恋人と結婚の約束をしたり、公にエンゲージしたのに、結婚式の日が近づくにつれてなんだか少しだけ不安になる、そんな状態をマリッジブルーと表現することがあります(ちなみに、マリッジブルーというのは、実は和製英語で英語圏の国でこのままマリッジブルーと言っても通じません。英語ではpre-wedding jitters と言います。訳すと、結婚前の不安、という意味です。)。
ウェディングドレス選びに、食事メニューの選択、新居の準備など、幸せで嬉しい時間を過ごしていて、気分は最高に幸福の中にいたはずなのに、ふとした瞬間から不安がジワジワと浸食してくる時、これがいわゆるマリッジブルーと言われる状態です。
- 「あれ、私、本当にこの人と結婚していいの?」
- 「絶対幸せになりたいの、だから失敗したくない。」
考え始めると、焦りが焦りを呼び、頭の中はネガティブ思考の悪循環になるばかりです。目の前の人を愛してると何も疑わずに断言できたはずなのに、なんでこんなに不安に襲われるのでしょうか。まずは深呼吸して、落ち着いてください。こんな風に結婚を前にして精神的に不安定になってしまう女性って、とても多いそうです。
カリフォルニア大学の心理学博士であるジャスティン・ラブナー博士が2012年の「Journal of Family Psychology」に発表した研究報告によると、カリフォルニア州内で結婚後6ヶ月後の新婚カップル232組を対象にした調査において、結婚前の精神不安に悩んだ経験のある女性は、不安を全く感じなかった女性のなんと2.5倍にものぼったそうです。(*1)洋の東西を問わずマリッジブルーを経験する女性は多いのですね。
幸せの絶頂にいるはずの時期になんでこんなに結婚に不安になるのか?それは、そもそも結婚というのは生活事態が大きく変わるイベントだからです。
いまあなたは結婚することで、もう一つ新しい家族を作るということになります。これまで自分の家族だと言えたのは、自分の両親や兄弟ですが、新しい家族とはまさに、あなたとあなたの配偶者となる方とふたりで1から作っていく家族です。そして、その後ろには、あなたと結婚したお相手の方の家族もいるわけです。
なんだかこれだけでも、混乱してしまいそうですね。結婚は確かに人生の中でもとても幸せで大きな出来事ですが、このように、同時に環境の変化が伴います。そしてこの環境の変化、というのに人間は結構弱いもので、その変化が良いものでも、悪いものでも、変わるという事がストレスになります。そうです、マリッジブルーで精神的に不安定になったり、結婚が怖く感じたりするのは、生活がこれまでとは大きく変わりそうだぞ、という予感が人を不安定にさせるのです。
ある意味、当然予想されるこれからの将来をきちんと考えている、ともいえますね。では、こういう時どんな対処をすればマリッジブルーを乗り越えられるのでしょうか。
ラブナー博士が言うには、まずしてはいけないのは、「一時的な物」として、不安と向き合おうとしない事や、こんな不安感など愛の力で払拭できる、と根拠のない説得を自分で自分にしてしまうことだそうです。大切なことは、きちんと「その不安」と向き合うこと、そして解決のために正しく行動すること。正しい行動、とはお相手の方とあなたが今感じている事について話し合う事だと言えます。その不安をお相手と話し合うことはとても良い解決策なのだそうです。
あなたの感じている未来への不安は、お相手の方も理解できるはずです。多くの場合、2人で話し合うことで不安感は簡単に消えるものだそうです。あなたの選んだお相手をもっと信じてふたりで話し合う、これが何よりの特効薬なのだそう。それでも不安が深まり体調まで崩してしまうようなら、専門の医師に相談するべきです。
人生の幸福について多くを著書に残している、オーストリア人精神科医アルフレッド・アドラーが確立したアドラー心理学には、こう書いてあります。
――――人生の全ての問題は3つの主要な課題に分類することができる。すなわち、
友好の課題、仕事の課題、愛の課題である。――――(*2)
愛の課題というのは、結婚や家族の問題のことを指していて、結婚とは男女が相互尊敬的な対等の協力関係を築くことである、と言っています。ふたりで新たに作っていく家族と何でも話し合ってみてください。ひとりで考えるより、ふたりで話していると意外と「あ、そうか、それでいいんだ!」と気持ちが軽くなったり、新しい事に気づいたりする事が多いものです。こういう事を積み重ねて行くことが、愛の課題をクリアしていく事になるのだと感じます。
*2 HEINZ L. ANSBACHER & ROWENA R. ANSBACHER(1956). "THE INDIVIDUAL PSYCHOLOGY OF ALFRED ADLER", New York : Haper & Row, Publishers, Inc.