1. 親への挨拶 全体の流れ

1-1. 意義と心がまえ

二人で結婚の意志を確かめあったら、なるべく早く親に結婚の挨拶をしましょう。相手の親に挨拶に行くのは、結婚を認めてもらうためなので、「結婚することになりました」と報告するのではなく、「結婚させてください」と了承を得る言い方をするべきというのがまずは重要な点です。ふたりでしっかり準備をしてでかけましょう。すでに相手の親と面識がある場合や、ふだんから親しく付き合っていても、これからは家族になり長く付き合っていくことになるので、あらためて挨拶の場を設けて、きちんとした服装と正しい言葉遣いでけじめをつけ誠意を示しましょう。

1-2. 全体の流れ

1. 自分の両親に報告
2. 挨拶の日程を調整
3. 結婚と将来設計について二人で話し合っておく
4. 手みやげ、服装の準備
5. 女性宅へ挨拶
6. 男性宅へ挨拶
7. お礼状を出す

CHECKポイント!
  • まずは自分の親に、自分で話しておく。
  • あくまで「結婚の承諾を得る」というスタンスで。事後報告の印象にならないようにする。

1-3. 妊娠している場合

おめでた婚(できちゃった婚という言い方は避けて、授かり婚やマタニティ婚などともいうようです)が増えているとはいえ、保守的な考えをもつ親もまだ多くいます。結婚の挨拶と妊娠の報告はなるべく同じタイミングで行うようにしましょう。「妊娠したからやむなく結婚する」という印象にならないように気をつけましょう。「もともと結婚するつもりで付き合っていて、そこへ幸いに赤ちゃんを授かった」という話し方がよいでしょう。

妊娠している場合の挨拶の流れ

なるべく早めにそれぞれが自分の親に結婚の意思を伝え妊娠の報告をします。次に男性が「女性の親」を訪ねて、改めて挨拶をして結婚の了承を得ます。
「もともと結婚しようと思っていたこと」
「妊娠していること」
「新しい後を授かってとてもうれしい」
「驚かせてしまって申し訳ない」
「二人で力を合わせて子どもを育てていく」
というようなポイントをおさえ、自分の考えと気持ちをしっかりと「女性の親」に伝えます。

「女性の親」の了承を得た後に「男性の親」に二人で結婚と妊娠の報告をします。おめでた婚は増えているものの、自分の娘が結婚より前に妊娠したと聞けばやはり驚いてしまう親が多いので、「女性の親」に了承をもらった後に「男性の親」に報告をするという順番が重要です。もし挨拶の場で反対されたり、怒らせてしまった場合は、「今日は帰らせていただきますが、またお時間をいただきたい」ということ伝えてその日はひとまず帰り、時間をかけて二人で理解を求めていくようにしましょう。

またおめでた婚の場合、若い世代での結婚が多いこともあり、結婚費用が準備できていないのではないか、など経済的な面に不安を抱く親が多いようです。安心してもらうために仕事のことや収入など経済的な面で心配は要らないこと、将来のビジョンなどについてより強調して誠実な態度を心がけるといいでしょう。

1-4. 再婚の場合

再婚の場合も、初婚と基本マナーは変わりませんが、特に気をつけておくべきポイントをこちらにまとめました。

2. 事前の準備

2-1. 前もって親に伝えておくこと

それぞれが自分の親に結婚したいという意思とともに、相手についてのプロフィールや情報を伝えておきます。親は自分の子どもの結婚相手については詳しく知りたいものです。この事前に伝えておく情報が、挨拶の当日の話題のきっかけや、親が安心する材料になります。また、予想外の質問をされて焦ってしまわないようにしたり、話しにくいことをスムーズに切り出しやすくもなります。自分や相手の緊張を和らげて落ち着いてふるまうことができ、結婚の挨拶を成功させるカギになります。

  • 相手の基本情報(名前、年齢、職業、出身地、趣味や人柄)
  • 家族構成
  • 相手の親について(年齢、職業、居住地)
  • 二人の交際(出会ったきっかけ、交際期間)
  • 挨拶当日には避けておいたほうがいい話題 
  • 話しにくいこともなるべく伝えておく(離婚歴、子どもがいるかどうか、借金と返済計画、持病の有無、宗教など)

