婚姻届の書き方と手続きの流れ ータイミング、提出場所、節税など意外と知られていないポイント
1. 婚姻届提出の流れ
1. 本籍地と姓を決める
婚姻届を提出する際の「本籍地」は戸籍に記載される人が自由に決めることができます。日本国内、地番があるところであればどこでもかまいませんが、戸籍謄本・戸籍抄本は本籍地の役所でしか発行できないため、あとの手間を考えると新居など二人の住まいのあるところを本籍地とするのが一般的です。二人の思い出の地や皇居などを新本籍地とする夫婦も少なくありませんが、今後戸籍謄本が必要になったときの手間を考えると、アクセスの良い場所にしておいたほうが便利です(ただし戸籍謄本は郵送でも取り寄せ可能です)。
姓(名字)は現在の法律では夫婦どちらか一方のものを選ぶことになっています。事前に話し合って決めておきましょう。
2. 必要に応じて戸籍謄本を用意する
戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)は、結婚前の本籍地と異なる自治体に婚姻届を提出する場合に必要となります。戸籍謄本を取得するためには3つの方法があります。
1)本人が窓口で請求・取得する
2)郵送で請求し取り寄せる
本籍地が遠い方、役所の営業時間内に本籍地へ赴けない方は郵送で取り寄せるのが便利です。請求用紙・返信用封筒・定額小為替または現金書留による手数料(450円)・本人確認書類の写し・申請者の署名捺印・請求理由と使用目的が必要となります。また、郵送のため申請から取得までに1週間前後かかってしまいます。申請書類に不備があった場合に備え、早めに請求しましょう。
3)代理人が窓口で請求・取得する
本籍地に親族や知人が住んでいる場合は、代理人になってもらうことで代わりに取得してもらうことが可能です。同じ戸籍に入っている親族等ならば、その方自身の本人確認書類のみで取得できますが、知人など戸籍が違う方にお願いする場合は委任状と正当な理由が必要になります。
3. 婚姻届を用意する
婚姻届の用紙はどこの役所でももらうことができます。また、最近ではデザイン婚姻届や自作のオリジナル婚姻届も人気。書き損じてしまったときのことを考え、複数枚準備しておくと安心です。
4. 婚姻届に記入する
必要事項にすべて記入をします。黒か青のボールペンまたは万年筆を使用しましょう。修正テープや修正液の使用はできません。書き損じの際は二重線を引き欄内の余白に正しく書き直した上で、届出人欄のものと同じ印を婚姻届の欄外左側に押印します。訂正の度合いによっては新しく書き直しを言い渡されることもあります。
欄外に捨印を押すことによって修正時の訂正印は不要とされる場合が多いですが、自治体によって異なるケースがあるため確認が必要です。二人の訂正印が必要になることもあるため、提出時には双方の印鑑を持参するようにしましょう。
<主な記入事項>
(1) 氏名・届出人署名
夫婦となる二人の氏名を漢字・旧姓で記入します。
(2) 住所
それぞれの住民票に記載されている住所を記入してください。
(3) 本籍地と筆頭者
現在の本籍地と筆頭者(戸籍の最初に記載されている人)の氏名を記入してください。
(4) 父母の氏名
離婚している場合、死亡している場合もそれぞれの氏名を記入します。
(5) 婚姻後の夫婦の氏
婚姻後に名乗りたい姓にチェックを入れます。
(6) 婚姻後の新しい本籍地
二人で決めた新しい本籍地を記入します。新住所またはどちらかのもとの本籍地を選ぶ場合が多いようです。戸籍筆頭者の戸籍になる場合は空白のままで提出します。
(7) 届出人
お互いがそれぞれ署名押印します。印鑑は認印でOKですが、朱肉を使うタイプのものを使用し別々のものにしましょう。
(8) 証人
証人は20歳以上の2名にお願いしましょう。親やきょうだい、親しい友人などに頼む場合が多いようです。両親や友人夫婦、仲人など夫婦にお願いする場合はそれぞれ別の印鑑を使用する必要があります。
(9) 連絡先
婚姻届に不備があった場合に備え、昼間に連絡をとれる電話番号を記入します。
(10) 届出日=婚姻日
婚姻届を実際に役所に提出する日付を記入します。この欄に記入した届出日が婚姻日となります。二人の特別な記念日などを婚姻した日としたい場合には当日確実に受理してもらえるよう婚姻届を完璧に準備しましょう。例えば11月22日を戸籍上の婚姻した日にしたい場合は11月22日の0時~23時59分の間に窓口に提出して受理される必要があります。
