1. LGBT婚は特別ではない時代に
LGBTとは
LGBTは、性自認や性的指向を示す言葉で、レズビアン(同性愛者の女性)、ゲイ(同性愛者の男性)、バイセクシュアル(両性愛者)、トランスジェンダー(自らの性別に違和感を持つ人)の頭文字をとったもの。
性自認に関して、男性か女性かを決めるのが難しい「クエスチョニング」も含めて「LGBTQ」という言葉もあります。また、恋愛感情を持たない「アセクシュアル(無性愛)」といった考え方などにも広がり、性指向に対するとらえ方はさらに多様化しています。
同性愛については、長年差別的な扱いを受け、いまだに一部に偏見があります。また、性同一性障害は外見からだけではすぐにはわからないものでもあり、難しいものです。近年は、LGBTを取り巻く社会の目は少しずつ変わってきてはいますが、いまだに自分の性について周囲にカミングアウトできずに悩んでいる人も少なくありません。
社会の中で、そうした悩みを持つ人への理解を広げていくことが、まずは大切といわれます。
日本ではまだまだ難しいLGBTの結婚
日本の憲法でも結婚は「両性の合意」のみに基づくとあります。両性という言葉について、一般的な解釈として、戸籍上の男女間に限定されてきました。 ※1
婚姻届には夫、妻という記載になり、戸籍上の男女しか記入できないという決まりがあります。同性で籍を入れるために、一方の養子になるカップルもいます。しかし、社会保障などで、夫、妻という記載に当てはまらず、十分な立場を得ることはできません。
また、トランスジェンダーの場合、結婚するために戸籍の性別を変えようとすると、性別適合手術などが必要になります。手術のために体への負担が大きく、一度手術を受けると元には戻せないこともあり、大きなハードルとなっています ※2。このことは、トランスジェンダーの人が自認する性別として籍を入れる際に、大きな障壁となるようです。
このように、現状では、性的マイノリティのカップルが、一般的に結婚した夫婦に与えられる権利や立場を得るのはむずかしい状態になっています。一方、LGBTといった性の在り方に関する言葉が広まり、認知されることで、社会的にも変化が生まれ始めています。
ダイバーシティの1つとして、変わる意識
女性の働き方が変わる中、男性女性の役割分担を強く意識した日本古来の家庭の在り方は著しく変化しつつあります。その中で、主夫、別居婚や事実婚など、より多様な夫婦の在り方も広がってきました。LGBTカップルへの対応は、そうした動きも含めたダイバーシティの1つとしてとらえ、さらに一人一人の多様な在り方を認める社会として変化する潮流が生まれています。
ダイバーシティの中で、性的マイノリティであっても特別視せず、それぞれが自分らしく生きられるようにという意識も深まっています。その流れでLGBTを取り巻く結婚観も少しずつ変わってきているといえるでしょう。
法律上の結婚に関する男女の在り方を変えるのは長い道のりですが、自治体レベルで実態に合わせた対応が行われるようにもなってきています。2章で紹介します。
2. LGBT婚の選択肢
世界の中の同性婚 ※3
海外の状況に目を転じれば、性的マイノリティであっても法的に結婚が認められる事例は多くなっています。LGBTの中で、同性婚も異性婚と同等の保証を受けられるように変わった国も少なくありません。
2001年オランダを皮切りに、ベルギー、スペインとヨーロッパ諸国が続き、さらにカナダ、南アフリカと広がっていきました。今は、EU加盟国の多くで同性婚は合法となっており、2015年にはアメリカ、2017年にはオーストラリアでも同性婚が認められ、2019年には台湾でも認められる予定です。
カトリックで、同性愛が禁じられていたヨーロッパの多くの国でも、現在は同性での結婚や同棲が保護の対象になっています。世界の人口の16.9%が、同性婚を認めている国に住んでいるというデータもあります。同性での結婚を認める流れは世界的な流れといえますね。
日本の同性婚―渋谷区から始まった同性パートナーシップ制度
同性婚の他にも、同等の権利をもちながらも婚姻とは違う、パートナーシップ制度を取り入れている国はイギリス、フランスなどがあります。フランスの場合は、2013年から婚姻も可能になりましたが、1999年から同性であっても可能なパートナー契約を行ってきました。さらにパートナーシップは異性間でも取れると、結婚に対して柔軟な制度設計になっています。※4
日本でも、パートナーシップ制度を導入して、同性婚を後押しする動きが様々な自治体で広がっています。2015年東京都渋谷区で同性のパートナーが認められた条例が生まれました。「ちがいを力に変える街」というスローガンのもとに、渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例の一環で行われた施策になります。渋谷区の同性パートナーシップとは「男女の婚姻関係と 異ならない程度の実質を備える戸籍上の性別が同一である二者間の社会 生活関係」と定義されるそうです。申請すると「パートナーシップ証明書」が発行されます。
- 事前相談、法的相談
- 公正証書の作成
- 渋谷区役所住民戸籍課に申請(1週間ほど)
- 交付
この証明書の存在が広まることで、保険金の受取人や、住宅ローンの共同名義人になるなどの権利をお互いに有することができるようになりました。
渋谷区に続いて、東京都世田谷区、三重県伊賀市、兵庫県宝塚市、大阪市でも、彼らの結婚後の夫婦の権利を守る条例や要綱が生まれています。法律としてはまだまだ整っていませんが、LGBTであることで結婚を諦めずに済むように、日本の社会も変わりつつありますね。