2-2. 前もって相手(彼氏・彼女)に伝えておくこと

  • 親の基本情報(名前、年齢、職業、趣味、性格など)
  • 家族の基本情報(兄弟姉妹やその家族について) 手土産の準備にも役立ちます。
  • 親の食べ物の好み(手みやげ準備のためにも)
  • 避けておいた方がいい話題
CHECKポイント!
  • なるべく多くの事前情報があると、当日にむけて親も相手(彼氏・彼女)もお互いに心の準備ができます。
  • 話しにくいことほど、できるだけ事前に伝えておくとよいでしょう。

2-3. 前もって二人が考えておくべきこと

挨拶当日に、どんなことでも「二人の考え」として話せるようにしておきましょう。まだ、はっきりと決まっていないことも少なくないでしょうが、大まかな方向性やイメージだけでも話せるようにしておくと、相手の親も安心します。二人で勝手に決めたと思われないよう、住居や結婚式については「相談させてください」というスタンスで臨むといいでしょう。

  • 二人の将来設計 (どこにどう住むのか、これからの仕事転勤の有無など)
  • 住居をどうするか (家庭や地域によっては親と同居が当たり前のところも)
  • 結婚式について、時期やイメージ (ただし、まだ親の希望や意向を聞いていないこの時点では具体的には決めておかない)
    また訪問当日はどのような流れで、何時ごろ切り上げるのかを打ち合わせておくと、お互いに「じゃあそろそろ・・・」と切り出しやすくなります。

2-4. 訪問日の決め方とおすすめの時

あくまで相手の親の希望・都合にあわせ、日程を調整しましょう。2週間程度前には日程を決めておくといいでしょう。
女性の側、男性の側、どの順番で挨拶に行くかは、男女平等の現代社会においてはどちらでもかまわないことです。ただしどちらかの親が古風な考えの持ち主でありそうな場合は、女性の実家を先に訪問するようにしたほうがひょっとすると無難かもしれません。

  • おすすめ日時は親の休日の14~15時 (食事の時間にかぶらないようにする)。
  • 長居はNG。2時間ほどでおいとまを。

3. 好印象を与える服装・身だしなみ

3-1. 親は何を見ているか

それまで頻繁に家に遊びに行ったりしている関係でも、相手の親の立場ではやはり、「○○さんと結婚させていただきたい」と改めて足を運んで顔を見て言ってほしいもの。結婚の挨拶はけじめとしてきちんとしたいですが、その時どのような服装で行くか悩みますね。

結婚の挨拶に行くときの服装は単なる洋服のコーディネートではありません、相手の親がとくに見ているのは、「娘(息子)の相手はTPOに合った服装ができる人なのか」というところ。結婚の挨拶にくるというこの節目の機会を大切な場としてとらえているか、相手に対する礼節を考えられる人なのか、意外なほどに厳しく見ているモノです。

また、人は見た目の印象で多くの情報を読み取ります。季節に合っているか、身の丈に合わない高価すぎる服や持ち物を身に着けてないか、清潔できちんとした生活をしているかどうか・・・見た目から、多くのことが推察できます。相手の親はたとえ細かくチェックするつもりがなくても、長年育ててきた子どもが結婚したいという相手がどんな人なのか気になってしまいます。

今回は結婚の挨拶に行く際に相手の親が「この人なら安心」と結婚を快諾してくれるような、好感を持ってもらえるファッションや身だしなみについてご紹介しましょう。

家を訪問する場合は家庭の雰囲気を事前によくリサーチしておきます。たとえ「気軽に来て」「堅苦しくない服装で大丈夫」と相手の両親や相手に言われても、普段着やカジュアルな服装は避け、きちんとした上品で清潔感のある雰囲気を心がけましょう。サイズが合っているか、シワになっていないかにも気をつけて、だらしなくならないように気を付けます。

CHECKポイント!
  • 親がみているのは、「TPO」にあった服装ができる人か、という点である。
  • むやみに高価なモノは身につけず分相応かどうかを考慮する。
  • 事前に相手の家庭の雰囲気をリサーチする。

3-2. 女性の服装

女性のコーディネイト例

上品清楚な服装になるよう心がけましょう。色は派手すぎない色ならOK。白やベージュ、グレー、ネイビー、青を中心としたコーディネートにするとさわやかで上品な雰囲気にまとめやすいです。パステルカラーで明るい雰囲気にしても○。全身黒だと暗い印象になってしまうのでバランスに気を付けて。タイトなシルエットやロングのスカートは和室で正座をしたり、立ち上がったりするときに不便なので、スムーズに動けるラインのひざ丈のスカートかワンピースがおすすめです。スーツでなければカーディガンよりはできるだけジャケットを着た方がいいでしょう。グレーやネイビーのパンツスーツは仕事用の堅い印象になりがちなので、インナーやアクセサリーでやわらかく明るい雰囲気になるようにするといいですね。

