1. 花婿修行とはなに?
従来の日本には「男が外で働き女は家を守る」という暗黙のルールがあり、女性は結婚後、嫁として家事を担っていくものと考えられてきました。そのため、花嫁修業という習慣が生まれ、結婚前に母親から家事を教わったり、近年では料理教室に通って様々なお料理を作れるようにしたり、準備する期間がありました。
現在は、女性も男性も同じように、大学進学率や、就業率が高まり、共働き世帯が増える時代。その一方で「ワンオペ」といわれるほど女性に偏ってしまったままの家事労働や育児が、肉体的にも精神的にも苦痛という声などがSNSなどで話題に上るようになっています。
ところが実際に夫が家事をしようと思いやってみたところ「妻に叱られ、やる気を失った」という声もネットに溢れます。家事といっても、人によって流儀は様々で、ちょっと手出しすることで、やり方の違いから衝突するケースも見られます。そこには、育ってきた過程で男性に家事の体験自体が少ない、経験不足という背景もあるでしょう。これまでの日本では、女の子にはお料理や家事を教えても、男の子には教えてこなかったという家庭も少なくなかったでしょう。
そこで、結婚前の男性が行う「花婿修行」が、ここ数年の話題になっています。これは、男性でも家の事にもっと参加することが求められる時代になり、足りない家事スキルを補うための教室に人が集まってきていることを表しています。
2. 家事スキルのある男性が求められる時代
リゾートウェディングを行うワタベウェディングの花婿修行に関する意識調査では、「花婿修行をしたい・した」と答えた未婚男性は47.4%と、半数近くに上っています。※1 これまで家事の経験が少なくても、カバーできるように、花婿修行をしたいと思う男性が多いことがわかります。
どういった家事がしたいかという質問の回答上位はこちら。
男性がしたい花嫁修業 BEST3
- 1. 料理 73.5%
- 2. 掃除 50.0%
- 3. 洗濯/育児 49.4%
- ※2
どれも、女性がしてほしい家事の上位にマッチしています。花婿修行でこれらを身に着けることは、男性にも女性にもうれしいことになります。
一方、一人暮らしを経験して家事ができる男性も多くなっていると思うのですが、結婚後もルーティンとして家事・育児への参加ができているかはまた別のよう。下記の結果からは、男性がしたいと思っている家事と実際にできていると思われている家事にギャップがあることがわかります。
女性がパートナーに対してできていると思うこと BEST3
- 1. ごみ捨て 54.0%
- 2. 車の運転 53.1%
- 3. 掃除 44.9%
- ※3
男性側が料理や、掃除などの家事の分担をしたいと思っていても現実的にはできていない状況が読み取れますね。それはスキルの問題だけではなく、勤務時間の問題なども含まれているでしょう。男女で役職の差や給与の差をつける企業は依然として多く存在し、またそもそもの長時間労働などの社会問題もあり、結婚後に夫婦で平等に家事を分担するのは、難しい問題でもあります。それでも、男性が積極的に家事や育児に参加できていなければ、結婚後のトラブルの原因になります。社会制度が変わるのを待っていても、解決はされません。
「結婚を決断するのに、男性が家事や育児ができることは重要だと思いますか?」という質問に、はいと答えた未婚女性は、84.8%※4 というデータがあるように、今はほとんどの女性が家事のできる男性を結婚相手として求めています。こうした需要が、家事が苦手と感じる男性も、花婿修行として改めて身に着ける機会を持つことに意欲的な背景になっているのでしょう。
3. 家事に対する性別意識をなくそう
育児に関しては、それぞれの夫婦によって状況の違いがありますが、家事はどの家庭にも発生するもの。そのため、共働きの夫婦では分担の比率によっては、家事にかける時間の差が夫婦間トラブルの地雷になっているケースは多くみられます。
まず、家事分担に関しては、性別による役割分担の意識を変えることが大切です。よっぽど凝らない限り、料理にしても洗濯、掃除にしても必要最低限の家事であれば、男性、女性関わらず、手の空いている人がやっていくことはそこまで難しくはないでしょう。
大切なのは、男はこうあるべき、女はこうあるべきという先入観は捨て、家事全般を把握したうえで時間のあるほうや得意なほうがやる、というように柔軟に分担していくことです。仕事が忙しいほうは、平日の時間は取れないけれど休日にまとめてできる家事を行うこともできるでしょう。地域の集まりに出るなども家事の1つに入り、分担できそうです。