5. 各自治体の役所に提出する
役所への提出はどちらか一人でもかまいません。代理人による提出も可能ですが、不備があった場合には婚姻する本人の訂正が必要となります。当日中に受理できなくなってしまう可能性があるため避けたほうがいいでしょう。
提出した婚姻届を担当者が確認し、必要に応じて訂正を行い受理され届出が終了、晴れて戸籍上の夫婦となります。
2. 婚姻届を提出する際に必要なもの
1. 婚姻届
2. 戸籍謄本(戸籍全部事項証明書)
もとの本籍地でない役所に届ける場合に持参します。
3. 印鑑
書類に不備があった際に訂正印として使用します。婚姻届に押印したものと同じ印鑑を持参しましょう。
4. 身分証明書
二人の本人確認書類を持参します。証明の種類によっては2種類必要な場合があります。
<本人確認書類の例>
1枚の提示で足りる証明書の種類(例)
- 運転免許証
- 写真付き住民基本台帳カード
(住所地の市区町村で発行) - 旅券(パスポート)
- 国又は地方公共団体の機関が発行した身分証明書
- 海技免状
- 小型船舶操縦免許証
- 電気工事士免状
- 宅地建物取引主任者証
- 教習資格認定証
- 船員手帳
- 戦傷病者手帳
- 身体障害者手帳
- 療育手帳
- 在留カード又は特別永住者証明書(注)
- 写真付きマイナンバーカード など
(注)平成24年7月9日以降外国人登録証明書は廃止されましたが,一定期間外国人登録証明書が在留カード又は特別永住者証明書とみなされ,外国人登録証明書を在留カード又は特別永住者証明書として利用することができる場合があります。詳細については市区町村の窓口にお問い合わせください。
2枚以上の提示が必要な証明書の種類(例)
- 写真の貼付のない住民基本台帳カード
- 国民健康保険、健康保険、船員保険、又は介護保険の被保険者証
- 共済組合員証
- 国民年金手帳
- 国民年金、厚生年金保険又は船員保険の年金証書
- 共済年金又は恩給の証書
- 戸籍謄本等の交付請求書に押印した印鑑に係る印鑑登録証明書 など
※学生証、法人が発行した身分証明書で写真付きのもの
※国又は地方公共団体が発行した資格証明書のうち写真付きのもの(左記に掲げる書類を除く。)
「氏名及び住所」または「氏名及び生年月日」が確認できるものであることが前提です。「※」の書類のみが2枚以上あっても確認できませんので、ご注意ください。
国際結婚の場合
日本国内で届け出る場合は相手の国の当局が発行する「結婚要件具備証明書(Certificate of Legal Capacity to Contract Marriage (LCCM))」が必要となります。これは外国籍の人が本国の法律で結婚の用件を満たしているかどうかを証明するものです。逆に相手の国で、結婚の届け出をする場合、日本人の方の「婚姻要件具備証明書」が必要になる場合があります。これは、(1)日本の在外公館(大使館・領事館)、(2)本籍地の市区町村、(3)近くの法務局・地方法務局で取得可能です(※)。
また、(2)又は(3)で、婚姻要件具備証明書を取得した場合は、提出先の国によっては、日本の外務省の認証(公印確認やアポスティーユ)や、日本に駐在する自国の大使・領事等による認証等を求められる場合があるようです(※)。相手の国籍によって届出の方法や必要書類は異なるため、相手の国での手続きについては、相手の国の当局、日本での手続きについては、日本の役所に相談しておきましょう。
※参照情報・出典:法務省ホームページ「国際結婚,海外での出生等に関する戸籍Q&A」
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji15.html
(平成28年5月22日に利用)
3. 婚姻届を提出する場所と、本籍地に関するポイント
婚姻届はどこにでも出せる、本籍地はどこでも選べる
婚姻届はどこにでも提出できます。婚姻届を提出できるのは以下の役所です。
- 二人の新本籍地(二人で自由に決めた新しい本籍地)
- 夫または妻となる人の本籍地(それぞれのもとの戸籍に記載されている地)
- 夫または妻となる人の所在地(婚姻届提出時に住んでいる場所、所在している場所)
