最初から最後まで緊張が続いていると、せっかくの記念写真も、表情が硬くなりすぎてしまいます。終わってから後悔のない写真を撮ってもらうには、事前の準備が必要。特に和装の場合、準備を怠らないことが撮影の決め手です。
「ポーズそのものに決まりがあるわけではありませんが、動き方、所作、仕草、姿勢などで、素敵さを演出していくのが、カメラマンの重要な役目です」
と語るのは、ホテル椿山荘写真室(株式会社ビジュアライフ)のカメラマン・小倉秀樹さん。動き方、所作、仕草、姿勢など、今まで和装にあまり縁のない花嫁にとってみると、いきなり和装して写真撮影というのは、本番前に台本を渡され、その場で芝居をしてくださいという無理な注文に近い感覚。
そのためリハーサルを行うことも、撮影前に大切だと小倉さん。少なくても、着物の試着の時に、和装のプロに聞いて、研究してみることをお勧めします。
「和装着付けでは、体そのものを布生地で巻き付けた円筒形の筒と捉えているような気がします。つまり、フォルムそのものに変化があまりありませんので、小さな変化があれば、そこは、目を惹くポイントになります」(小倉さん)。
和装は、ウェディングドレスの洋装に比べて、動きの一つ一つが目立つもの。手の動き、首の回し方、歩き方のどれをとっても、目を惹くことになります。そこで具体的に、アドバイスをしてもらいましょう。
「まず足元ですが、つま先が内側にくっ付くことを意識していただきたいですね。カメラに向かって、両の足が見えるようにずらしていただけるとよろしいかと思います。また、後ろに下がっている側の足膝を少しだけ、内側に曲げてみて下さい。これだけでも、和装で綺麗に写るプロフェッショナルなテクニックですから」(小倉さん)。
「背中に帯結びがあるため、普通の姿勢では後ろに反って見えますから、できるだけ両肩を後ろに引くことを、意識しましょう。肩甲骨がほんの少し寄るだけで、肩幅そのものがスリムに見えます」(小倉さん)。
和装はウェディングドレスに比べて、着物など重量がかかるので、一層緊張が高まります。できるだけリラックスを心がけることも大事ですね。
「頭部は、首を伸ばす、顎を引くというこの2つの点を意識してください。首伸ばし顎引きを同時に行うことで、品の良さが強調されますから」(小倉さん)。
最後に、手元の動かし方のコツも綺麗に撮影するのに、不可欠なこと。
「親指を内側に折り曲げるだけでも、手元そのものが小さく見えます。ちょっとした気遣いで、慎ましく見えますよ」(小倉さん)。
和装の撮影は、小さな動きも映ってしまうので、所作や動き、姿勢などの心構えが大事。不安にならないように、プロや先輩に聞いたり、アドバイスをもらったりすることも、リラックスの撮影に繋がりますね。
(写真提供:ホテル椿山荘東京)