結婚式は国や地域によってさまざまな習慣があり、衣装や食事にもその場所の特色がよくあらわれています。今回はフランスの結婚式について、結婚制度とともにご紹介します。
「パックスする?」進歩的で柔軟な結婚制度で世界をリードするフランス-世界各国の結婚式~フランス編~
「結婚」…3つの選択肢
フランスではパートナーを見つけ、一緒に人生を歩んでいこうと決めたら次の3つの選択肢があります。
1. 法的な結婚
「法的結婚」をしたカップルは2013年には23万1225件で、戦後最低の婚姻件数となりました。フランスでは婚姻や離婚に関する法律的な条件が厳しく、市役所での婚姻手続きでは、財産についての約束事を決める結婚契約や面接、結婚に対する異議を問う「婚姻公示」というものがあります。準備する書類の量も膨大です。そのため「法的な結婚」は相当の覚悟をもった上で、非常に厳しい個人と個人の契約のもとに成り立つものという認識です。
2. PACS(パートナー契約)
1.と後述の3.の中間の関係で、この契約を結ぶことを俗に「パックスする(pacser)」といいます。性別、国籍に関係なく契約を結ぶことができ、しかも1.の「法的結婚」と比較すると手続きが簡単であり、時間もかからないため浸透しました。
3. ユニオン・リーブル(union libre、口約束のみの関係)
若者がとりあえず同棲するといった一時的な状況も、ユニオン・リーブルで生涯を過ごすカップルも含みます。法的契約のまったくない、ゆるいカップルのつながりも一つの形態として確立しています。
フランスのカップルはこの3つの選択肢の中で、例えば最初の数年間は「ユニオン・リーブル」を選んで見極めてから法的に結婚したり、共同申告による税金の優遇など制度面でのメリットを生かすためにパックスを選択したりします。またフランス国内で生まれた子どもは、2009年の統計では53%が婚外子ですが、子どもは親が1~3のどのようなかたちの「結婚」を選んでも、シングルでも、みな等しく扱われることが法的に保障されています。
結婚式
結婚式は1.民法上の結婚式(mariage civil)、2.宗教上の結婚式(mariage religieux)、3.披露パーティーの3種類あります。1~3を一日通して行ったり、1と3のみを行ったり、カップルによってそれぞれですが、日本のように衣装や贈り物にお金をかけることはあまりなくシンプルなスタイルです。
1. 民法上の結婚式(mariage civil)
市役所にはSalle des mariagesという婚姻用のサロンがあり、家族や友人が証人として新郎新婦の両サイドに座ります。市長がフランス憲法の条項などを読み上げ、誓いの言葉、誓いのキス、指輪の交換、婚姻届にサインをします。新郎新婦に続いて証人(Témoinテモワン)1~2名がサインをし、各書類、花束を市長から新郎新婦に手渡されます。役所での結婚式は事務的なものなので、所要時間は15分ほどで簡素に行われます。
2. 宗教上の結婚式(mariage religieux)
役所での式が終わったら、教会で結婚式をおこないます。家族、友人、遠い親戚や同僚などたくさんの招待客の前で宣誓や署名、賛美歌を歌ったりします。式の後は教会の前でフラワーシャワーをするのが定番で、バラや季節の花びらを新郎新婦に向かってまきます。教会で結婚式を挙げるには、信者であることや一定の期間教会へ通い神父の説教を聞くこと、初婚であることなどの条件がありハードルが高いため、教会での挙式を選ぶカップルは意外と少ないそうです。
3. 披露パーティー
レストランを貸し切っての食事会や、屋外でのガーデンパーティー、田舎の一軒家で…などさまざまな形式がありますが、日本の披露宴のように司会が進行するわけではなく、好きなように食べたり、飲んだり、ダンスをしたり、歌ったり…3~4時間かけて自由に楽しむスタイルです。
フランスでは結婚の制度もお祝いのしかたも、慣習や「こうあるべきだ」という考えよりも、自分の考えやフィーリングに合った選択をしているんですね。