例えば、現在の本籍が大阪府大阪市北区の男性と、北海道札幌市西区の女性が、新本籍地を東京都渋谷区として婚姻したいとします。この場合、婚姻届の提出が可能な窓口は「(1)東京都渋谷区」「(2)大阪府大阪市北区」「(3)北海道札幌市西区」のそれぞれの管轄役所、もしくは「(4)男性または女性の所在地」となります。
さて、この「所在地」とは現在住んでいる住所だけでなく、一時的に滞在していても所在地とみなされます。つまり、そのときに「所在」していれば実際に住んでいなくてもOKです。二人一緒にまたは二人のどちらか本人が提出にでむく限り、結婚式をあげる場所や二人の思い出の地に旅行がてら提出、ということも可能ですし、職場の近くの役所でも、たまたま通りかかった役所でも提出可能です。東京都渋谷区の役所に必ず提出しなければいけないというものではありません。
また、本籍地はどこでも選べます。新しい本籍地は、もとの本籍地や現在の住居地や所在地に限らず、日本国内の土地が実在する場所であればどこでも選択することが可能です。婚姻届の提出場所がどこであれ、本籍地は日本国内どこでもOKです。二人の思い出の地でも、二人の出身地でも、二人の新しい住居地でもOKです。本籍地に選ぶ場所は提出する場所と違い、「所在」している必要もありません。例えば、沖縄で結婚式を挙げて、その日に東京都渋谷区を新しい本籍地とした婚姻届を、沖縄県内にある市町村区役所に提出する、といったことも可能です。ただし、何かの手続きで新しい戸籍謄本などの書類が必要になったときなど、本籍のある役所が近くでなければ少し不便かもしれませんので、その点は考慮してみるとよいでしょう。
4. 婚姻届提出日に関するポイント
婚姻届はいつでも出せる
婚姻届の提出は365日、24時間受け付けています。夜間・休日には役所自体は閉まっていますが、専用の窓口を利用して提出することができます。ただしその場合、婚姻届の確認をその場で行ってもらうことはできません。
提出日=届出日=婚姻日、となるが不備があった場合に注意
婚姻届を役所に提出する日、つまり婚姻届の届出日に記載する日が婚姻日となります。休日や夜間に提出し後日不備が発覚した場合、訂正後の受理となるため届出日とされる日がずれます。最初に提出した日にさかのぼって婚姻日とすることはできません。また、未来の日付で事前に提出しておいたり、提出後に届出日を変更したりすることもできません。婚姻日にこだわる人は記入漏れや書き損じ、間違いなどがないよう念入りに準備・確認を行いましょう。あらかじめ平日に窓口でチェックしてもらうと安心です。すべて記入した婚姻届を窓口に持っていき確認してほしい旨を伝えれば、不備がないかチェックしてもらうことができます。担当者のお墨付きをもらったら、改めて希望する婚姻日に提出に行くとスムーズです。
婚姻届を提出しても新しい戸籍ができるまでには1週間から10日ほどかかります。必要であれば婚姻届受理証明書を入手しておくようにしましょう。婚姻届を出したその場で発行してもらうことができ、新戸籍ができるまでの間にパスポートを申請する場合や海外ウェディングで証明書が必要な場合などに利用することができます。
海外でリーガルウェディングを行った場合
海外挙式には、法的な効力を持つリーガルウェディングと、祝福セレモニーとしての意味のみを持つブレッシングウェディングがあります(国・地域によっては、外国人である日本人はリーガルウェディングができない場合も)。
リーガルウェディングの場合、その地の法律に則って手続きをすることで、現地の婚姻証明書にサインをもらって結婚が認められます。日本に帰国して婚姻手続きをする際、その挙式日にさかのぼって「○○国方式において○月○日に婚姻」と記録されることになります。
5. 婚姻のタイミングと節税
婚姻届はいつ提出してもいいことになっているため、完全に二人のスケジュールの都合や好みで決めることができます。付き合い始めた記念日やどちらかの誕生日、何かのイベントの日、「いい夫婦の日(11月22日)」、「七夕(7月7日)」など覚えやすい日が人気です。
タイミング上、考慮しておくべきこと―特に注意はパスポート
