シンプルな言葉での自由な表現、かわいらしい絵、美しい絵で、絵本は子どもだけではなく、大人も楽しませてくれます。読むのに時間がかからず、絵によってイメージが共有しやすいので誰かと一緒に読むのもおすすめです。今回はこれから結婚する、またはしたばかりのカップルが一緒に楽しめる、結婚祝いにも最適な絵本とオリジナル絵本のサービスをご紹介します。

愛する人と出会った奇跡を思う 『100万回生きたねこ』 作・絵佐野洋子

結婚する人におすすめの絵本というと多くの方が思いつくのが『100万回生きたねこ』。もちろん、子どもの本としても人気が高く、読み聞かせ用の本としても最適です。

その魅力は、絵本らしく繰り返しを多用して分かりやすいのですが、大人でも子どもでも素直に感動できるお話であるという点です。100万回生きたねこは、100万人の人に飼われて死にます。前半は繰り返し色々な飼い主のもとでねこが死ぬまでが描かれるのです。ねこは何度死んでも愛してくれた飼い主を愛さず、自分の死に対しても無感動で冷ややかでした。しかし、ねこがのらねこになった時に、全てが逆転します。これまでは誰も愛さなかったねこが、はじめて白いねこを自分よりも愛するようになるのです。

愛するしろねこの存在によって、はじめて生きていたいと思い、悲しみも知るねこ。その出会いの奇跡に、結婚したい相手と巡り合えた幸福を思う方も多いのではないでしょうか。

いつも一緒にいたいから。結婚の原点を思い返す。 『しろいうさぎとくろいうさぎ』 作・ガース・ウイリアムズ

結婚生活が長くなり、ふたりでいるのが当たり前になってくると、結婚したそのときの気持ちを思い出すことはなくなってしまいます。それは仕方がないことであり、相手がいることが日常になることは幸せともいえますね。けれど、時には結婚の原点に立ち返ってみることもいいのではないでしょうか。

『しろいうさぎとくろいうさぎ』は、表情ゆたかで愛らしいうさぎのイラストがすてきな絵本です。2匹は広い森のなかに住んでいて、いつも一緒。飛んだり、かくれんぼしたり、水を飲んだり、たんぽぽを食べたりして暮らしています。けれど、黒いうさぎは時々悲しそうな顔をします。それはいつまでも一緒にしろいうさぎといたいと願っていたからでした。

結婚するのはその相手と一緒にいたいから。この当たり前のことを忘れてしまう瞬間も時にはあります。お守りとしてこれから結婚するカップルに捧げたい一冊です。

おとぎ話が教える、幸せな結婚の条件。 『美女と野獣』 作・ボーモン夫人

2017年には、エマ・ワトソン主演のディズニー版実写映画が大ヒットしたことも記憶に新しい『美女と野獣』。いつの時代にも色あせぬ魅力のある美しい愛の物語です。最近ではディズニー版の知名度が高く、そちらのお話を知っていても、絵本になっている物語をご存知ない方も少なくないでしょう。ディズニー版ではヒロインのベルは父親とふたり暮らし。姉や兄は登場せず、代わりに野獣のライバルとなる無作法な伊達男ガストンが登場しています。

因みに、2014年にもフランス・ドイツの合作で『美女と野獣』は実写映画化されています。この映画は1740年に書かれた元祖である、ヴィルヌーヴ夫人作の『美女と野獣』に添ったもの。この映画ではベルには3人の兄と2人の姉がいます。そして、現在絵本に採用されているお話の多くは、1756年に出版されたボーモン夫人作のもの。この作品では兄たちは兵役に就いているとのことで登場せず、姉たちは最後に妖精によって罰せられます。

ヴィルヌーヴ夫人版とボーモン夫人版に登場するでは心の優しいベルとは対照的に意地悪でひがみっぽい2人の姉。彼女たちはベルに醜い野獣との結婚をおしつけますが、自分たちは幸せにはなれません。上の姉の夫は容姿が美しものの自分の妻にすら無関心。下の姉の夫は頭がいいのですが、妻に対して意地悪なのです。野獣は心優しく、ベルを心から愛していたため、父親のために一度家に帰りたいというベルを悲しみながらも帰してあげます。この場面はディズニー版でも名場面のひとつ。野獣は「なぜ彼女を帰してしまったんですか？」という問いに「愛しているから」と苦し気に答えていました。

『美女と野獣』が教えてくれる幸せな結婚の条件。それは、お互いに思いやりの心を持ちあえること。読むと相手に優しくなれるすてきな一冊です。

愛の成就を自然の営みに託して。 『ことりをすきになった山』 エリック=カール絵　アリス=マクレーラン文

『はらぺこあおむし』の作者として非常に著名なエリック=カールが絵を担当している絵本。エリック=カールならではの小さな子どもの目にも分かりやすく、力強く、色彩豊かな絵柄が印象的です。文章を担当しているアリス=マクラーレンは人類学者で、アンデス山地を実地調査して博士号を取った女性。彼女ならではの自然への視点が活かされた一冊です。

草木の一切ない岩だらけの山は動物たちの訪れもなく孤独です。ある日ことりのジョイが飛んできます。山はジョイを好きになり、ずっと自分の元にいてくれるよう頼みますが、食べるものも飲むものもない山では暮らしていけないのでと断られてしまいました。しかし、自分の娘にジョイと名づけて必ず山を訪れさせると彼女約束します。そうして、母から娘へと山へ訪れるジョイの習慣は何代も受け継がれるのですが、ジョイが去ってしまうのが寂しいと山は泣き、それが川とり、岩だらけの裸の山に緑が芽吹きはじめます。

その後緑が育つには長い時間がかかりますが、最後にジョイは緑豊かになった山に巣をつくり住むようになります。出会い、育て、やがて共に生きる。愛が成就する様を自然の姿に置き換えた物語なのです。単純な構成でありながら、なんともいえない余韻が残り、結婚したあとも、何度も読み返したくなる感慨深い作品です。

好きな人と星を見上げたくなるロマンチックでやさしい一冊。 『ほしにむすばれて』　谷川俊太郎文　えびなみつる絵

不思議で楽しい言葉の世界で、日本の子どもの多くをとりこにしている『もこ　もこもこ』をはじめとして、詩人谷川俊太郎はたくさんの絵本作品があります。『ほしにむすばれる』は天体観測や星に関する著作で知られているえびなみつるが、谷川俊太郎の文章に絵を添えた一冊です。

文章の書かれているページの隣には、金星、天の川、月の満ち欠けなど、実際の星空が描かれていて絵で天体観測を楽しめる形になっています。物語の語り手は男の子で、主人公は彼のおじいちゃん。天体観測が好きなおじいちゃんは、若い時に恋人と星空を見上げます。それは、ひとりで見上げるのとは違うのです。恋人に彼は星の名前を教えますが、彼女はそのたびに彼を見つめ、名前を覚えられません。初々しい恋人同士のやり取りが印象的なくだりです。

おじいちゃんは結婚して、子どもが生まれ、孫である僕が生まれ、天体観測は受け継がれます。家族をつくるという人の営みを、星空を見上げるという行為に重ねたこの一冊。これから結婚するというカップルの心に響くのではないかと思います。

結婚記念＆祝いにオリジナル絵本のサービスも

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