3. LGBTの結婚式は?
セクシャルマイノリティの場合、結婚式をするのにも苦労する場面が多くなります。
まず、親への挨拶の前に自分の性自認や性的指向をカミングアウトするハードルをクリアしていなければなりませんが、親からの理解が得られた後も、披露宴が親戚や関係者一同へのカミングアウトの場になるケースもあります。結婚式を請け負う側も、プランナーを含めて配慮ができる体制が必要です。
しかし、性的マイノリティという理由で、結婚式を諦めてしまうのはもったいないですね。法的には婚姻届を出すことが難しくても、だからこそ結婚式の場で祝われることは、二人の絆をより深めるでしょう。結婚式で祝福されることが、二人の関係をより強く、責任感のあるものにしてくれるというのは、どんなカップルにもいえること。結婚式を挙げないカップルもいますが、その理由が性的マイノリティだから対応できる式場がなかった、という残念な理由であってはけしてなりません。
最近は、LGBT婚に経験のあるプランナーも増えていますし、結婚式場の中には、特別プランを作っている場所もあります。また、大手口コミサイト「みんなのウェディング」でも、LGBTフレンドリーな結婚式場探しを応援するページを作っています。
参考:みんなのウェディング https://www.mwed.jp/lgbt/ (外部リンク)
挙式や披露宴を行う場合だけでなく、フォトウェディングという選択肢もあります。 結婚式市場全体においてスタイルの多様性が拡大し、選択肢が増える中、LGBTカップルにとっても幸せな結婚式を行う可能性は今後も広がっていくと考えられます。
とはいえ、先進国の中でも、同性婚への対応は遅れていると言える日本。法的にもそうですが、結婚式場などの受け皿もまだまだサービスが熟成しているとはいえません。 今後の業界の意識改革には大きく期待したいところです。 幸せを結婚式で確認したい、親に晴れ姿を見せたい、けじめをつけたい、などそれぞれ様々な思いをもって挙げる結婚式ですが、マイノリティという理由で対応しくれない事業者がもしあったとしたら、それは差別といえるでしょう。 どんなカップルでも、人生の記念日として結婚式を行う権利はあるでしょう。
まとめ
LGBTの結婚というと、特別に感じてしまう人も少なくない、今の日本の現状。それでも結婚式をあげる幸せなカップルの姿が増えていくことで、セクシャルマイノリティの結婚はより当たり前のこととなっていくでしょう。今後は、日本でも結婚後の社会保障など、自治体レベルから国レベルへと法律の整備が整っていき、EUやほかのアジアの国と同様に権利が守られるようになっていくと考えられます。
同性であっても二人が望めば、結婚によって得られる社会的、精神的安定をあたりまえに得られる社会に変わっていくためには、カミングアウトを受け入れる知識を幅広く身に着ける教育も必要になるでしょう。セクシャルマイノリティの人が困っていることなどを理解し、どの立場の人も、結婚したいと思ったときにできる権利が拡大するように、応援していけるとよいですね。
https://www.huffingtonpost.jp/2017/05/14/france-same-sex-marriage_n_16614422.html (外部リンク)