結婚式のなかでも、キリスト教式、神前式、仏式といった宗教的な形式以外の選択肢として、人前式が一般的になってきました。形式にとらわれず、結婚式をより身近なものにしてくれる人前式について、もっと知りたくありませんか?会場選びや、挙式の方法など、人前式の特徴を確認していきましょう。
人前式を徹底解説―計画、費用、プログラム、誓いの言葉、衣裳など
1. 人前式のメリットと人気の理由
まずは、人前式の特徴と、そのメリットについてご紹介します。
人前式のメリット1:宗教に関係ないこと
宗教的なスタイルで結婚式をあげることに違和感がある場合は人前式であれば、宗教に関係なく挙式をすることができます。また、キリスト教式や神前式といった、宗教にのっとる形式では両家の宗教観・考え方が折り合わないこともあり、その解決として宗教色のない人前式というのが重宝されます。
人前式のメリット2:自由なスタイルで二人らしく、カジュアルにも
人前式には、一般的、またな人気の式次第・演出、というものは存在しますが。基本的には自由なスタイルで執り行ってよいもの。会場やドレスコード、演出も自由。二人らしさを追求したセレモニーが実現できます。堅苦しさを敬遠し、結婚式をあまりしたがらない今どきの世代でも行いやすいカジュアルなスタイルでもかまわないところが人気のポイントでもあります。
人前式のメリット3:「結婚式をしない」よりは親も嬉しい
結婚の誓いの際に立会人を依頼すれば、二人の門出としてのけじめがつき、結婚式をしないことに抵抗のある親世代も納得できる点が挙げられます。
列席者の数を増やしやすいのも魅力の一つです。神前式のように家族だけしか入れなかったり、キリスト教式のようにチャペルの大きさで人数の制限が必要になったり、ということを避けることができるため、ゲスト全員に見守られての挙式が可能になる点も人前式の良いところになります。
2. 教会式、神前式に並ぶ人気、人前式
人前式は、形式にとらわれずに行う自由な結婚式として、ここ数十年の間に人気が高まっている挙式スタイルです。そもそも、現在日本で一般的と考えられているチャペルでのキリスト教式や、神社での神前式が広がったのも、ここ120年ほどのことです。近年無宗教化している日本の文化の中で、自分たちだけのオリジナリティを表現するために人前式を選ぶ新郎新婦も見られます。その中で、人前式は宗教式に次いで選ばれる、今時の新郎新婦から支持される式の一つとして受け入れられています。
【神前式】19.2%
【人前式】15.5%
※データ出典:マイナビウェディングより「マイナビウーマン」2012年調査
http://wedding.mynavi.jp/contents/special_contents/kyoshikitype_top/
3. 成功のポイント・親に人前式を説明しておく
人前式を行いたい場合は、まず双方の親に報告をしましょう。なじみ深いキリスト教式や神前式でない挙式に、抵抗を持つ世代の親もいます。
人前式に対する親の不安の声の例
- 見たことがないから想像できない
- 式として認められないのでは?
- けじめがつかないのでは?
どれも人前式を知らないことから生まれる思い込みによるものですが、一つ一つの疑問に二人が真摯に答えることができれば、道は開けるでしょう。自分たちの意向を双方の両親に届けるために、具体的にイメージしやすくなるよう、式のプログラムとともに説明しましょう。親に理解してもらうためにも、人前式について、自分たちがもっとよく知っておくことが第一歩になります。
4. 人前式を儀式的に成り立たせる3つの要素
人前式は、新郎新婦の誓約をゲストが立会人として認めることで結婚が成立するという仕立てで執り行うのが一般的です。立会人は、親友などが代表して務めるケースや、ゲスト全員がなるケースがあります。新郎新婦とゲストが協力して式を作る際に基本的な要素がこちらの3点になります。
1.結婚宣言
人前式で儀式としてもっとも核になるものは、結婚宣言です。オリジナルの誓いの言葉を用意し、新郎新婦がゲストの前で堂々と宣誓します。
2.結婚誓約書
新郎新婦が結婚誓約書にサインしたりするのも一つの大きな儀式となります。結婚誓約書の内容はオリジナルなものが多いようです。役所に提出する婚姻届けを書いて誓約書とするケースもみられます。
3.ゲスト参加型のイベント
人前式ではゲストが「立会人」として参加する演出を取入れるのが一般的です。教会や神社のようにおごそかな空間ではなく、ゲストが「楽しんで」参加できる雰囲気作りが人気です。
Photo:Shardayyy Photography
5. 人前式の会場選び
人前式では、会場選びの柔軟さも魅力です。チャペルや神殿が併設されていない場所でも、自分たちで作り上げた結婚式が挙げられます。
人前式ができる会場
- ゲストハウス
- レストラン
- ガーデンテラス
- パーティー用のクルーザー
- 映画館、美術館など
人前式は立会人としてのゲストがいれば成立するので、専用の式場でなくてもフリースタイルで挙式ができます。披露宴やパーティーをその後にすることを考えると、飲食店がある施設や、レストランが便利です。ゲストハウスのプライベートな空間を最大限に生かした、自分たちらしい結婚式も素敵ですね。
また、映画館など、新郎新婦の趣味の空間で挙式をする個性的な結婚式も可能になります。人前式を得意とするウェディングのプロデュース会社などに相談することで夢の結婚式が叶うかもしれません。
6. 人前式の衣装
人前式では、衣装にも縛りがありません。ウェディングレスでも、着物でも、好きな衣装で挙式ができます。会場の雰囲気に合わせてどちらかに、選ぶこともできますし、お色直しに両方着ることも可能です。