【夏】 露出は控えめにしましょう。中がノースリーブの場合はジャケットを羽織ります。暑くても素足は厳禁、ストッキングや靴下をはきます。靴はかかとやつま先が出ないモノが基本。ミュール、サンダルは避けましょう。

【冬】 脱いだり履いたりしにくいのでロングブーツはNG。コーディネートによっては黒のタイツでもいいですが、できればストッキングをはきパンプスを合わせます。コートは玄関の外であらかじめ脱ぎ、コートの裏地を表にしてたたんで持っておくのがマナーです。マフラーや手袋などの小物も外しておきます。

CHECKポイント!
  • キーワードは、「上品」、「清楚」、「さわやか」。
  • 色は派手すぎない色ならOK、ただし、全身黒は避ける。
  • 和室で正座があることを想定して、タイトなシルエットのものは避ける。
  • 夏は露出に注意。

基本的には靴はストッキングにパンプス。ヒールは3~5cmくらいがベストです。バレエシューズなどフラットな靴はカジュアルすぎるので避けて。スニーカー、サンダルはご法度です。玄関で時間がかかりすぎないよう、スムーズに脱ぎ履きできる靴がいいですね。ロングブーツはやめておきましょう。

ストッキング

素足は絶対に避けストッキングをはきましょう。柄やラメの入っていないナチュラルなカラーのものを選びます。レギンスや派手な色のタイツ、網タイツはNG。伝線していないかどうかにも気をつけて。

バッグ

ロゴやハイブランドだといかにもわかるようなバッグは経済観念がないのではないか、不相応なものを欲しがるのではないかと誤解される場合があるので、シンプルなカラーと形のバッグを選びましょう。トートバッグや布バッグ、かごバックはカジュアルすぎるのでNG。

ヘア

髪は清潔感があるかどうかを第一に考えます。カラーリングは控えめの色にし、長い髪の場合はまとめたり、とめたりしてすっきりとした印象に。

メイク・香水

上品でさわやかなメイクを心がけましょう。つけまつげやマスカラなどでアイメイクを濃くしすぎないように気をつけます。きつい香水はいい印象を持たれませんので、香水をつける場合はほのかに香る程度に。

長い爪や凝ったネイルはNG。ネイルをする場合には、薄いピンクやベージュなど派手な色ではないカラーでシンプルにし、指先があまり目立ちすぎないようにします。きちんと切りそろえた爪ならもちろんなにもつけなくてもOK。

アクセサリー

華美なものは避け、小さめのパールなどシンプルなモノを選びます。婚約指輪は、本来は両家の親に挨拶した後に結納で贈るものですが、挨拶に行く前にすでに婚約指輪をもらっているという人もいるかもしれません。しかし、どちらの家にも結婚の承諾をもらうために挨拶に行くのですから、その時にすでに婚約指輪をしていると、「もう結婚は決まったもの=事後報告」と思われ、反感を買う可能性があるので、婚約指輪はしていかない方がよいでしょう。

すでに結婚について相手の親が了承していて、改めてご挨拶に伺うという場合には、「自分の息子が贈った指輪を是非見たい」という親の要望も多いので、「こちらの指輪をいただきました」というお披露目のためにつけていくといいでしょう。

ハンカチ

柄や色はそれほど気にしなくていいですが、きちんとアイロンをかけた清潔なハンカチをバッグに入れておきましょう。

これはOK?NG?

迷ったら、なるべくコンサバティブなほうを選ぶとよいでしょう。

  • 青い服
  • パステルカラーの服
  • 全身黒
  • ノースリーブ
  • ニット・セーター(カジュアルすぎる)
  • タイトスカート(正座するとずり上がるので注意)
  • バレエシューズ(カジュアルすぎる)
  • サンダル
  • ミュール
  • ロングブーツ
  • 網タイツ
  • 黒いタイツ
  • 靴下
  • ネイル・マニキュアをしない爪
  • 地味色のネイル
  • 派手なネイル
  • 長い爪
  • 布バッグ

