく情報もまだまだ少ない中、子連れ再婚&ステップファミリーの問題や解決のヒントにあふれる一冊です。
参考
『継母ですが? もう1つのシンデレラストーリー』(原案)新川てるえ・(漫画)本間千恵子 エンターブレイン社 2013年9月