結婚式は国や地域によってさまざまな習慣があり、衣装や食事にもその場所の特色がよくあらわれています。今回は、私も何度か出席したことのある韓国の結婚式についてご紹介します。
世界各国の結婚式~韓国編~:カジュアルに、にぎやかに、そしてドラマチックに
挙式スタイル
韓国の結婚式は、一般的に、(1) 挙式、(2) ぺぺク、(3) 披露宴という流れで進みます。
(1) 挙式
これは宗教儀礼ではなく、ちょうど日本でいう「人前式」のようなスタイルの挙式です。キリスト教徒の多い韓国ですが、結婚式は無宗教の式を挙げるのですね。挙式は8割以上が専用の式場(ウェディングホール)で行われ、その他はホテルや教会(大聖堂)等で行われます。
最初に、会場に到着した招待客は受付で平均5~6万ウォン(5,400~6,500円程度)ほどのご祝儀を払い、「食事券」を受け取った後に式場に入ります。
大まかな挙式の流れは、新郎新婦が入場したあとに、主礼(日本でいう媒酌人、恩師に頼むケースが多い)が結婚成立を宣言し、お祝いのあいさつをします。そして指輪交換の後、新郎新婦がそれぞれの両親にあいさつし、親族や友人たちと写真撮影をします。
招待客は日本ほどドレスアップをせず、ワンピースやジャケットなど少しきれい目の服装で参列します。朝鮮の民族衣装である韓服で参列するのは親族だけで、日本のように新婦の友人が振袖で出席、というようなことはありません。
宗教儀礼ではないので日本のように静かで厳かな雰囲気の式ではなく、ゲストも、親族友人のみならず、近所の人や顔見知り程度の人も来ることがあるので、あれこれ感想を話し合ったり、途中で入退場したり、とてもにぎやかな雰囲気で進みます。所要時間も20分ほどと、とてもスピーディーです。私が出席したある結婚式では、たまたま式場の前を通りがかった女性たちが入ってきて、「新婦はどこ?」と聞きながらしっかり式に参加していました。
(2) 「ペベク」
「ペベク(幣帛、폐백)」とは、 親族のみが集まり、新しく家族になる新郎新婦の二人が親族に挨拶をするという韓国ならではの婚礼儀式です。ペベクは式場とは別の個室で行われます。乾物やなつめ、栗などの食べものが並べられた机を前に、新郎の両親や親族へのあいさつや二人のための儀式を行います。
見ていて面白かったのは子宝祈願の儀礼です。(本来は親族のみの儀礼ですが、日本からの友人ということで見せていただきました。)新郎の両親が栗とナツメを投げ、新郎新婦が広げて持った白い大きな布でキャッチします。栗が女の子、ナツメが男の子をあらわしていて、布に入った数だけ子宝に恵まれると言われているそうです。また、最後には「一生面倒を見ます」という意味で、新郎が新婦を背負って部屋を一周するという儀礼もあります。
(3) 「披露宴」
この「ペベク」の間、招待客は受付で受け取った「食券」を持って披露宴の会場に行きます。プルゴギ(甘いたれをつけて焼いた肉)やカルビ、キムチ類、マンドゥ(餃子のようなもの)、キンパプ(韓国風のり巻き)、麺類、スープ類などを食べます。
「ペベク」が終わった新郎新婦は、披露宴会場に行き招待客に挨拶をして回ります。多くはビュッフェスタイルですが、円卓に座って個々のテーブルで乾杯をしてにぎやかに食事をする方式もあります。
フォトウェディング
韓国では結婚式より前にウェディング写真を一日かけてスタジオや屋外で撮影し、結婚式当日に会場に飾ります。衣装やセットにこだわり、映画やドラマのようなシチュエーションで写真を撮るのが韓国流です。費用も10万円~20万円と比較的安くアルバムやパネルにできるので、日本からもウェディング写真を撮るために2泊3日でソウルに行くカップルもいます。
参考
韓国ではほとんどの人が、式でウェディングドレス、披露宴で韓服と、お色直しをします。
韓服
費用はコンパクト、スタイルは多様化
新郎新婦側は、引き出物なし、プログラムに悩むこともなく、ビュッフェスタイルで大人数呼べるので招待客リストをつくるのもそれほど大変そうではありません。結婚式自体の費用の負担も大きくなさそうです。(ただし新居や家電の費用負担が大きい。)
司会がいて、プログラムに沿ってスピーチや歌などの演出をし、コース料理を食べる日本の披露宴に慣れていると、韓国の披露宴は、いつ始まっていつ終ったのかよく分からずに戸惑います。ただ所要時間も短く、服装にもあまり悩まず、ご祝儀も日本ほど高くないので、招待客の側の負担は少なく、気軽に参列できますね。
最近はこうした結婚式以外に、顔見知り程度の人は呼ばないで限られた人数でレストランウェディングやミュージカル型ウェディングをするなど、自分たちらしく個性的に結婚式を行いたいというカップルもいます。日本以上に晩婚化、未婚化がすすむ韓国では、ウェディング市場が縮小する一方なので、こうした個々のニーズに対応する結婚式をプロデュースする会社も増えて、結婚式は多様化しています。