3-3. 男性の服装

男性のコーディネイト例

男性の場合はスーツが基本です。スーツであれば「今日は挨拶をして結婚を認めてもらう大切な場である」と自分が思っていることを相手の親にわかってもらえるからです。反対にカジュアルな服装だと結婚や娘を軽く見ていると誤解されかねません。清潔感がありきちんとしているかどうかが最も重要です。だらしない印象にならないようにシミやシワのない、グレーかネイビーなどダーク系のスーツを用意しましょう。自分がタバコを吸わなくても、飲み会などでスーツにたばこのにおいがついてしまう場合があります。たばこのにおいは、とくにたばこを吸わない人にとっては非常に気になるものですので絶対にNGです。

【夏】 クールビズは×。暑くてもスーツが基本、ネクタイもするのが礼儀です。もし挨拶が終わって「ジャケットをお脱ぎください」と相手の親からうながされたら上着を脱いでもいいでしょう。暑い上に結婚の挨拶のために緊張して汗をかきやすいかもしれないので、アイロンをしっかりかけたハンカチを忘れずに

【冬】 スーツはオールシーズン着られるものと、春夏用と秋冬用があります。春夏用の薄くて軽い生地のスーツではなく、オールシーズン用か秋冬用のスーツを着ましょう。相手の家に着いたらコートを脱いで手にかけてからインターホンを押すのがマナーです。

CHECKポイント!
  • キーワードは「清潔感」、「さわやかさ」、「真面目」。
  • 「普段着」「カジュアル」でいいと言われてもスーツを着用。
  • 汗臭さやたばこなど「におい」に注意。

シャツ

シャツはアイロンのきいた無地の白シャツが基本です。派手な色や奇抜なデザインのものは避け、色ものだとしても薄いブルー系など淡い色味にします。ワイシャツの袖口や襟元が汚れていないかもチェックしておきましょう。

ネクタイ

ネクタイは派手すぎない色で無地か、ストライプ、ドット(小紋)など無難な柄なら安心です。ネクタイの色は春夏ならブルー系など明るくさわやかなカラー、秋冬なら暖色であたたかい色だとより好印象ですね。

靴下・靴

白ではなくダークカラー(グレー、紺、黒など)の無地の靴下を履きましょう。柄は入っていてもワンポイント程度にとどめて。靴下は新品の方が安心です。靴は黒か茶色の革靴を。くたびれていないか確認し、汚れを落としてよく磨いておきましょう。ブーツ、スニーカー、サンダルはNGです。足と靴のにおいをチェックして、気になるようなら消臭スプレーをしておきましょう。

アクセサリー・時計・香水・メガネ・ハンカチ

ピアス、指輪、ネックレスなどアクセサリーはせず、腕時計のみにします。極端に高価な腕時計は「浪費家なのでは」誤解されることがありますので注意が必要です。男性の香水は印象が良くなるケースがまれなのでつけない方がいいでしょう。メガネは指紋や皮脂がついていないようきれいに拭いておきます。清潔でアイロンのかかったハンカチを一枚準備しておきましょう。

もっとも重要なのは清潔感。挨拶に行く日までに散髪してさっぱりした髪型にしておきましょう。茶髪や長髪はNG。ダーク系のスーツはフケが目立つので不潔な人だと思われないように気をつけましょう。

無精ひげはNG。きれいに剃っておきます。鼻毛も忘れずにチェック。

テーブルをはさんで面と向かって座ると指先は目につくものです。爪は短くきってきれいにしておきましょう。

これはOK?NG?
  • 黒スーツ (喪服・礼服でないもの)
  • 白シャツ
  • 派手なネクタイ
  • ストライプのネクタイ
  • 白の靴下
  • ピアス
  • 香水

自分が相手の親に挨拶に行く場合を前提に、服装や身だしなみについてみてきました。相手が自分の親に挨拶する場合の自分自身の服装はどうでしょうか。この場合も、正式な挨拶の場に同席して一緒に結婚の承諾を得るのですから、たとえ自分の実家だとしても、カジュアルになりすぎないように、また相手とのバランスも考えてきちんとした服装をするようにしましょう。

4. 手みやげのポイント

「○○さんと結婚させてください」とに挨拶に行く日程が決まったら、当日の準備を始めましょう。相手の親とふだんから親しくお付き合いしている間柄で、「手ぶらで」「お気遣いなく」と言われても、改めて、正式にご挨拶する場なので手みやげは必ず用意しましょう。

4-1.値段の目安

金額の相場は3,000円から5,000円程度です。「結婚の挨拶をする時間をわざわざ設けていただきありがとうございます」という気持ちを込めて手みやげを選んで持っていきます。