また、会場や会の雰囲気に合わせて、新郎新婦がゲストのドレスコードを決めることができます。差し色やワンポイントアイテムを指定したり、ゲストにもコスプレをしてきてもらったりと、ゲストと一緒にドレスコードを楽しむ人前式も人気です。
一部では人前式はカジュアルだと思っている人もいるので、必要があれば招待状に「フォーマル」などとドレスコードを明記した方がよいでしょう。格式張らずに少しカジュアルダウンしたいという時は、「平服」という指定をすれば、男性はジャケット着用、女性はワンピースといった気軽な装いのパーティーも可能です。
7. 人前式の費用
キリスト教会式や、神前式に比べると、挙式としての費用を限りなく抑えることができるのも人前式の利点です。一般的なキリスト教式や神前式に比べると挙式料金として10万円以上費用が抑えられることもあります。
結婚誓約書などの必要なアイテムは、実費で用意すればよく、立会人も友人や親族から選ぶことで司祭などの出張料も不要です。挙式を成立させる料金がかからない点や、披露宴会へ移動しないスタイルであれば挙式場使用料もかかりません。
一方、凝った演出に使うアイテムを用意する場合は費用がかさんでいくケースも見られます。手作りのアイテムも、グレードを考えると、道具や材料費がかかってくることは予算を立てるときに考えておいた方が良いでしょう。また、会場によってはアイテムの持ち込み料を設定している場合もあるので、会場選びの際に、プランナーや、レストランならお店の人にしっかり確認して見積もりを作ってもらいましょう。
人前式の挙式で費用の掛かる項目(例)
- 結婚誓約書作成の実費
- 立会人への謝礼
- 司会進行係への謝礼
- 会場へのアイテム持ち込み料
- 祭壇を取り付ける場合設置料
- 承認時のアイテム準備の実費
8. 人前式成功のカギ、進行役
人前式の式進行は、司会・進行役を立てて行うとスムーズです。オリジナルの演出・儀式、ゲストの参加を要する内容が多い場合は、すべきことの流れをゲスト全体にうまく説明できることが求められます。ゲストにどういった動きをしてほしいのか、事前の打ち合わせで司会者に具体的に説明し、内容をしっかり司会者に理解してもらいましょう。挙式リハーサルを念入りに行う新郎新婦もいます。リハーサルの際に司会役や立会人の代表者に参加をお願いすることもあります。
人前式のイベントが成功するカギは司会進行役にかかっていると言っても過言ではありません。誰に司会を依頼するかによって、式の満足度は変わるでしょう。また、依頼相手によって謝礼も変わってきます。予算を考える際に検討しましょう。
人前式司会の謝礼相場
- プロ…3~5万円 ※有名人は数十万円以上の場合も
- 友人…1~3万円
9. 人前式のプログラム例
自由にプログラムを組むことができる人前式ですが、大きな流れとしてはあまり違いはないようです。オーソドックスなプログラム例はこちらです。
1. ゲストの入場…結婚誓約書へサインする、花など演出小道具の受け取りをする ※入場の際に、新郎が花をあつめて花嫁に渡すなどのイベントがある場合はここで。
2. 新郎新婦入場…新郎新婦が入場する ※新郎新婦が同時に入場刷る場合もあれば、キリスト教式のように新婦父がエスコートする演出もあります。また、家族や参列者に子どもがいれば、フラワーガールの役をしてもらって一緒に入場する可愛らしい演出も人気です。
3. 開会宣言…司会が人前式の結婚承認の方法を説明する
4. 結婚の宣誓…新郎新婦で決めた誓いの言葉をゲストに向けて述べる
5. 結婚誓約書にサイン…新郎新婦で誓約書にサインをする
6. 立会人による承認…立会人(ゲスト)が説明にあった内容(拍手など)で承認の合図をする
7. 閉会宣言…司会が閉会の宣言をする
8. ゲストへのお礼…新郎新婦から立会人・ゲストに感謝を述べる
9. 新郎新婦退場…晴れて夫婦となった二人が揃って退場する ※ゲストにフラワーシャワーやライスシャワーをしてもらい退場する演出が人気です。
挙式の進行としては、こちらのプログラムを基本に、オリジナリティを加えて式次第をアレンジするとうまくまとまるでしょう。キリスト教式に習って指輪の交換やヴェールダウンをしたり、神前式の三々九度を行ったり、さまざまな要素を取り込んでオリジナルのスタイルにする新郎新婦もいるようです。
このような人前式が滞りなく終わった後は、披露宴や結婚パーティーが行われるのが一般的です。ゲストが披露宴会場に移動した後、新郎新婦が再入場をして開宴につながります。その後は他の披露宴と同様のプログラムを組むのが一般的です。
Photo:Andreas Rønningen
10. 人前式「誓いの言葉」の文例紹介
オリジナリティを見せたい誓いの言葉ですが、ある程度のパターンを知っておいた方が作りやすいかもしれません。今回はオーソドックスな文例から、新郎新婦のカラーが出せるものをご紹介します。
ふたり一緒に
- 私○○(新郎)と私○○(新婦)は、本日ここに集まってくださった皆様の前で、結婚の誓いをします。
- これからふたりで、苦しいことも、嬉しいことも分かち合い、お互いを愛することを、皆様に誓います。
ふたり別々に
- 私○○(新郎)は○○さん(新婦)と出会えたことに感謝し、一生涯愛し続けることを誓います。いつも笑顔でいてくれる○○さん(新婦)の優しい心を大切にし、苦しいときも支えていきます。
- 私○○(新婦)は○○さん(新郎)にこの先も愛されるよう、美しさを保つ努力を怠らないことを誓います(笑)
立会人との掛け合い
- ○○さん(新郎)○○(新婦)は大切な一人娘です。わがままなところもありますが幸せにすると誓いますか?
