映画『のび太の結婚前夜』は、国民的アニメ『ドラえもん』の名作の1つとして知られています。1999年に公開されたのち、2014年には3Dでリメイクされました。本当にしずかちゃんと結婚できるのか不安になったのび太がドラえもんとともにタイムマシンで自分の結婚式前夜に行くという話で、大人になったのび太、しずかちゃん、ジャイアン、スネ夫、そして、出木杉が登場します。
出木杉は優等生でハンサムな男の子。そそっかしく、勉強ができず、かっこよくもないのび太とは正反対です。さて、選べる立場のかわいいしずかちゃんが、なぜどう考えても“コスパ”の良い出木杉ではなく、何故のび太を選んだのか。これがこの物語のテーマとなっています。
“コスパ”を一切考えない青年のび太の魅力
普段のドラえもんではもっぱらのび太のダメさ加減、弱々しさが強調され描かれていますが、本作でののび太はそそっかしくぱっとしないけど、他人に損得なしに親切ができる好人物として描かれています。
荷物を持ったおばあちゃんに手を貸し、迷子になった子猫を飼い主の元へと届け、寒そうな先生の肩に上着をかけるのび太。しかも、それが当たり前といった感じでとても自然にしています。子猫の飼い主には自分が届けたことをつけずにそっと去っていったくらいです。
最近の日本では、親切どころか、マタニティーマークをつけた妊婦を「妊娠は病気じゃない!」とののしったり、ベビーカーに乗った赤ちゃんの頭を「邪魔!」と殴った男が逮捕されたりとなんとも寒々しい事件をよく耳にします。もしもこのような男性がエリートで、結婚したとして、その女性は幸せになれるでしょうか。そうは思えません。損得なしに他人に親切にできるような男性でなければ、妻にも冷たいでしょう。
しずかちゃんのパパは、のび太を「人の幸せを願い、人の不幸を悲しむことのできる人だ」と評し、だから娘を嫁がせて大丈夫だと語っています。
子どもは“贅沢品”!?親切をしない人たちの理屈とは?
のび太が選ばれたのは、コスパなんかそもそも頭にない男性だからでした。しかし、最近では「恋愛、結婚はコスパが悪い」という言葉もあり、さらに驚くことに「結婚、子どもは贅沢品」という方もいました。いわく、「今は自分だけで精一杯の人も多い。そんななかで、結婚するのも、子どもを産むのも贅沢。自分は結婚もしないし、子どもももたないから、妊婦なんかに手を貸す必要はない」とのこと。それに対して、「他人の子どもでもあなたも老人になったらお世話になるでしょ」という人もいましたが、私は重要なのはそのことではないと思います。
そもそも親切はリターンを期待しないもの。「~だから、親切します」と理屈でするものでもないのです。のび太だってけっして自分に余裕があるわけではないでしょう。それでも、困っている人がいれば手を貸さずにいられなかったのです。自然にそうなるのでしょう。
こそう考えると、親切にできること自体は大切な才能であり、そうした男性はとても貴重といえるのでしょう。なるほど、しずかちゃんは正しいのです。