4-2. 選ぶポイントとおすすめの手みやげ

お菓子(洋菓子、和菓子)や、出身地や今住んでいるところの名産品(佃煮や漬物など)が喜ばれるでしょう。相手の家の近くで買うのは、間に合わせのように受け取られ失礼になるので避けましょう。甘いものが好きかどうか、相手のご両親の好みを事前にリサーチしておくとあまり迷わずに決められます。「○○(自分の出身地)で一番有名」、「子どものころからよく食べていた」、「○○(自分の住んで切るところ)でとても人気がある」、「(ご両親が)お好きだと聞いたので」など、この手みやげを選んだ理由を添えると話のきっかけになってよいでしょう。

洋菓子

ロールケーキのような長い菓子は「切り分けるので縁起が悪い」と、「長くお付き合いさせていただくという意味で良い」という両方の考え方があります。切り分ける手間をかけさせてしまうことを考えれば、ロールケーキやバームクーヘンは避け、クッキーや焼き菓子など個別に包装されているものが無難です。家族の人数分以上入っているものを選びましょう。生菓子は賞味期限が短いので、常温の賞味期限がある程度長い、日持ちするものを。定番は小川軒の「レイズン・ウィッチ」、銀座ウエストの「リーフパイ」やドライケーキ、ヨックモックの「シガール」など。夏はゼリーや「千疋屋」のマンゴープリンなどもおすすめです。

和菓子

羊羹やカステラについてもロールケーキなどと同じで、「切り分ける」ので縁起が悪いからNGという考え方と、「長くお付き合いさせていただく」という意味で縁起が良いのでOKという考え方があります。もし「切り分けるのでNG」を避けたいのであれば、個別包装されている小形羊羹やカステラを選ぶといいでしょう。「とらや」の羊羹や最中をはじめ、「笹屋伊織」、「鶴屋吉信」、「叶 匠壽庵」、「文明堂」など老舗菓子店の菓子は、見た目もよく高級感もあり喜ばれます。夏は涼しげで美しい水ようかんやゼリーもおすすめです。せんべいは、「割れる」ので縁起が悪いと考えるご両親や、歯が悪くてせんべいが食べられないご家族がいるかもしれないこと、もし一緒に食べることになったときに音が出て品よく食べるのが難しいかもしれないこと、などを考えると、避けた方がいいかもしれません。

出身地や現在住んでいるところなど、どんな地域にも有名な和菓子が必ずあります。自分が好きなものや、以前に食べてみて美味しかったお菓子を選んでもいいですし、よくわからない場合には有名かどうかで選んでみるのも手です。

小さいサイズの羊羹が個別包装された「とらや 小形羊羹」

お酒

お酒が好きだということがわかればお酒も喜ばれますが、日本酒、焼酎、ビール、ウィスキー、ブランデーやワインなど銘柄や味わいに好みがあるものなので、よくリサーチはしておきましょう。

果物

果物は生もので、洗ったり切り分けたりと手間がかかることもあり、食べ頃が難しいものもありますので、ご両親が間違いなく好きだという情報や、選択に自信がない場合は避けたほうがいいかもしれません。持っていく場合は旬のフルーツ(春はイチゴやサクランボ、夏はメロンやブドウ、桃、マンゴー、パイナップル、秋は梨、ブドウなど)を選びましょう。

お茶・コーヒー

高級な日本茶や紅茶、コーヒーも喜ばれますが、種類も豊富にあり、好みがあるものなので、事前のリサーチはしっかりと。また、日本茶は仏事に用いるのでNGという家や地域もあるので注意が必要です。

4-3. 手みやげの「のし」

まだ結婚が決まったわけではないので熨斗(のし)は基本的には必要ありませんが、もしつける場合は「御挨拶」と記した蝶結びの水引の熨斗に自分の名前を記すのが正式。

水引の「紅白蝶結び」は、結び目が何度も結びなおせることから、慶事、一般、贈答などの何度あってもよいことの場合に使います。「紅白結び切り」は、結び目が固く結ばれて簡単に解けないことから、結婚祝い、弔事のように一度きりであってほしいことの場合に使います。結婚の挨拶の場合、まだ結婚が決まったわけではないので、「紅白蝶結び」の水引にします。その後、結婚が決まって両家の顔合わせなどに持参する手みやげには「紅白結び切り」のしをつけます。