- ○○さん(新婦)○○(新郎)とふたり、幸せな家庭を築いていくと約束できますか?
誓いの言葉の言い方や内容はすべて自由となるため、自分たちで決めることができます。当日は緊張するかもしれませんが、前もって練習をしておきましょう。きっと堂々とゲストの前で誓いを立てることができるはずです。
11. 凝って作りたい人の結婚証明書アイデア例
結婚証明書は、誓いの言葉、会場、日時、新郎新婦サイン、立会人サインが揃っているのがベーシックなスタイルです。本物の婚姻届けも良いのですが、オリジナルのアイテムを用意する新郎新婦も少なくありません。
素材を楽しむ
- 布に印刷する
- ケーキにチョコペンで書く
ゲストと楽しむ
- 寄せ書きしてもらう
- 全員のフィンガープリント付き
アイデア次第で可能性は広がり、ふたりであれこれ考えながら、結婚式準備が盛り上がります。一生の記念品として残る結婚証明書に力を入れる新郎新婦の気持ちが、証明書を見たゲストにも伝わるでしょう。
また、最近ではオリジナルの婚姻届を作成するカップルも増えてきました。カラフルなデザインで二人らしい婚姻届を役所に提出することができます。活用してみるのもよいかもしれませんね。
12. ゲストと楽しむ人気イベント
人前式では、形式にとらわれずにゲストと楽しむ雰囲気が許されています。そのため、ゲストが楽しんで挙式に関われるイベントが人気です。
リングリレー:ロープに結婚指輪を通し、ゲストが協力して新郎新婦それぞれに渡す
バブルシャワー:承認の合図をゲストが一斉にシャボン玉を吹き表す
キャンドルリレー:ゲスト間でろうそくの灯を移し、全て揃ったら承認の合図とする
キリスト教や神前式ではゲストは見守るだけの結婚宣言も、人前式ではゲストに一緒に参加してもらえる演出がとれるのもいいところ。ゲスト参加型の演出は、準備はしっかりしておく必要があります。とくに、司会者がゲスト参加型演出の段取りをゲストに向けてわかりやすく説明できることが重要です。司会者としっかりと打ち合わせをしておきましょう。
13. 人前式のスケジュール
人前式でやってみたいことやアイテムのアイデアは、当日進行に関わるプランナーや会場の担当者に必ず相談しておきましょう。演出や持ち込むものの内容によっては別途料金がかかる場合もあります。会場スタッフのサポートをうまく引き出すためにも細かく具体的に相談しておくのがよいでしょう。
当日は基本的にプランナーや会場スタッフが進行してくれますが、ゲストの中から立会人代表をお願いする時は、当日のリハーサル時間を早めに案内しておきましょう。実際にどう動くか、会場内で練習できると本番慌てずに済むでしょう。
手作りのアイテムを多用する場合は、当日までのスケジュールをおさらいして、遅れないように準備しておく必要があります。オリジナリティが高い人前式ほど、事前準備のスケジュール管理が重要です。作業は分担して行いますが、そうした全体のコントロールは、二人のうちのどちらかが、率先して行うようにしましょう。
最後に. 人前式は準備段階から二人を強く結びつける
可能性が広く、二人で決めることが多い人前式では、準備の段階が重要になります。とくに肝心なのは結婚宣言。集まってくれたゲストたちを前に、堂々と胸をはって誓えるように準備しましょう。
人前式の準備を二人が協力して行うことで、絆をより強くするきっかけになるのもこの挙式スタイルの魅力です。立会人として、ゲストの思い出にも残る人前式を考えてみてはいかがでしょう。