また、家計に余裕があれば、ハウスクリーニングを外注したり、高機能の家事家電を購入したり、効率化するのもいいですね。
家事好きな人は、女性男性に関わらず居るでしょう。凝った料理を考えたり、洗濯術・整理整頓術などを駆使してハウスキーピングをしたり、節約しながら買い物したり、家事に専念して家計に貢献する選択肢はなくなりません。最近は、主夫として活躍する男性の姿も見られるようになりました。
専業主婦・主夫の場合でも、育児や介護、病気などで相手が家事をできない時期が来ることも考えられます。家事に苦手意識のある人は男女問わず、基本的な家事スキルを身に着けておくことが、やはり必須といえます。それぞれの夫婦の形は違っても、家事全般への主体的な参加意識を二人で共有していくことが円満の秘訣になっていきそうです。
4. お互いの家事環境やレベルを確認
男女平等と家事分担意識には、育ってきた環境の影響も大きくなります。母親が専業主婦だったり、母親が家事や育児を主にした家庭で育った男性は、家事を女性に頼ってしまうパターンも多いでしょう。
結婚前に、彼の実家の様子を聞いたり、実際に遊びに行ったりして、さりげなく育ってきた環境を確認し、自分の望む夫婦像とどういった違いがあるかも知っておくとよいでしょう。彼の父親が、家事全般を主体的に行っているようなタイプであれば、あなたと彼の家事分担も自然に行ってくれるのではないかと期待できますね。また、甥っ子や姪っ子がいる場合は、子どもとの関わりかたも見ておくと、育児に関する考え方が理解しやすくなるでしょう。
一方、自分の母親が専業主婦だった場合、それと同じような家事をしようとすることで、大変になる共働きの女性の姿も見られます。キャリアと家事のバランスを考えておくことも必要です。そのうえで、自分たちがどうしたいのかは、二人で考えていくべき問題になります。
また、育児や介護が始まれば、その時々によって家の中でやるべきことが変わってきます。その都度二人で家事の総量を確認しながら分担できるのが一番良い方法になります。家事は生活のベースなので、そうした夫婦を取り巻く環境の変化の前にできるようになっておくと後が楽です。
いずれおとずれるであろうそのような状況のためにも、自分やパートナーがどれくらいの家事力レベルなのか、あらかじめ把握しておけるといいですね。足りない部分は、二人で教室に通ったり、それぞれの両親に教わったり、一人暮らしで実践したりして補っていきましょう。もちろん花婿修行といったプログラムも活用できますね。
経験の少ない人は、色々な家事をやってみることで得意分野も見つかります。得意なこと、やっても苦にならないことを振り分けていくきっかけにもなるので、男女問わず、まずは結婚前に家事を全般的に経験しておけるとよいですね。
まとめ
花婿修行の意識調査からも、これからは、男性女性関わらず、家事全般のスキルを身に着けておくことが大切になってくることがわかりました。家事スキルアップに時間を割くことは、将来に必要な投資と考える男性も増えていますね。
また、育児の段階でも家の手伝いに男女の差を作らず、子どものころから家事を実践させることが肝心になってくるでしょう。いつかは花嫁修業や花婿修行という習わしがなくなり、結婚するために修業するのではなく、男女関わらずできる人が家事にとりくむことがスタンダードになっていくといいですね。
家事分担にストレスがなくなれば、家事をめぐる夫婦間のトラブルも起こりにくくなるでしょう。そして、共働きでも専業でも、育児や介護などの状況変化に耐えられる基礎スキルをお互いに持ち、助け合う夫婦が増えていくことが理想的ですね。
ワタベウェディング株式会社/“花婿修行”に関する意識調査結果発表
https://www.watabe-wedding.co.jp/company/press/info/detail.html?press_id=679 (外部リンク)
https://www.j-cast.com/trend/2018/07/12333725.html?p=all (外部リンク)
NIKKEI STYLE/「名もなき家事」負担 男女の意識と世代間ギャップ
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO28086480T10C18A3000000/ (外部リンク)