秋の夜長に大切な人と一緒に絵本を味わってみてはいかがでしょうか?結婚祝い、クリスマスや恋人へのプレゼントに添えても。大人の心に響く絵の美しい一冊をご紹介します。
愛する人と一緒に読みたい、とっておき「大人向けの絵本」3冊
『わたしはあかねこ』
しろねこかあさんとくろねことうさんから生まれたあかねこ。兄弟はみんな白か黒なのに、ひとりだけ赤でかわいそうだからと白か黒になるようにと、白いミルクを飲まされたり黒い魚を飲まされたり・・・。「私はこのままがいい」というあかねこは家出して孤独な旅を続けます。しかし、あるまちで、「きみのあかいけなみきれいだね」といってくれた運命の相手・あおねこくんと出会い、ねるときも、あそぶときも、たべるときも、うたうときもいっしょに・・・そしてラストシーンにはびっくりする出来事が。温かくて素朴なタッチと鮮やかな色づかいの絵の明るい絵本です。中でも最後のページにはあかねこの幸福がぎゅっとつまっています。
『ひっぽのたび』
ひとりぼっちのカエルのひっぽは、ある日小さなひつじに出会い、二人は夢の中へ旅に出かけました。5月の黄色、6月の緑、7月の水色、8月の青、9月の金色、10月の赤、そして雪の降る12月・・・繊細に鮮やかに描かれた夢の中であさがおやトンボ、葉っぱなどと出会いながら進みます。ところが12月、ひっぽは雪の中で「もうひとりでもさびしくない」といって小さなひつじを残して歩いて行ってしまうのです。しかしその後も小さなひつじのことが頭から離れないひっぽ。ひつじはどこにいるんだろう?どうしているんだろう?ひつじを思うひっぽはひつじを探し続けて・・・とうとうひつじの姿を見つけました。4月、もうひとりぼっちではないひっぽは大切な人のもとへ駆け寄って・・・。なくして初めて気づく、本当にたいせつなこと。大人が絵を見るだけでもため息の出るほど美しい本です。
『百年の家』
1900年から100年間のある家の物語。落ち着いた色彩のトーンで葉っぱ一枚、洋服のしわ一本まで繊細に、見開き2ページ全面に描かれた大人向けの絵本です。その「古い家」は、めぐってくる季節とともにずっと同じ場所にいて自分のことを語りかけてきます。
1901年、頑丈に修理された家にある大家族が越してきて、その家と大勢の大人、子どもたちはともに20世紀を歩み始めます。ブドウの木が根を張り、畑や花を育て、羊が闊歩する。太陽に包まれながら結婚式、祭りや刈り入れをする。人が生まれて人が死ぬ。子どもたちが学校へ通い、夜はぐっすりと眠る・・・豊かではないがにぎやかで穏やかな日々が続きました。しかし2度にわたる戦争で戦時には避難所になることも。やがて新しい世代は家を継がず、朽ち果てた家は光と雨と一体となり、その後・・・。
ともに食べて、寝て、働いて、その節目に結婚、出産、死があること。人々の一日一日がつながって時間が経っていくことの重み。人間のあたりまえの生活のすごさと強さが感じられます。おじいちゃん・おばあちゃんから両親、自分、そして自分の新しい家族…大きな流れの中にいることに思いをはせたい一冊です。