「紅白蝶結び」の水引

4-4. 手みやげの渡し方

手みやげを渡すタイミングは、玄関ではなく客間に通されて席に座る前か、席について一通りの挨拶を済ませて落ち着いてから。渡す際は「地元で美味しいと有名な○○なのですが」「お好きとうかがいましたので」と添えるとスムーズです。「つまらないものですが」という言葉は結婚の挨拶の場合は使わない方がいいでしょう。

CHECKポイント!
  • 平均予算は3,000円~5,000円
  • 相手のご両親の好みは事前にリサーチ
  • 切り分けるものよりも、個別包装のほうが無難
  • 日持ちがよいもののほうが◎
  • 渡すタイミングは座って少し落ち着いてから。

5. 訪問当日の流れとマナー、挨拶の言葉・例文

いよいよ挨拶の当日。ここでは訪問時のマナーやふるまいについて、当日の流れにそって挨拶や言葉遣いの例文を交えながら解説いたします。

5-1. 流れとマナー、言葉

1. 玄関の前でコードを脱ぐ

  • コードを脱いで裏を表にして右利きの場合は左手にたたんで持ち、右手はインターホンを押したりドアノブを持つために開けておきます。軽く身だしなみのチェックを。
  • 携帯電話の電源も切っておきます。結婚の挨拶はけじめの場です。途中で携帯電話が鳴るとひんしゅくをかうでしょう。相手の親の携帯電話が鳴る場合があるかもしれませんが、立場が違います。親の携帯電話に電源が入っているからといって、自分の携帯電話の電源を入れないように。

2. 玄関で挨拶

  • 相手にお尻を向けないようにドアを閉めます。
  • 彼・彼女が自分の親に相手を紹介します。初対面なら「はじめまして。○○です。」と簡単に挨拶します。
  • 「本日はお忙しいところ、お時間を作っていただきありがとうございます。」と時間を割いてもらったことに対してお礼をいいます。
  • 靴は後ろ向きで靴を脱ぎながら上がらないように注意。家の中を向いて靴を脱ぎ玄関を上がるようにしましょう。家に上がってから180度ふり返り、靴の向きをそろえます。スリッパがあれば履きます。
  • コートをかけておきましょう、と言われたらコートを家の人に預けます。
  • 玄関で慌てて手土産を渡さないように気をつけましょう。手土産を渡すタイミングについては後述しますが部屋に通されてからです。

3. 部屋に案内される

  • すすめられた席に座りましょう。とくに席をすすめられない場合は下座(下記に詳述)に座ります。
和室・洋室の座り方マナー
和室の場合
  • 和室の敷居や畳の縁(へり)を踏まないように注意しましょう。
  • 床の間のある和室の場合は、床の間に最も近い場所が上座床の間から最も遠い場所が下座になります。
  • 床の間がない部屋の場合は、入り口から最も遠い席が上座入り口に最も近い席が下座になります。
座布団の使い方
  • 和室に通されたら家の方からすすめられるまで、座布団には勝手に座らないようにします
  • 座布団の上で挨拶をするのはNG。挨拶は必ず座布団を外して座布団の下座に座ります
  • 座ったり立ったりする際に、座布団を足で踏まないように注意しましょう。足がしびれそうだったらさりげなく足を崩すと良いでしょう。
洋室の場合
  • 洋室では出入口から最も離れている席が上座最も近い席が下座になります。バッグは自分の足元の左側か小さなバッグならソファや椅子と自分の背中の間に置いてもかまいません。お土産は自分の椅子の上に置きます。
  • 一同がそろったら、改めて挨拶を。手みやげもこのときに渡します。
  • 手みやげを渡す際は「地元で美味しいと有名な○○なのですが」「お好きだとうかがいまして、お口に合えばうれしいです」などその手みやげを選んだ理由を一言いうとよい印象です。「つまらないものですが」という言葉は結婚の挨拶の場合はNG。

4. 改めて挨拶&雑談のコツ

  • 「□□さんとお付き合いさせていただいている○○△△と申します。」とあらためて挨拶と自己紹介をします。
  • お茶を出されたらすぐにお茶やお菓子には手をつけず、先方に「どうぞお召し上がりください」とすすめられるか、先方が手をつけてからいただきます。
  • 趣味や仕事、家族の話など軽めの話題を選んで雑談をしましょう。
雑談のコツ

結婚の挨拶で重要なのは、相手の両親に安心を感じてもらうことです。男性側も女性側も、両親から見れば大切に育ててきた我が子。その子がどんな相手と一緒になるのかは気になるところでしょう。かしこまった挨拶以外の時間で安心感を与えるためには、共通の話題を重ねていくことが大切です。そこで、ちょっとした雑談のコツを紹介します。

