現役高校生カップルとして有名になった「しゅんまや」(前田俊さん18歳・重川茉弥さん16歳)が6月15日に婚姻届を提出したそうです。高校生が結婚できるの?と驚いた人も多いかもしれません。日本の婚姻年齢は2020年7月現在、男性18歳、女性16歳なので、「しゅんまや」は親の同意があれば婚姻届を出し、結婚することができたのです。
10代で結婚している人はどれくらいいるのか、親の同意はどうすればいいのか、未成年の結婚の法律、成年年齢の引き下げと女性の婚姻年齢引き上げについてご紹介します。
ちなみに、2020年7月10日現在、「成年」とは満20歳になった人のことで、成年になっていない人を「未成年者」といいます。成年とは20歳以上、未成年は19歳以下ということになります。後述しますが、2022年4月1日に成年年齢は18歳に引き下げられます。よって2022年4月1日以降は、成年は18歳以上、未成年は17歳以下、ということになります。
1. 未成年者の結婚数
未成年の結婚の実数
はじめに、未成年で結婚した人がどれくらいいるのか、データをご紹介しましょう。厚生労働省の人口動態調査で詳しい婚姻件数の数字がわかります(※1)。ちなみにこのデータは、「婚姻件数」として「同年に結婚生活に入り届け出たもの」を数えており、婚姻届の提出総数と同じではない(提出したが同居はしていない、というようなカップルはカウントされていない)ことに注意が必要です。
2017年に未成年で結婚した妻は15歳~19歳合計8,142人、未成年で結婚した夫は17歳~19歳合計4,504人です。
未成年者の結婚のうち、夫と妻の年齢の組み合わせとしては、夫と妻どちらも19歳同士がもっとも多い1259組となっています。未成年といっても、19歳であれば社会人も多いので婚姻数も多くなります。芸能人でも宇多田ヒカルさん、柳楽優弥さんなどは19歳で結婚しています。
ちなみに10代の結婚の中で夫と妻の年齢差が大きい夫婦は、夫が10代の場合は「夫18歳―妻50歳」「夫18歳―妻44歳」「夫19歳―妻44歳」というケースがありました。妻が10代の場合は「妻19歳―夫77歳」「妻19歳―夫69歳」といったケースがあったようです。
妻か夫どちらかが未成年の結婚(年齢別)
妻の年齢別内訳(15歳~19歳合計8,142人):
15歳10人、16歳220人、17歳726人、18歳2,391人、19歳4,795人
夫の年齢別内訳(17歳~19歳合計4,504人):
17歳77人、18歳1,565人、19歳2,862人
※女性15歳、男性17歳とあるのは、「婚姻件数」の統計が「夫妻の年齢は、結婚式をあげたとき、または、同居を始めた時の年齢である」ため。
妻か夫どちらか(またはどちらも)が10代で多い組み合わせ
- 夫と妻が19歳同士 1,259組
- 妻19歳―夫20歳 814組
- 夫と妻が18歳同士 666組
10代の結婚は離婚率も高い
なお、10代の結婚については離婚率が非常に高いといわれています。参考までに10代の離婚率を挙げてみます。離婚率にはさまざまな算出方法がありますが、人口1000人あたりの離婚した人の割合ですと、10代はそもそも結婚している人が少ないので、19歳以下女性0.35%、19歳以下男性0.14%と低い割合になります(※2)。しかし「結婚している人」を分母にして離婚の割合をみる「有配偶離婚率」をとると非常に大きくなり、19歳以下で男性49.9%、19歳以下の女性で81.8%にも上るというデータもあります(※3)。
(※1)人口動態統計/婚姻件数(同年に結婚生活に入り届け出たもの)2017年(外部リンク)
(※2)人口動態統計 /別居時の年齢(5歳階級)別にみた夫-妻・年次別離婚件数・離婚率(人口千対)(各届出年に別居し届け出たもの)2018年(外部リンク)
(※3)国立社会保障・人口問題研究所 人口統計資料集(2020) 表6-11 性,年齢(5歳階級)別有配偶者に対する離婚率:1930~2015年(外部リンク)
2. 未成年の結婚には親の同意が要る
未成年の結婚と親の同意
未成年の結婚は、民法では以下のように規定されています。
(婚姻適齢)民法第731条
男は、18歳に、女は、16歳にならなければ、婚姻をすることができない。
(未成年者の婚姻につての父母の同意)民法第737条
未成年の子が婚姻をするには、父母の同意を得なければならない。
父母の一方が同意しないときは、他の一方の同意だけで足りる。父母の一方が知れないとき、死亡したとき、又はその意思を表示することができないときも、同様とする。
つまり、男性は18歳、女性は16歳から婚姻届を出すことができます。どちらか一方が婚姻年齢に達していない場合には、婚姻届は受理されません。