結婚式を挙げる場合、婚姻届の提出を式の前と後のどちらにすべきかを迷うカップルも多いようです。結婚に関する様々な手続きや引っ越しなどを考えると、後でも前でも、結婚式の準備で忙しくない日を選ぶのがいいと言えるでしょう。職場での社会保険に関する手続きのタイミングも考慮するといいでしょう。引っ越しをする場合は、住民票の移動等は転居から二週間以内に行わなくてはいけないため、その際に同時に届け出るのも手です。
特に前後して、ハネムーンや海外出張などで航空券の購入やパスポートの利用がある場合は要注意です。というのは、国際便は、どの国、どの航空会社においても、航空券に記載される名前・パスポート番号と、搭乗手続き時のパスポートの名前・パスポート番号が一致していないと搭乗できないのです。航空券の名前変更は購入後も可能ですが、航空会社によって手数料がかかり、それが意外と高額である場合があります。航空券購入時にまだ未婚姻の場合は、婚姻届提出やパスポートの変更は帰国後にする、か、航空券を購入する前に婚姻しパスポートの名前変更をする(または作り直す)、のどちらかの手をとることをおすすめします。。
失業保険や配偶者控除などと婚姻のタイミング
結婚をすると配偶者控除等を受けることができます。どちらかが仕事を辞めて配偶者控除を受けようと考えているのであれば、失業保険の受給が終わった後がベストでしょう。失業保険は税の面からは収入とみなされます。そのため、失業保険を含めた年間(その年の1月1日~12月31日)の収入の総額が103万円を超すと扶養家族に入れることができません。当分仕事に就く予定がない場合は失業保険受給後の婚姻とすれば税金が少しお得になります。
また、12月か1月頃の入籍を考えていて、二人のうちどちらかの12月までの年間収入が103万円以下となる場合、1月ではなく12月のうちに入籍をすることで扶養控除を受けることができます。このケースに該当するなら節税になります。
前年に最低額(103万円)を超える年収があった場合、配偶者控除や所得税、住民税は変わらないのでいつ入籍をしてもさほど影響は出ないと考えていいでしょう。
6. 入籍と結婚の違いは?
これまで結婚が認められた日を「入籍日」として解説してきましたが、実は「入籍」=「結婚」というわけではありません。法律上、入籍と結婚(婚姻)はそれぞれ以下を意味しています。
入籍
すでに筆頭者がいる戸籍に入ること。「入籍届」を用いる。子どもの出生や養子縁組など。
結婚(婚姻)
結婚する二人で新しく籍を作ること。「婚姻届」を用いる。
結婚すると、夫婦はそれぞれ親の戸籍から抜け、「新戸籍の編製」といって新しい戸籍に移ることになります。法律上は、結婚することを「入籍する」と表すのは正しくないということになります。
ただし、婚姻届を用いて結婚をする場合でも、成人後に親の籍を抜けている、再婚によって以前に籍が作られた状態で結婚するといった場合には、すでに筆頭者がいる状態ですので、「入籍」という言葉でも間違いではありません。
現在では初婚で新しく籍を作る際でも「入籍をする」と言うことが多く、タレントの結婚ニュースなどでも「電撃入籍」「すでに入籍済み」と報じられることもあり、「入籍=結婚」という考えが浸透してきています。言葉の使い方は時代によって変化するものですから、あまり厳密に捉える必要はありませんが、2つの法律上の意味の違いについては覚えておくといいでしょう。
7. 親への配慮について
忘れてはいけないのが、その日まで大事に育ててくれたお互いの親への配慮です。
婚姻届の提出は、挙式の前?後?
婚姻届を出すのは挙式の前にするか後にするか、迷うことがあるかもしれません。挙式日と同じ日ではなく、入籍日は記念日や誕生日など思い入れのある日にしたいというカップルも多いようです。挙式の当日にはどうしてもバタバタしてしまうため、余裕を持って役所に行くならば別の日にするのが安心です。
どちらにするか、いつにするかは二人の自由ではありますが、親の考え方も聞いておくようにしましょう。「挙式日(または親族の食事会)に親族にきちんと紹介してから入籍してほしい」といった考え方をする親も少なからずいるためです。特に親族やご近所との付き合いが多い、結婚に関するけじめをしっかりとすべきと考える両親の場合には、早めに意向を聞いておくと安心してもらえるはずです。
入籍の報告は当日中に
無事に婚姻届が受理したら、その日のうちにお互いの親へ報告しましょう。入籍日が決まっていても、親はそわそわと朝から気になっているものです。当日に会う予定がないのならば電話で報告を。