相手の両親と普段からコミュニケーションが取れていて、結婚の挨拶へ伺うなら、少しは緊張がほぐれますが、実際は面識がほとんどないほうが多いでしょう。大切な挨拶の場で沈黙が訪れると重苦しい気分になりますね。結婚の挨拶以外の、雑談に向いた話題も用意しておくと、雰囲気良く乗り切れます。

まずは部屋の中にあるもの話や、天気の話などでも良いでしょう。そわそわと空回りしないように、落ち着いた態度でいることが大切です。もし相手に質問されたら、自分の話ばかりするのではなく、相手とも会話がつながるように、話題を掘り下げるように質問してみましょう。質問されたことをアレンジして質問し返してみるのもいいかもしれません。ある程度ビジネスライクでもいいので、にこやかに会話を繋げるようにしたいですね。そうするうちに盛り上がるポイントが見つかるかもしれません。

雑談の話題を探すために、パートナーとの事前準備も効果的でしょう。両親それぞれの趣味や、仕事の内容、休日の過ごしかたといった、簡単なリサーチができると安心です。以下に話題作りのポイントをまとめてみました。

CHECKポイント!
OKな話題・無難な話題
  • 季節や天候の話
  • 自分や自分の家族の話
  • 相手の子供時代の話
  • 趣味や仕事の話
  • インテリア
  • ペット
  • 食べ物
NGな話題
  • 宗教の話
  • 政治の話
  • 自慢話
事前リサーチしておくと盛り上がる話題
  • 好きなスポーツ
  • 趣味
  • 職業/仕事内容
  • 食べ物の好み
  • 出身地
二人であらかじめはなしあっておくこと
  • 結婚式について
  • 結婚後の住居
  • 入籍の時期

どんな話題でも、批判的な姿勢になることは避け、程よく和むように、会話を続けられるとよいですね。注意したいのは、会話を無理に合わせてしまうことです。好きでもないことを自分も好きだと言ってしまうと、長い付き合いの中で裏目に出ることもあります。会話に詰まった時は、パートナーがお互いに助け舟をだしましょう。

結婚の申し込みは緊張するイベントですが、雑談時の和やかな雰囲気ができれば、相手の両親もパートナーも安心して楽しく過ごせるでしょう。ふたりの間で結婚の意志が固まったら、相手の両親の情報を集めて挨拶の場でも雰囲気良く過ごせるようにしたいですね。

お茶の飲み方&お菓子の食べ方

重要な話の時は茶碗やカップを持たないように注意しましょう。緊張などから喉が渇いているかもしれませんが、お茶を出されても勝手に飲むのではなく家の人からすすめられてから飲むようにします。ただしお茶が冷めてしまわないうちにすすめられたら熱いうちにいただきましょう。

日本茶など茶碗にふたがついている場合は、ふたの裏にはしずくがついているので手前から向こう側に開けて、取ったふたは飲み終わるまで仰向けに置きます。左手を茶碗に添えて姿勢よく飲み、すべて飲み終わったら、ふたを取ったときと逆の手順でふたをします。

紅茶やコーヒーの場合、砂糖を入れるときは左手をソーサーに添えて静かにスプーンでかき回し、さっと引き上げます。スプーンは邪魔にならないようにカップの後ろに置き、ミルクを入れる場合は、お茶がまだ回っているうちに入れます。ソーサーはテーブルに置いたまま、右手でカップを持って飲みます。

和菓子はお皿を左手で持ち、添えられた楊枝などで二つまたは、四つに切ってさしていただきます。ケーキはまわりのセロファンをフォークで取り、下に敷いてあるアルミホイルの下に入れて、食べ終わったらフォークをアルミホイルで包んでお皿に置きます。カステラやケーキ、バームクーヘンなど倒れやすいものや崩れやすいものは最初から横に倒していただいても○

