外国で「日本は仏教の国なのに、日本人はなぜ教会で結婚式をするのか?」と聞かれたことがあります。すぐに答えが返せなかっただけでなく、正直にいうと「仏教の国」かどうかもはっきりと答えられなかったのですが…。赤ちゃんが生まれたら神社にお参りし、結婚式は教会式で行い、亡くなったら僧侶を呼んでお葬式・・・考えてみたら不思議ですね。

結婚式は、やはり白いウェディングドレスを着て挙げる「キリスト教式」が一番人気のようですが、私は一度、「仏前結婚式」に出席したことがあります。

「仏前結婚式」とは、多くの人の中から二人が出会って夫婦になることは、深い因縁によるものであるという仏教の教えに基づき、新郎新婦が仏や先祖に感謝する儀式です。何年か前になりますが、歌舞伎俳優・市川海老蔵と小林麻央夫妻が、ザ・プリンスパークタワー東京で御宝前結婚式(成田山新勝寺では「ご仏前」ではなく「御宝前(ごほうぜん)結婚式」というそうです)を挙げて話題になりましたね。「仏前結婚式」を選ぶ方はやはり寺院関係者が多く、宗派により挙式ができるところが限られています。しかし一般の人でも菩提寺や、築地本願寺や明王院(鎌倉)、比叡山延暦寺や京都の清水寺など有名なお寺でも結婚式を挙げることができます。

私が出席した結婚式は新郎の友人のご実家のお寺で行われ、その後ホテルで披露宴が開かれました。宗派にもよるそうですが、「仏前結婚式」は下記のように進められます。

入堂

両親、親族が着席後、新郎新婦、媒酌人、僧侶がお堂に入る。

啓百文(けいびゃくもん)朗読

僧侶が焼香、啓百文(本尊に申し上げる言葉)を読み上げ、結婚報告と加護を祈願。

念珠(数珠)授与

仏前の数珠を、僧侶が新郎新婦に与える。

司婚の辞

僧侶の問いかけに答えるかたちで結婚を誓う。

新郎新婦の誓詞朗読と焼香

誓いの言葉を新郎が朗読、新郎の氏名の後新婦も氏名を言う。新郎新婦が焼香する。

誓杯(せいはい)

新婦→新郎→新婦の順に三口で飲みほす。

親族固めの杯

親族も同様に誓杯をする。

法話

僧侶からお祝いの説話。全員立ち上がり、合掌。

退堂

僧侶に続いて、新郎新婦、媒酌人、両親、親族の順にお堂を出る。

他の挙式スタイルと大きく異なる趣を見せるのは、新郎新婦が数珠交換をすること(数珠授与)と、焼香を行うところです。

新郎新婦の衣装は紋付き袴&白無垢が一般的です。ウェディングドレスを着ることもできますが、お寺に似合わないという理由から披露宴で着るか、写真だけ別撮りする人が多いようです。
また、式に参列できるのは基本的に親族のみで、参列者はあれば数珠を持参します。参列者の服装については、特別な決まりはなく、他のスタイルの挙式と同様でかまいません。ただし、座布団に座る可能性が高いので、スカートの丈には注意した方がいいかもしれません。
司婚者(僧侶)の進行は、キリスト教式のアルバイト(?)司祭のワザとなのではないかと疑いたくなるような、たどたどしい日本語を聞いているそわそわした気持ちはなく、落ち着いて聞くことができました。法要などで慣れているせいでしょうか。

教会式や神前式に比べてなじみの薄い「仏前結婚式」。しかしお寺自体も、数珠やお焼香も実はどれもなじみのあるものばかり。初めてでも案外、違和感も戸惑いもなく参列することができたのでした。

参考文献 岩下宣子監修『結納・結婚しきたり事典』日本文芸社