また、未成年者が結婚する時には父母の同意が要ります。18歳、19歳の男性と16歳~19歳の女性は未成年なので、父母(養父母)のどちらか、の同意が必要になります。 親の同意が要るのは未成年者だけなので、もし夫20歳、妻18歳であれば夫の親の同意は不要、妻の親の同意があれば婚姻届を出せます。
ここでのポイントは、未成年者の婚姻には「父母」の同意が必要とされていることで、「親権者」の同意ではないということです。
例えば、未成年である磯野サザエが結婚することになりました。サザエの親である波平とフネは離婚していて、サザエの親権はフネがもっているとします。サザエの結婚について、母・フネは反対していてサザエの結婚に同意してくれません。しかし、もしサザエが父・波平に結婚の同意を得られたとしたら、「父母の同意を得る」という条件をクリアできたことになります。
このように「父母の同意」はどちらか一方でも足りるとされていて、妻や夫の両親のうち、どちらかが既に亡くなっている、どちらか一方が同意しない、所在がわからない場合にも、一名だけの署名でも認められます。
もし両親ともに亡くなっている場合には、基本的に「父母の同意は不要」であるとされています。ただし、養父母がいれば、少なくとも養父母のどちらか一方の同意が必要になります。
親の同意の示し方
父母の同意は次のいずれかの方法で示します。
1. 婚姻届と一緒に父母の同意書を提出する。
「婚姻の届出を行うことに同意します」という趣旨の「同意書」に父母が署名、押印をします。同意書は以下のように役所のHPでも入手できますが、同様の書式のものを自分で用意してもOKです。
同意書記載事例(相模原市)(外部リンク)
2. 婚姻届の「その他」欄に父母(養父母)が「婚姻に同意する旨」を記入し、署名(自筆)、押印する。
また、1. の同意書ではなく婚姻届の「その他」欄に「この婚姻に同意します」と記入した上で父母の署名・押印でもOKです。
記入例
妻 磯野サザエの婚姻に同意します。
妻の父 磯野波平 押印 妻の母 磯野フネ 押印
3. 婚姻開始年齢は2022年4月男女ともに18歳へ、親の同意不要に
18歳でも親の同意は要らなくなる
さて、民法が改正され、2022年4月に成年年齢が18歳に引き下げられます。2022年4月1日の時点で18歳以上20歳未満の人(2002年4月2日生まれ~2004年4月1日生まれ)は、その日に成年に達することになります。ただし、飲酒や喫煙、馬券の購入等については、これまで通り20歳未満は禁止です。
これと同時に、婚姻開始年齢は女性が16歳から18歳に引き上げられ、男女ともに18歳になります。(成年年齢=婚姻開始年齢、になります。)つまり、18歳以上同士であれば、親の同意なく婚姻届を出すことができるようになるということになります。
ただし、改正法施行の2022年4月より前に16歳以上18歳未満である女性は、法律の改正後も結婚することができることになっています。(2004年4月2日~2006年4月1日に生まれた女性は、2022年4月1日以降も16歳以上18歳未満で結婚できます。この場合は、結婚に親の同意が必要であることと、後述の「成年擬制」の適用はそのままになります。)
成年擬制
2020年7月現在の婚姻開始年齢は男性18歳、女性16歳です。例えば18歳男性と16歳女性が結婚する場合は、どちらも未成年なので両方の親の同意が必要になります。現行法では、未成年者であっても、結婚すると「成人」として扱われます。これを「成年擬制」といいます。この制度により、例えば、もし子どもが生まれた場合には、子どもの親権を二人でもつことになります(結婚しない場合や、母親が婚姻開始年齢に満たない場合は、子どもの親権は基本的に子どもを産んだ女性の親権者、となります)。
(婚姻による成年擬制)第753条
未成年者が婚姻をしたときは、これによって成年に達したものとみなす。
このように、改正法施行後は、成年=結婚開始年齢なので、「未成年者が婚姻する」ということがありえなくなり(2004年4月2日~2006年4月1日に生まれた女性は例外)、成年擬制も意味を持たなくなります。法律からも削除されることが決まっています。
参考
本澤巳代子・大杉麻美・高橋大輔・付 月『よくわかる家族法』ミネルヴァ書房 2014年伊藤滋『夫婦親子男の法律知識』自由国民社 2016年
一般社団法人 日本家政学会『現代家族を読み解く 12章』丸善出版 2018年
南部義典『図解 超早わかり 18歳成人と法律』C&R研究所 2019年
監修
アイリス綜合行政書士事務所
行政書士・FP 田中真作
早稲田大学法学部卒業。行政書士・FP・宅地建物取引士。2003年行政書士登録。
相続や離婚などの一般市民法務相談や各種許認可業務など幅広く対応。
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