5. 本題へ

  • 二人のなれそめなどを話し、場がなごんだら本題へ。切り出すタイミングを失って、彼女や相手から切り出されてしまったというのはよくある失敗です。雑談が長くなりすぎないようにし、座布団に座っているときは座布団を外してから、親の目をしっかり見て、誠実な態度で結婚の承諾を得ましょう。
  • 男性から女性の親への挨拶の言葉
    「□□さんと結婚したいと思っております。」とまずは結婚の意思をはっきりと表します。その後、彼女の親に結婚の許可を求めます。
これはOK?NG?
  • 「□□さんと結婚させていただけないでしょうか。」 
  • 「□□さんとの結婚をお許しいただけるでしょうか。」
  • 「□□さんを必ず幸せにします。□□さんとの結婚をお許しください。」
  • 「ご両親に結婚の了承をいただきたいと思っております。」
  • 「未熟な私ですが、□□さんと二人で温かい家庭を築きたいと考えています。どうぞよろしくお願いします」
  • 「□□さんに先日プロポーズし、結婚の承諾をもらいました。未熟者ですが、精一杯頑張って□□さんを幸せにします。どうぞよろしくお願いします」
  • 「娘さんをください。」 (→大切な娘をモノ扱いされていると感じる)
  • 「結婚することにしました。」 (→事後報告ととられる)

緊張して言葉が棒読みにならないように心を込めて言いましょう。万が一、結婚を反対されたらその場は潔く「今日はこれで失礼いたします。また改めてご相談させてください。」と引き下がり、あとで彼女に理由を聞いてもらってどうすればいいかを相談して対策を立てましょう。

  • 女性から男性の親への挨拶
    基本的な流れは同じですが、この場合、男性が「結婚したい相手がいて先方のご両親にはすでにお許しをいただいたので、紹介したい」という形をとります。「このたびは結婚をお許しいただきありがとうございます。どうぞよろしくお願い申し上げます。」といいます。

6. 退出

  • 話が一段落したら2時間を目安に「そろそろ失礼します」と切り出します。
  • 食事を勧められても一度目は辞退しましょう。再度勧められたら、事前に夕食を用意していることもあるので応じましょう。
  • 食事やお酒を共にしたい、その方が話しやすいし打ち解けられるという親もいます。その場合は相手の親の希望に添うようにしましょう。
  • 夕食を共にした場合にも、夜の8時にはおいとましましょう。
  • 正式な退出の挨拶は、訪問時と同様に玄関に向かう前に客室で交わします。
  • 退出の挨拶は、洋室の場合は椅子から立ち上がって、和室の場合は座布団をはずして。「本日はありがとうございました。今後のことについてまた相談させてください。どうぞよろしくお願いいたします。」と伝えます。
  • 玄関先では、借りたスリッパの向きを変え揃えてから玄関の隅に置きます。
  • 基本的に身支度は玄関の外でしますが、コートは相手から玄関内で着るようすすめられた場合は、「ありがとうございます。」と断って玄関内で着てもOK。外に出たら、そのまま門の外で一礼します。

7. 帰宅後

  • 家に帰ったら、電話でお礼を伝えます。夜遅い場合は翌日の午前中のうちに。
  • あらためてお礼状を出すとなお丁寧です。その場合は1週間以内に出します。

5-2. 呼び方

相手の親をなんと呼べばいいか、最初は戸惑うかもしれません。いきなり「おとうさん」「おかあさん」と呼ぶのは失礼です。少々長くはありますがゆっくり丁寧に、「□□さんのお父さん(さま)」「□□さんのお母さん(さま)」と呼びましょう。
また、この場で彼・彼女をいつもの呼び方(あだ名や呼び捨て、~ちゃんなど)で呼んではいけません。親に敬意を払うという意味で、相手の両親の前では彼・彼女は下の名前で、「○○さん」、または「○○くん」と呼びましょう。

  • 相手の両親に対して
  • □□さんのお父さん(さま)、□□さんのお母さん(さま)
  • お父さん、お母さん (→結婚前の正式の場では無礼にあたる)
  • おじさん、おばさん (親しく付き合っていてもNG)
  • 彼・彼女に対しては、下の名前で、「○○さん」「△△くん」

5-3. 印象のよいふるまい

ちょっとした言動で、印象が良くなりも悪くなりもします。誤解を与えてしまうのもこれからの長い付き合いを考えるとお互いによくありませんね。下記をポイントに心の準備をしておけば、落ち着いて挨拶ができるでしょう。

  • 余裕をもって行動し、時間は必ず守ります。
  • 親しくしている仲でも言葉遣いには気をつけます。
  • はっきりと結婚したいという意思を伝えましょう。
  • 聞かれたことには正直に答え、まだわからないことについては「これから二人で相談します」といいましょう。
  • 結婚を軽く考えているのではないということを態度で示せるよう、落ち着いて礼儀正しく振舞いましょう。